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君は砂丘を見たか①

鳥取砂丘―言わずと知れた山陰地方の一大観光地だ。
しかしとある先輩がこう言ったらしい。

「鳥取砂丘が単なる『砂場』に過ぎないのではないか、見てみないとわからない」と。

そんな馬鹿な、と思うかもしれないけれど、百聞は一見に如かずと云うのだから鳥取砂丘が単なる「砂場」だという可能性は己の目で捉えて初めて拭えるのではないか。

そんな鳥取砂丘の実在を確かめにサークルメンバーで山陰に旅立ったのが、今回のお話。

Day 0

3/16の18時半、本郷の部室にいた。
普段通いなれた部屋から旅に出る経験、一度はしてみたいものに違いないから。

与那国島から持ち帰られた泡波を数杯あおり、本郷三丁目駅前に新しく出来た―そして日常になりつつある―バーガーキングのメニューを前会長の名前が命名されたサークルのPCで眺める。

ダブルチーズバーガーセットを今宵の食事にすることを決め、いつものこの部屋と不釣り合いな大荷物とともにキングとの「謁見」に繰り出したのは19時40分頃だったように思う。夕食を済ませた20時半、東京駅に向かって丸の内線に揺られる。

東京駅で、横浜駅から合流する1人を除く6人のメンバーが揃い、乗車券の発券や食糧の調達をする。
思えば人と乗るサンライズエクスプレスというのはかなり久しぶりで、高揚感を隠せない。


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SIGMA 24mm F3.5 DG DN

列車は21:50定刻に東京駅を滑り出し、西を目指す。
どうやら今晩は満席に近いようで、普段ならば東京駅の停車中で来るはずの検札が横浜を過ぎてもやってこない。
ひとりで過ごす個室も悪くないものだが、せっかく人と乗るサンライズで過ごす孤独な時間は嫌なものだなと思った。

そんな考えが何周かする頃、頭を下げる車掌がやっと検札に回って来た。
自由の身になり、隣の先輩の個室に転がり込む。
さあ、長い夜が始まる―

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SIGMA 24mm F3.5 DG DN

お互いを撮りあうなどして過ごしていた23時半過ぎ、急に列車が止まるとともに謎の縦揺れに襲われた。どうやら東北でまた大地震があったらしい。早くも旅の続行が危ぶまれる。しばらくして動き出すも、吉原駅で抑止。
他の個室にいた先輩もやってきて、3人詰めの個室でまんじりともせず列車が動くのを待つ。

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SIGMA 24mm F3.5 DG DN

1時になろうかという時、前触れなく列車がまた動き始める。
そうなると快調で、ひとつ、またひとつと駅を通過する。
部屋の電気を消し、窓の外に流れる光を眺める。

お開きになったのは2時半ごろ、豊橋駅手前だった。
眠い目をこすりつつ自分の個室に帰り、間もなく眠りにつく。

Day 1

新大阪駅での臨時新幹線乗り換え放送に眠りを妨げられつつ、次に起きたときはもう伯備線に入っていた。

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SIGMA 24mm F3.5 DG DN

朝の支度をなんとなく済ませ、4つ隣のノビノビ座席にいる先輩たちを訪ねる。どうやら隣が来なかったらしく、快適な夜を過ごしたようだ。
しばらく語らい、寝足りないから寝るというので自分の個室に戻る。

また隣の個室に邪魔したり、降りる準備をしたりしているうちに、気づくころにはもう米子だ。

ここからはハイエースグランドキャビンが旅の友である。
町では救急車なんかで見るアレで、こんなの運転したくないなぁという感情に包まれる。このときだけは。

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Leica Elmarit-M 90mm F2.8

米子市役所前の吉野家、ゆめタウン出雲と面白いネタたちを吸収しつつ、ハイエースは出雲大社に向かう。

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Leica Elmarit-M 90mm F2.8

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8

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Leica Elmarit-M 90mm F2.8

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

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Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28 ZM

神なんて信じないと境内で悪態を付いていたらば「信仰なければ路は閉ず」というような趣旨のおみくじがあたり、なんとも複雑な気分になる。
しかし出雲大社は初だけれども絵になる場所だと思う。諧調が豊かに出るレンズで撮りたい被写体だ。

