第七章 中受地獄(白石真央)(9)
授業は午後七時に終わったけど、私は塾に居残って問題を解いていた。
三輪さんや村上さんはもう帰っていて、いつもは残る蓮君もさっき帰り、教室には宮田君と私の二人きりになった。
とにかく今日お父さんに出された問題を解かなくちゃ。私はお父さんに出された問題を見た。双葉中学の問題だ。これも複雑そうだけど、このあいだの問題より手が出せそう。
とにかく手を動かしながら、考えていたら、宮田君が声をかけてきた。
「例のお父さんの問題?」
「うん。これができなきゃ、今日は帰れないの」
「できそう?」
「あと一歩でできそうなんだけど……」
宮田君がこちらに来て問題を見つめた。しばらくしてから思いついたように「あっ、そうか」と呟いた。
「できたの?」
私が訊ねると宮田君は頷いた。
「たぶん。いま白石さんはどこに補助線を引けばいいのかがわからないんだと思う。面積を求めてるから、面積を出すにはどうすればいいのかって観点で考えたら、思いつくかも」
宮田君に言われてはっとした。そうか。面積だから、ここに補助線を引けばいいのか。私は早速問題用紙に補助線を引いた。
「そうそう。その補助線を思いつけば、あとは簡単に解けるよね」
「うん、宮田君ありがとう」
宮田君は照れくさそうな顔をした。
「僕はヒントを言っただけだから、すごいのは白石さんだよ」
宮田君の優しさは、いまの私には辛すぎる。私は宮田君にお礼を言うと、教室を出た。教室から出る直前に、宮田君がなにか言いたそうだったけど、このまま宮田君といると泣いてしまいそうなので、私は気づかないふりをした。
(続く)
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