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呻吟

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自分の思想が滲み出たフィクション小説、『呻吟』です。 さとり世代の呻吟と思春期の葛藤を描く、ユース・サスペンスドラマ。 呻吟は”しんぎん”と読みます。葛藤の類義語です。
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#青春

【呻吟】死

【呻吟】死

 自室に戻ると、罪を犯す前、元通りだった。改めて親への感謝が溢れてくる。砂の世界と似た雰囲気を部屋に覚え、みょうな落ち着きがあった。
 まだ彼との約束が、アドレナリンをとめどなく放出させてくる。あんな賭けはしたが、実際はそれを上回る海外大に受かろうと、芸術や作品に没頭して世間に認められようと、彼は賭けに勝ったことにしてくれるだろう。私がそれこそ文字通り、一生懸命にアツくいられる対象を見つけられれば

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【呻吟】理の日

【呻吟】理の日

 約束の日前日。寝床にて、急に黒いナニカに襲われた。
 翌日で、彼とは二度と会えなくなるのだろうか。他人事のようだが、私が殺すことになるはずだ。
 彼が苦しむ姿を見たくはなかった。自殺同様、人を簡単に殺せるとも思えなかった。
 原因はわからないが、殺すという行為はとても恐怖に満ちていた。殺したくなくなった。

 当日、発表直前のアレと似た恐怖心が脳を支配していた。殺害方法や道具の準備を、まるでして

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【呻吟】ーーとまともな中学生

【呻吟】ーーとまともな中学生

 『明るい』と言うと、またニュアンスが違う気もする。
 クラスメイトや私と関わる人全般には、私は夢を描ける子で、夢を叶える知性を兼ね備えているように思われていたことだろう。成績優秀で、リーダーシップを取る。クラスの人は皆私を慕い、友達がたくさんいる。
 全ての人の彼女の印象はこうだった。絵に描いたかのような優等生っぷりだ。
 そんな中、ーーだけは、私をそんな目では見ていなかった。
 『優等生もどき

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