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生成AIはなぜ使われないのか?



本記事は、Stockmark Advent Calendar 2023 の 23 日目の記事です。


皆様、こんばんは。
ストックマークでCMOをしております田中です。

ストックマーカーとしては3年が過ぎました。
※だいぶグレーヘアーが目立つようになりました(白目)

起業→コンサル→事業開発→PMM→PO→CMOと、
役割は変わってきましたが、今日は生成AIの社会実装の話をします。

念のためですが、タイトルは誤植ではありません苦笑

本記事には次のことが書かれています。

● Bizdev / Marketingとしてマーケットを読む難しさ
● 生成AIをプロダクトに活かす難しさ
● 生成AIの本質から見えるこれからの働き方

本記事は、こちらの読者をイメージして書きました。

● スタートアップのBizdev/PMMの方、または目指されている方
● 生成AIの社会実装を進めている方

それでは、早速お話していきましょう。


【前段の話】スタートアップのCMOの役割

生成AIの社会実装の話をする前に、スタートアップでCMOに求められている5つの役割について軽く触れたいと思います。
※ここについての詳細はまた後日!

スタートアップCMOのスキルマップ【暫定版】

Vision:目指す場所を決め続ける力

基本的にはCEO/創業者が描くものです。
弊社もVisionはCEOが描いています。

ただし、それをより解像度高く描く
具体的には時点別の詳細な絵を描くことがCMOのお仕事です。
CEOと対話を繰り返しながら、実務に展開しています。
※今年(2023年)は生成AIの激変もあり、本当にエキサイティングな年明けになったのをよく覚えています(ポジティブ表現)。

生成AIのニュースが毎日、いや数時間ごとに飛び込んでいた1月〜4月頃。
顧客体験にフォーカスしたいが、競合/技術の動向も気にせざるを得ない状況の中で、やらないことを決める怖さと向き合いながら、肥大化し抽象化しがちなVisionの輪郭を描き続けていました。
そうした決断力がCMOには求められていると感じます。

Planning:不確実性を減らし続ける力

Vision決定後は、Visionを実現するために、いつまでに何をやるかというロードマップを描きます。

例えば、富士山を登ると決めた後に、
①どの登山ルートで登るか、
②どのチェックポイントを何時に通過するのか
この2つを決めるのがPlanningです。

描きますと言いつつ、何が必要かをメンバーに主体的に考えて貰いながら、いつまでに何が必要かを調整するイメージが近いです。
弊社であれば、Biz組織、Product&Engineer組織、R&D組織ごとにロードマップを描いて貰い、相互のタイミングに齟齬がないかを確認し続けました。

中期計画(3カ年)= 時点別Visionのコミュニケーションツール
短期計画(3ヶ月)= 登り方
のコミュニケーションツール

この2つを擦り合わせながら、事業環境の変化を折り込みつつ、意思決定を繰り返し、Vision実現に向けた学びを蓄積し続けています。
※今回は生成AIの体験がどう浸透するかを検証し続けていた、ここの話をメインでします。

Metrics:検証し続ける力

Metricsの1番の難しさは、何をKPIに置くか、ということだと皆様もご理解頂いているかと思います。KPI設定に関しては、良い記事が出ているので、今回は割愛しつつ、弊社の事業開発/Bizdevではこのようなマトリクスで状態管理をしています、というのをチラッとだけお見せておきます。
高速回転するテックスタートアップではこの軸で進捗管理するのが1番良いです。
事前合理性がない事業の事業開発(bizdev)はCMOの仕事だと考えています。他の誰もやっていないが、それが課題と認知されれば、途端に世の中のスタンダードになる事業の先陣を切る、その覚悟がCMOには必要です。
※ここについても別noteで書きます。

【市場軸】×【技術軸】の両面の検証がテックスタートアップには必要

Presentation:聞き続き、伝え続ける力

行動して貰うために、抽象的なところ、複雑なところをわかりやすく伝えることがCMOのお仕事です。
人数が増えるほど、過去の文脈を、そして1つ1つの言葉を丁寧に伝えていくことが重要ですが、ここがなかなか難しい。
適切に整理し、圧縮した情報を届けないと、共感が広がらず、お願いしたい行動に繋がりません。
自分が聞くべき情報であることを伝え、どう行動して欲しいのか、をはっきりと伝えること。察してくれは甘えでしかない。
まだまだ、仲間に支えられてばかりではありますが、常に心に留めているのがこちらの書籍。この本を読んでから社会人を始められて良かったです。
※高田さん、いつもありがとうございます!

Management:何とかし続ける力

言わずもがな、責任者として管掌範囲の目標達成はもちろんのこと、全社の目標達成のために、何とかするのがCMOのお仕事です。
それも直接関与を減らし、仕組みによって何とかする必要があります。

後の話にも関連しますが、直接関与型のプレイングマネージャーは引き続き求められるものの、生成AI時代は本当に仕組みを作って、継続運用させられる間接関与型のマネージャーが成果を発揮できると考えています。
PMMの時とは違い、より仕組みで成果を出せるようにと意識はしているものの、わかりやすい成果を求めて自分で何とかしてしまおうという誘惑と常に対峙しています。
とはいえ、人がいない領域は引き続き、何とかするのは当然です。

記載した粒度および解像度からも私がマーケティングスペシャリストとしてのCMOではなく、事業開発よりのCMOであることは

【本題】生成AIはなぜ使われないのか?

