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2023年のアンコール

続編を書きました。1話目はこちらから↓↓↓


「あ、リオ!」

新宿東宝ビル横。
人々がたむろする広場の向こうには昨年の春に開業したばかりの東急歌舞伎町タワーが225mの高さを誇り、仰々しく屹立している。エンパイアー

俗にトー横と呼ばれるエリアに来ると、胸下まであるストレートヘアに鮮烈な桃色のインナーカラーを入れた女の子が僕の元に走ってきた。メロス

そのかわいらしい雰囲気を纏う、同じ高校の同級生であるレナは、レフレムのオーバーサイズパーカーを羽織り、歌舞伎町のランドセルのようにMCMのミニリュックを背負っていた。

そして、抱きつく。
これはたぶんモンパリの甘美な匂い。
あと、グレープフルーツ。モンスター?
爆発。インフレーション理論

僕の身長は153cm。レナは158cm。
今日はヨースケの白い厚底スニーカーを履いていたから、7cm底上げされて、約165cmになっている。僕も負けじと10cmの厚底を履いていたが、ほんの僅かに届かなかった。キィーッ、惜しい

カラコンはキャンマジ5番。着色直径が広く狂おしいほどに真っ黒なカラコンと気怠げに緩む水色のレッグウォーマーが、彼女らしかった。
蛞蝓のごとく滑らかにとぅるりと膨らむ涙袋。
寂しげな微笑を添えたようなアイラインは、乙女チックなタレ目を強調していた。
唇は、ミルキィピンクのゼリーみたいに艶やかな光をゆらゆらと浮かべていた。くらむぼん。

「レナ、最近学校にいないから心配したよ」
「えへへ。なーんか行く気しないんだよね
  いつもここ来てさぼってるの笑 馬鹿みたい」

地雷系ファッションに身を包んで和気藹々とTikTokを撮影する女の子たち、侃侃諤諤と談笑するホストっぽい見た目の集団、窮余一策として段ボールを敷き、寝食をしのぐホームレス。

そこには、本当に様々な世界が広がっていた。

ぐぅ

「おなかすいちゃった。」
「んー、僕も。なにか買いにいかない?」

西武新宿駅前のマクドナルドでLサイズのポテト、チキンナゲット15ピース、ビッグマック、アップルジュース2つ、期間限定のトリプル・サムライマックをテイクアウトした。(店内で食べたかったけどランチタイムで満席だったので断念)
レジのバイトは全員東南アジア系だった。ガチ
コロニー。at 新宿区  目指すは大東亜共栄圏!

油脂がほとばしるジャンキーな昼食を喰らい、腹を満たしながらお互いの近況を語っていると、雨がぱらぱらと降り出した。今年はきっと豊作ね。

「あ、傘持ってるよ。」
「えーんありがとう。まじたすかるー」

お天気雨だった。
太陽は真上から少し傾きかけていた。

「このままネカフェ行く?ほら、そこにカスタマあるし。あたしさっきまでいたの。」

水たまりと人々の足跡は、ロールシャッハテストのイラストみたいに不可解な模様を浮かび上がらせた。僕の好きな、雨降りの日のアスファルトの匂いが立ちこめる。今日は、なぜか苦しかった。

カスタマカフェは、ビルの7階。
以前来たことがある。その日も雨だった。

「あと9時間は滞在できるってさ。」
そう言って、レナは僕に個室の鍵を渡した。

カレー食べ放題!というポップが踊る。
さっきハンバーガー食べたばっかりだけど、まーせっかくだし・・・と思い2人で顔を見合せた。
炊飯ジャーのご飯をよそい、カレールーをかける。

「レナってば、かけすぎじゃん。溢れちゃう」
「このくらいだいじょーぶ!だいじょーぶ!」

こんもりと盛り上がったライスにこれでもかというほど茶色い液体をかけて、胸を張って言う。

そして各々に漫画や雑誌をむさぼり、カップラーメンやスナック菓子まで持ち運んで、鍵付きのインターネット空間に籠った。九龍城砦。

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