【レビュー】『速攻と決定力』~第28節ファジアーノ岡山VS愛媛FC~

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スタメン

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マッチレポート

激しい攻防、チームを救うスーパーセーブ

 岡山城をイメージして作られたクラブ創立15周年記念ユニフォームを身にまとい戦う9月のホームゲーム。その初戦となる愛媛FCとの一戦、岡山はデュークがW杯予選を戦うオーストラリア代表に招集されたため不在。上門の相方には川本が選ばれた。対する愛媛は、8ゴールの藤本が累積警告で欠場。明治大を卒業して岡山でプロキャリアをスタートさせた藤本の古巣対戦は叶わなかった。實好監督は藤本の代わりに18歳の唐山をスタメンで起用した。

 開始早々こそ、ロングボールを前線に蹴り合う慌ただしい展開になったものの、両チームはDFラインでのビルドアップから徐々に落ち着きを取り戻していく。およそペナルティエリアの幅を取るCBでパスを交換し、縦パスを出すタイミングを伺う岡山。SBが高い位置を取り、SHが内側に入る立ち位置でジグザグなラインを形成。アンカーの脇を突くSHへの斜めパスが起点となり、内→外の展開からクロス攻撃に持っていく。

 一方の愛媛は、3バックでのビルドアップから、高い位置を取るWBへのパスが攻撃のスイッチ。ボールを持ったWBで相手の目線を集めて、2シャドーが関わりながら、手薄な逆サイドへ展開する攻撃を試みる。

 最初のチャンスは愛媛。左サイドの深い位置に侵入した高木のクロスに飛び込んだ忽那の地を這うシュートはGK梅田の手をすり抜けたが、宮崎智の決死のクリアによって防がれる。

 ベテランの高い危機察知能力に救われた岡山も決定機を作る。10分、カウンター気味の展開。中間ポジションで受けた上門から左サイドのスペースに走り込んだ徳元へ。ゴールに向かって突進した徳元はシュート直前にコントロールがブレてしまい、放ったシュートは勢いなく。その後も、20分に上門が右足を、26分には相手のミスから奪った川本が左足を振り抜くも、ゴールネットを揺らせない。

 互いに崩しの部分では狙いを出してプレーすることはできたが、最後の質の部分で噛み合わず。スコアレスドローで折り返した。

 後半に入ると、63分に両チームは2枚替えを行う。岡山は齊藤と木村を投入。愛媛は小暮と川村を投入し、フォーメーションを[3-1-4-1-1]に変更。中盤をダイヤモンドにすることで、厚みをもたらす。

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 ベンチが動いたことでピッチ内もゴール、勝利を目指す勢いが増す。試合は一進一退の攻防が続き、両チームがゴール前に迫る見応えのある展開へと突入した。

 愛媛が71分に高木のシュート性のクロスでゴールを脅かすと、岡山が80分にパウリーニョがミドルシュートを放つ。岡山は81分に山本を投入し、山本がサイドに流れて起点を作ることで愛媛のDFを引っ張り出そうするが、統率された5バックを崩せない。

 愛媛は途中出場の榎本が積極果敢な仕掛けからチャンスを作る。試合終了間際の94分、左サイドに流れた榎本が右足でゴールに向かって行くクロスを蹴り込んだ。ゴール前で待っていた唐山がクロスの軌道に合わせてステップを踏みながらヘディングシュートを放つ。これはGK梅田が目一杯に手を広下ながら飛ぶ気迫のスーパーセーブ。この試合一番の決定機を生かしきれずに試合終了。

 12本のシュートを放った岡山は、またも無得点。愛媛の強固なゴール前を崩せなかった。しかし、終了間際のGK梅田のスーパーセーブによって手にした勝点1。勝点をもたらすGKの存在は本当に大きいが、ホームでの勝利が欲しかった。


コラム

速攻から好機演出も残る課題

 相手が陣形を整える前に攻めきる速攻が決定機まで結びついた試合だった。10分に後ろから駆け上がった徳元のシュート、26分に相手のミスからボールを奪った川本のシュート。とにかくシュートまで持っていくのが早かったし、シュートとして速攻を完結させることができた。チームとして相手を崩してゴールを決めきる力はまだまだ発展途上。これから伸ばしていってほしい課題だ。しかし、発展するのを待つだけでは勝てない。リーグ2位の守備力で相手の攻撃を耐えつつ、速攻でゴールを決めきる。これができるようになると、もっと勝点を積めるし、もっと強くなれると思う。

 だからこそ、徳元には10分のシュートを決めてほしかった。SBを本職とする背番号41は今シーズン、宮崎智の加入以降SHとしてのプレーが続いている。後ろから駆け上がるタイミングとクロスの質という持っていたSBとしての攻撃力だけでなく、内側の狭いスペースでのプレーやシュートなどSB時には求められなかった新たなタスクが課されている。上記のシーンは攻撃の選手なら決めきっていたのかもしれない。しかし、徳元の守備での貢献は非常に大きく、強固な[4-4-2]ブロックを築く上で重要な役割を果たしていることも事実。この試合での悔しさを晴らすべく、日々のトレーニングに励み、今度こそゴールを決めて勝利をもたらしてほしい。背番号41が選手としてまた一皮剥けるその時を楽しみにしたい。


デューク不在を戦い抜く術

 やはりデュークの不在は大きかった。彼が前線で身体を張って戦うことでタメを作り、サイドに流れて相手を引き出す。背番号19は効果的なプレーでチームに大きく貢献するだけでなく、ピッチにいるだけで相手に脅威を与えられるスーパーな選手だ。存在そのものが相手に影響を与えるような選手はデューク以外いないのかもしれない。しかし、デューク不在に伴い出番を与えられた川本、齊藤、山本はそれぞれ自分の良さを表現していた。

 スタメンに名を連ねた川本は前から献身的にプレスをかけ、テクニックを生かしたボールキープと1タッチプレーで前線を活性化させた。26分のシュートシーンは、左右両足で力強いシュートを蹴れる川本だからこそ。対峙したDFは川本の利き足の右足を切るだけでは守れない。どちらの足でシュートを打つかわからないという状況に追い込み、1対1で優位に立った川本が相手の読めないタイミングで左足を振り抜いた。ニアサイドに飛んだ低くて速いシュートは得点への可能性を大きく感じた。途中出場の齊藤と山本は短いプレー時間の中で、フィジカルを生かしたボールキープやサイドに流れるプレーでリズムを変えた。

 デュークという絶対的な存在がチームにいることに対するポジティブな要素は多いし、本当に頼もしい。しかし、岡山には個性的なFWが他にもいる。1人の選手にだけ適した戦い方をしていくつもりはないという有馬監督。ベンチ入りが待たれるブレネー・マルロスも含めて選手起用のバリエーションと戦い方に幅が出てくると岡山の攻撃はもっとワクワクするものになるだろう。


 

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