前置きが長くなりました。
2023年、時点別Visionをコミュニケーションする上で1番苦労したのが、生成AIの普及速度のヨミです。スタートアップは追い風が来てから船を出しても間に合わず、追い風の少し前に海で待機しているのがちょうど良いです。

社内でも意見が割れました。
「生成AIが一気に普及して業務の中で定着する」
「生成AIはまだ様子見(業務活用で考えると、技術的に改善余地大)」

結果的には、「普及はしたが、使うのはアーリーアダプターまで」というのが2023年でした。
多くの企業が当たり前になると判断し、導入はしたが、実際に活用したのは2割程度という実態です。

その理由は複数あると考えられますが、こちらのアンケートが概ね実態を表していると考えています。

引用:AI inside(下記、記事より)

弊社のユーザー様にもお話を伺っています、概ね以下の構造です。

組織的理由:回答の信頼性、セキュリティ、コスト
個人的理由:使い所がわからない、何を問えばよいかわからない

建前と本音の構造とも見える。。。

つまり、社内のお知らせを調べる手間が解消されるなどはあるが、多くの人にとって、日々の業務フローの中で活用できるほどにはなっていません。

『毎日AIに問いかけるほどの業務はない』

・・・ん?
この発言に違和感を持ちました。
「〇〇の情報はどこにありましたっけ?」
「〇〇について教えて下さい」
という質問は絶えず、「大半は何かしらの情報を探している」という声を多くの大手企業のホワイトカラーから聞いています。
このGAPは何から来るのでしょうか?

生成AIへの本当の期待値

生成AI、というかChatGPTは何が凄かったのか?
多くのみなさんが驚いたのは、対話によって自分の求めていることを理解し、それを返答してくれることではないでしょうか?
私は生成AI、特に文書生成AIを以下の図のように解釈しています。

生成AIを擬似的なコンサルタントのように感じる3つの力

①対話力

質問者の立場を理解し、必要な情報をわかりやすく伝える力

②思考力

質問者が行動するために、仮説を提示する力
※プロンプト次第ですが、ビジネスフレームワークに基づき情報を整理することで、ビジネスでの壁打ち相手になります。以下は例です。

基本的な事業仮説検証のプロセスを理解しておくことが重要
比較観点を細かく指示すれば叩き台を作ることは容易

③知識力

質問者が理解できていない知識を、Web情報を中心に補う力
※ハルシネーション(幻覚)を起こし、創作情報を提示するリスクはあるが、これは使い方次第。

特に対話力が高かったので、
これで何でも相談できるのでは?
という期待値が高まってしまったのですが(それがハルシネーションなのですが。。。)、プロンプトの工夫なくしては、それほど柔軟に欲しい情報を得られるものでもないため、業務での活用は浸透しませんでした。
大手企業も一定それを理解した上で、「使えるようにしてみたら、どこで使うのか?」を検証した1年でした。
一部、Engineerの間では、プログラミングの一部を確認する上で、業務フローに組み込まれ始めたという話も出ていますし、多くの企業がテンプレートをセットした業務ツールをリリースした1年でもありました。
来年はもっと加速するでしょう。

本当に生成AIは業務で使われるのか?

いきなり結論ですが、答えは「YES」です
ただ、常に疑問を持ち続けることが必要です。
私の現時点での懸念は2つ。

1)問いが持てるか?
2)評価できるか?

先程のような、何か知りたいことを問うことはできると考えています。
しかし、「ライドシェアが実現することで逆に発生する社会問題は?」といった、2,3歩先を読んだ問いを立て、それを検証するといった問いを持ち続け、生成AIと対話し続けるためには、問う人の思考力や知識力が一定必要になります。
また、その問いに対して出てきたアイデアを評価することができなければ、重要な情報を見過ごされてしまいます。
先のアンケートにおいても、生成AIに頼ることで思考力が低下するのではないかという懸念がありましたが、私もその懸念を感じています。

思考経験の低下が深刻な業務品質の低下を生み出すのでは?

生成AIを業務フローに組み込む2024年。
そもそも、問いと評価ができる知識がある人にとっては大きく生産性を高める1年になりそうですが、ますます問いと評価ができる思考力と知識力の重要性にスポットライトが当たると私は考えています。
そして、それを持っているのが、自らの暗黙知で行動する人ではなく、組織の中でノウハウを形式知化し、仕組みによって適切なマネジメントができる人材です。
チームと良き対話ができる人が、AIとも良き対話をし、適切なパートナーとなることで、活用定着が飛躍的に進むでしょう。
弊社としてはその部分をがっちりサポートする、そういった新体験、新機能を続々提供予定となっておりますので、ご期待下さい!

まとめ

自然言語処理界隈問わず、世の中が生成AI一色だった2023年を振り返ってみました。
いろいろ書きましたが、心の中にあるモヤモヤを最後の供養しておきます。

自分たちがやろうとしていたことを先にやられるのは嫌ですよね。

昨年の「5つの解像度」のnoteを書いている時、
上記について、言語化できない、というかしたくない強烈な負の感情がありました。※日記に長々とポエムが書いてありました苦笑

しかし、自分を奮い立たせ、自分たちの目指す場所の解像度を高めることで、プロダクトのメッセージや価値は更に研ぎ澄まされたと感じています。「何とかする」という矜持よりも、一度きりの人生、このビッグウェーブに乗るしかない、という気持ちの方が強いです。
恐らく、インターネットが登場した時と同等以上の歴史の分岐点に立っています。本当の意味でAI時代に突入した今、そのど真ん中で事業の舵取りをしている人はそう多くないでしょう。

GPT5も、DELL-4も、GAFAMも仕掛けてくることを前提に、みんなの先遣隊として、「不確実性を減らし、ビジネスを単純なゲームにするために」全力を尽くしていきます。

AIと共に不確実性に挑む経営者のイメージ by DALL-E 3

来年は、今年の学びを踏まえ、定期的にまとめていこうと思うので、noteおよびXのフォローも宜しくお願い致します!


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