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【連載小説】俺様人生 vol.8「彼女」

翌日は母親が入院手続きなどをしにきてくれた。

うちに帰って着替えなどを持ってきてくれた。


プレゼント、開け放ってたけど、ばれなかったかな……?

少しどきどきする。

別に彼女がいたって非難されることではないけど、アスカは正式に俺の彼女ではない。

だから、親に紹介するなんてことは出来ないし、親に勘づかれたくない。


とりあえずなにも言われなかった。

ただ、

「部屋が汚かったから掃除しておいたから」

とだけ言われた。



アスカは仕事が終わってから見舞いにきた。

小さな花のアレンジメントを持って来た。


「レンくん、大丈夫?」

「うん、もう痛くもなんともないから、平気。ただ、一週間くらい入院とは言われたけどね」

「一週間かぁ……長いね。私、毎日お見舞いに来るからね!」

「毎日……ありがとう。でも、遠いし、いいよ。気にしなくても」


そのときアスカが言った。


「ううん、私、レンくんの彼女だし、毎日来るよ」


今、なんと言った?

彼女って言った?

うそ、まじで?


俺は一気に嬉しくなる。


ハニタンのことなど一気に吹き飛んでしまった。


「ほんとに?」

聞く声が震える。

「うん、ホントだよ!」


アスカは見舞いの時間いっぱいいっぱいまで病室にいると、笑顔で手を振って帰っていく。


それを見守る俺。出口までついていきたかったけど、点滴が俺の邪魔をして行けなかった。


アスカが帰ってから、俺はアスカの言葉を復唱してニヤニヤしていた。

彼女だって!うふふふふ……

俺はアスカにメールする。

『今日はありがとう。気をつけて帰ってね』

すると、割りとすぐに返信が来た。

『ううん、レンくんこそ大事にしてね。今からハニタンちに行くから、メールはできなくなるかも』

俺はため息をついて

『わかったよ。ありがとう。気をつけてね』

それしか返信出来なかった。


アスカの言葉に一喜一憂する俺。

情けねー!!

結局ハニタンとは切れてないんじゃないか!

ま、いいか……

俺のところに来てくれるときだけ、俺の彼女ってことでも……


いつの間にか諦めの心境になっていた。



アスカは次の日も来てくれた。

約束通りだ。

しかし、俺は昨日ほど嬉しく思いはしなかった。

やはりハニタンのことが引っ掛かっているのだろう。


思えば、一番最初に泊まった日以来、行為は全くなかった。

俺は精力は弱い方だから全然構わないんだけど、アスカはどう思っているのだろう?

『彼女』って言ったのはなんだったんだろう?


「レンくん、今日は楽しくなさげだね……なにかあった?」

またもや無表情の俺の心中を読んでくるアスカ。

「いや、なんともないよ?」

と答える俺。

ほんとはなんともなくない。

ハニタンと別れて欲しいと言いたい。

でも、それを言ってしまうと、俺たちの関係も終わってしまう気がする。


だから言えないのだ。


まだ出会って日が浅いのに、失いたくないものが俺には出来てしまったのだ。


俺は毎日来てくれるアスカの『彼女』という言葉を信じるしかない。


あー、なんて情けねーの?俺。

よりによってこんな女の子に恋するとは……

たちが悪いっての!


そしてまた、諦めの心境になる。


俺は楽しそうに折り紙を折るアスカを見つめて思った。


いつかハニタンと別れる、その日まで俺はそばにいよう、と、俺は思った。

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