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第八章 学力は四年生で決まる?(山浦駿)(15)

 公開模試の日。
 僕は簡単な問題だけは絶対に間違わないように気をつけた。
「パッと見て解法を思いつかない問題なんて、一時間考えてもできないことのほうが多いんだよ。テスト中はそんな問題を気にするより、ミスをしないようにしたほうが得さ」
 浜名君のその言葉を信じて、パッと見てできそうにない問題には時間を書けず、確実にできる問題だけを間違わないように、何度も見直した。
 問題自体はいつもと変わらない難易度のように感じたけど、目的を持って解いたから、心なしか簡単に感じた。
 テストが終わって自己採点をしたら、332点もあった。
「すげえな。今回は結構難しかったってみんな言ってたぜ。332点なら余裕で50超すだろ」
「でも、いつも僕自己採点と30点くらい違ってるんだよね」
「それでも300点超えじゃねえか。今回は作戦成功だな」
 清原君も隣で頷いた。
「そうだよ、山浦君。今回はみんな難しかったって言ってたから、平均点は低いはずだよ。僕も今回は難しかったって思ったし」
 僕が二人に励まされて帰ると、家ではパパとママが待っていた。
「どうだった?」
 ママが心配そうな面持ちで訊ねた。
「いつもよりできたと思う」
 僕がそう答えると、ママの顔がぱっと明るくなった。
「本当?」
「うん。今回はミスをしないように、特に心がけたからケアレスミスが少なかった」
「今回はミスターケアレ・スミスさんはいなかったってわけか」
 横からパパがつまらない冗談を言った。それから腕組みをして頷きながら言った。
「ま、今回はパパも駿のことを見直したぞ。はたから見ても駿が気合入ってたのもよくわかったし。今回は頑張ったってことで、偏差値50いかなくても塾は続けていいぞ」
 僕は強い調子で言った。
「安心してパパ。今回は偏差値50は絶対に大丈夫だと思う。だって塾の友達にも助けられて対策したんだから」
 ママが僕の頭を撫でながら言った。
「そうよねー。駿は今回すごく頑張ったって思う。ママ感心しちゃった」
 ママに頭を撫でられながら、僕は誇らしいような嬉しいような気持ちになっていた。勉強頑張るってことも悪いことじゃないかもしれない。

(続く)



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