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第八章 学力は四年生で決まる?(山浦駿)(13)

「わかった。でも、ミスを減らすって、どうすればいいの?」
「山浦はテストのとき、どんな解き方をしてるんだ?」
「どんな、って大問1から解いていくけど」
「たとえば算数で、難しい問題に出会ったらどうするんだ?」
「つい考えこんじゃうことがあるんだよね。それで時間がなくなってよく焦っちゃう」
 浜名君は腕組みをして考えていたが、しばらくして言った。
「じゃあ、次からは30秒考えてわからなそうだったら、すぐに次の問題に進め。そしてできる問題から片づけていけ」
「それが終わったら、わからなかった問題を考えていいの?」
「いや、次は解いた問題の見直しだ。とにかくミスをなくせば失点は減らせるんだ。次回の公開模試は極力ミスを減らすようにするんだ」
「それが終わったら、わからなかった問題をやっていいの?」
「いいや、ずっと見直しだ」
「マジで? そんなことしたら点数が取れないよ」
 浜名君は僕の顔をまじまじと見つめた。
「じゃあ、聞くがな。おまえさ、パッと見てできそうにない問題を考えて、いままでに時間内にできたことはあったか?」
 よく考えたら、たしかにそれできた問題なんてほとんどない。僕は首を振った。
「だろ。つまり、難しい問題に時間をかけるより、計算ミスを減らしたほうが効率的なんだよ」
「あそっ……いや、なるほど。浜名君ってすごいんだね」
 僕は尊敬のまなざしで浜名君を見つめた。
「実はなこれもな、兄貴の受け売りなんだよ。おまえのことを話して、どうやって偏差値50以上取れるのかを聞いたときに、兄貴が教えてくれた」
 浜名君のお兄さんは、僕にとっては雲の上の存在の海城中学に通っているって言っていた。そんなすごい人が、僕のために対策を考えてくれるなんて。
 浜名君は国語の解答用紙を指さした。
「次はな、国語だ。公開模試の国語の問題は全部解くには時間が足りないように作られてるんだよ。だから……」
 それからも浜名君は国語の対策、理科、社会の対策を事細かに教えてくれた。
「つまりこれだけを意識すりゃ、偏差値50も不可能じゃないってことだ。一緒に頑張ろうぜ」
「うん」
「ちなみにこの技は短期的にしか通用しないからな。長期的にはやっぱりできなかった問題をできるようにするとか、漢字や語句を覚えるとかしなきゃダメだからな。何事も地道が一番ってわけよ」
 それから僕は浜名君の言われたとおりにミスだけはしないように注意した。
 朝の計算問題もミスしないように、いつもは見直さない問題も慎重に見直した。その結果、簡単な計算ミスはだいぶ減った。心なしか、気持ちにも余裕が持てるようになった気がする。

(続く)




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