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RICOH GRIII

昼食は出雲そばの荒木屋にて。
「なめこおろし」「有機卵」「とろろ」「素」の四段が味わえる割子四代そば。出汁と薬味をそれぞれの段に入れて次々と移していく。

このテーブルでは飲むものとしての適正によってお茶を「ビアンカ」蕎麦湯を「フローラ」出汁を「デボラ」と呼ぶ謎のムーブが発生していた。
自分はもちろんビアンカさん派なのだ。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

おいしいお蕎麦で腹を満たし、狭い路地を縫って稲佐の浜に出る。
ひたすら砂をふるいにかけている人がおり、こんな形できれいな砂浜が維持されているのかと驚く。
曇りでもHeliarは本当にいい色を吐いてくるので安心して任せられる。
Leicaの薄型カバーガラスとの相性はあまりよくなさそうだけれども。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

次は「世界の歴史的灯台百選」に灯台が選ばれている日御碕。なかなかカーブの多い道でハイエースの難しさを感じたよね。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

天照大神が祀られている日御碕神社。上の道路から谷間に見えたその姿は圧巻だった。一気に降りて境内へ。京都に同じようなところあるよなーと思いつつも今になってもそこがどこだったかは思い出せない。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

行程が押しているので、早々に神社を後にして歩いて灯台にアプローチできる道路を上る。海側は港に海鳥たち、山側は地層が見えていい道だった。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

途中でイカを手にする観光客とすれ違う。ふと先を見やると、なんと店先に串イカが大量に並んでいるではないか。愛想のいいおばちゃんを前に、気づいた時にはイカが自分の手にあった。いい歯ごたえでおいしかったっけ。

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Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28 ZM

イカを食べきらないうちに日御碕灯台が見えてくる。さすがに最強の灯台だけあって周りの風景も含めて絵になる。

強風に煽られながら、不安定な足場を先へ先へと進むオタクたち。

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SIGMA 24mm F3.5 DG DN

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

ひとしきりの恐怖を味わって、岩場の先に立つ。
今思えば初日からかなり飛ばしているなと思う。こんなことを繰り返したからなるほど帰って来たらば布団から起き上がれないわけだ。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

寒さに限界を覚えたので、ハイエースに戻る。
その道中で会ったギャルのフグ。イケてるね。

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Voigtlander Heliar 40mm F2.8 VM

これでもかというくらい灯台を楽しみつくし、島根県にある「北海道」で夕食にするため道を一気に下る。
ここは自分が運転を担当したけれどもハイエースの面白さがわかってきた気がした。

宿のチェックイン時間の都合で急ぎ「北海道」を去り、今日の宿美保関までハイエースは爆走する。

あっという間についた美保関の静かな街。駐車場、宿の目の前が港というオタク泣かせの好立地。楽しい夜が予感された。

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Carl Zeiss Planar T* 2/50 ZM

宿に荷物を置き、早速街に繰り出す。閉店間近な店の光を皆々が追う中、なぜか夜の虫のごとくひとつの電灯に吸い寄せられた。
やや湿ったタイルに反射する光が美しかった。

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Carl Zeiss Planar T* 2/50 ZM

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Carl Zeiss Planar T* 2/50 ZM

宿の前で一枚。貸し切り棟の暖かな光と店じまいする酒屋から漏れる寒々しい光のコントラストが楽しい。

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Leica Elmarit-M 90mm F2.8

石畳の湿度を感じる路で。
これが撮れただけで今日の天気を許したくなった。

さすがに風呂に入りたくなったので、ここで部屋に戻る。
もう一度繰り出すつもりだったが、酔っ払いにそんなことは不可能なのだ。

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Carl Zeiss Planar T* 2/50 ZM

今晩の宿は「美保館」神邑。
古民家リフォームの建物で、今夜は一棟貸し切りだ。
ひとつの部屋に寿司詰めになって大富豪に興じる夜。
酒が回った2時半過ぎ、就寝。

長くなったのでここで終わります。

カメラはLeica SL
すべてAdobe Lightroom Classicで現像

以上です。

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