寛大さん、「探究学習」ってなんですか?vol.7 探究授業の秘訣は「そんなの、アリ?」と「なんだこれ?」
「そんなの、アリ?!」な世界を示して前提をぶち壊す
中村寛大(以下中村):大前提として「自分にできることは少ない」と思っている子どもたちが本当に多いんですよね。自己肯定感が低かったり、「自分が社会の役に立てるわけがない」と思っていたり。なので、探究学習にいざ取り組んでみても、やってみたいことも思いつかないし、アウトプットも小さくまとまってしまいがち。
その前提を全部ぶっ壊し捨ててもらうために「そんなの、アリ?」という世界の提示を頻繁に行っています。世界中で活躍する日本人を授業で紹介し、実際に講義をしてもらっていろいろな世界を見せてもらうんです。前提は「なんでもありなんだよ」ということを示すために、各カリキュラムの目的や生徒さんの傾向を考慮しながら、最適な方々をアサインしています。
-授業の最初にゲスト講義をセッティングするんですか?
中村:初回で突然出すときもあれば、「今、どんなことをやってみたい?」とワークショップ的に考える時間を設けてから講義に入るときもあります。
-全部の授業でやるのでしょうか。
中村:ほとんど全部ですね。タイモブのコンセプトは「Lerning by Doing」。これを実践するひとつとして、「先駆者から学び自分の前提を壊す」ために取り入れています。
「なんだこれ?」辞書にない生き方に認知不協和を起こす
-講義ゲストはどうやって選ぶんですか?
中村:まずはその学校さまが探究学習を通じて実現したいことや、メインパーパスなどを何度もヒアリングします。そこから逆算して必要な素養やスキルとは何なのか、とブレークダウンし、必要な経験を設計する。
これが基本の流れで、そこまでいったら、ゲスト候補も何名かピックアップして、先生方と一緒に決めていく、という流れでやっています。
-生徒さんたちの反応はどうですか?
中村:「なんだこれ?」と。開いた口が塞がらない、みたいな反応が多いですね。あまりにも自分が生きている世界とかけ離れていると感じるとこうなる。処理できない、というか……僕も最近教えてもらったのですが、「認知不協和」という状態らしいです。
-それは「驚き」なのでしょうか。
中村:驚きを超えて「衝撃」ですね(笑)。僕たちが企画する授業のゲストの生き方って、たぶん子どもたちの辞書に無いんですよ。
所与をゼロにし、考えられる余地を広げていく
-授業カリキュラムの作り方を具体的に教えていただけますか。
中村:最初に決めるのはプロジェクトの「目的」です。ご担当の先生とディスカッションをする際には、この目的決定を一番大事にしています。
たとえばある高校さんでは、「没頭する人を増やす」ということが目的でした。その目的を達成するためのカリキュラムを作る。
「好きや得意で活躍している人たち、没頭している人たちにまず会う必要がありますね」
「没頭ってこういうことなのか!と知ってもらう必要がありますね」
というようなかんじで、先生方と一緒につくりあげていく。
-授業を通して、生徒さんたちはどんな体験を得ることができるのでしょうか。
中村:所与(※)がゼロになる体験、とでも言えばよいかな。「自分の当たり前は当たり前じゃない」とか、「人と違うことをやってもいいんだ」と。
-自分の枠を広げていく、と。
中村:そうですね。それが目的なので、探究学習のテーマ自体は、ある意味ではなんでも良いんです。「グローバル」と銘打っていますが必ずしも世界に挑戦しろと言っているわけではなく、もちろん国内の何かをテーマにおくのもいいと思います。日本だって世界の一部だから。ただ、考えたうえで自分で意思決定をしようよ、選択しながら主体的に選択しようよ、と。
(※所与:解決すべきものの前提として与えられたもの)
自衛隊マニアの高校生が探究学習を通してイエメンの難民支援を目指す
-タイモブの探究学習プログラムによって、なんらかの変化が起きた生徒さんの例などがあったら教えていただけますか。
中村:たとえば、宮崎でイエメンを支援している高校生がいます。彼はいわゆる「自衛隊オタク」。最初は単に自衛隊が好き、というだけだったんですが、探究学習を通して、世界平和を維持したいという自分の想いに気がつきました。
そこから「今世界で一番平和じゃないところってどこなんだろう?」という問いが生まれ、いくつかの国や地域の中で彼が一番心を動かされたのがイエメンだったんです。反政府勢力と政権側の間で6年以上、内戦が続くイエメンでは、食糧危機をはじめとしてたくさんの人々が苦しんでいます。
そんな現状を目の当たりにして、もっと知りたい、と。実際にイエメンでコーヒー農園を経営している方がAPEの卒業生で、その方と話をすることができました。イエメンの状況を知ったことで、彼は「僕もイエメンを支援します」とクラファンで資金を集めたり、地域でイエメンのコーヒーを売ったりしています。
もともと彼は、個人的に自衛隊の研究みたいなものをしていたんですよ。自衛隊に行き過ぎて、顔パスで自衛隊の基地とかに入れるぐらい(笑)。
そんな宮崎の自衛隊オタクが、イエメンの貧困削減支援や難民支援に取り組んだ。
ただ情報を集めただけでなく、現地の人に話を聞いたり、実際に行動したりしてプロジェクトに繋がっていったんですね。クラファンでは当初のゴールには残念ながら到達しなかったのですが、40万円を集めて、73人の支援者と直接やりとりをして、結局支援に繋げられた。すごいことだと思います。
ーありがとうございます。実践中心の授業スタイルだからこその体験ですね。次回は、そんな授業設計の裏側についてもう少し聞いていきます。
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