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【連載小説】俺様人生 vol.3「メロディと煙の狭間で」

「悪い悪い、遅れてごめんねー」


来たのは細身で可愛らしい女の子だった。

俺の心臓がMAXで早鐘をうつ。

なんだってこんな可愛い女の子があんなブログを書いているんだ?

小一時間ほど問い詰めたい。


「あ…いえ、俺もさっき来たところです」

と嘘をついた。

思わずそう言っちゃったんだ、他意はない。


彼女はニコッと笑うと、

「今日会っていきなりメイド喫茶っていうのもなんだし、カラオケにでも行こっか?」

と言う。

なんと優しい気遣いの持ち主なんだ!俺は感動した。


そのあとはやすさんの車で移動する。


カラオケに着くまで実に彼女はよくしゃべった。

まるでマシンガンのように。

名前がアスカということ、バツイチだということ、公務員だということ。


そんなに個人情報を開けっ広げ過ぎるとさすがに危険なんじゃない?と思うほどだ。


そうこうしているうちにカラオケに着いた。

実は俺、カラオケ初めてなんだ。

昔、家族で一度行ったかな、くらいの記憶しかない。

だから、実は興味はあった。


さくさくと受付をすませるやすさん……こと、アスカさん。

飲み物を一つチョイスするらしい。

俺は無難なところでジンジャーエールを頼む。

アスカはというと、アイスコーヒーにシロップを2つつけろと言っている。

甘党なんだなぁ、女の子だなぁ、しみじみ実感。

いよいよカラオケタイムスタート!

って、曲入れるの早いよ、アスカ!

俺はリモコンを見て、なんとなく操作を覚える。

いつもパソコンやっているから、だいたいすぐに扱いがわかった。


というか、アスカ上手いよ!歌上手いよ!


しかも曲入れるの早えよ!


俺はちょっとふんふん♪しながらも自信のあるポル○グラフィティの曲を入れる。

マイクで声を出してみる。

音量大丈夫かな?

歌いながらも声量や上ずる声を気にした。

アスカも気にしてるかな?

と思って見たら、俺の曲そっちのけでリモコンをいじっている。

少しは聞いてくれよー!!


曲が終わるとアスカが拍手した。

「結構歌上手いじゃん」

タバコに火をつけながら言うアスカ。


タバコ吸うんだ……


俺はタバコは苦手だ。

臭いがくさいし、煙で目がいたくなる。

服だってタバコ臭くなっちゃう。


一瞬、それを言おうかとためらったが、言えない間に曲が始まった。


アスカは超ヘビースモーカーらしく、次から次へと火をつける。

俺は目がしぱしぱしたが、やはりタバコが苦手だとは初対面では言えなかった。


メガネをとってまぶたを閉じて押さえる。

さっきよりずいぶんよくなってきた気がする。


すると、その姿を見て、

「タバコ吸いすぎたかな?」

とアスカ。

「はい、目がしぱしぱします」

やっと言えた!!


でもアスカのタバコは本数こそ減ったものの、吸うことはやめない。

お前どれだけタバコ吸うんだよ!

俺は叫びたい衝動をなんとか抑えた。


タバコ以外のカラオケは、まあ楽しかった。

アスカは歌が上手かったし、そのアスカが俺をほめてくれる。


俺は調子に乗ってB'sとかを歌い出す。

これも誉められた。

いつも家で聞いていたからな。


歌うことがこんなに気持ちいいなんて思わなかったよ!


アスカがちょっと微妙な顔で言った。

「ハニタンは歌が下手だから……」


ハニタンとは、ブログ上彼女となっている、アスカの彼氏のことだ。


「気にしないで、歌って!」

アスカは微妙に寂しそうに言った。


俺も深くは考えまいと、声を振り絞って歌った。


さ、て。

カラオケの後はなにも特にすることはなく、近所のショッピングモールをうろついた。


いつも自分一人なら行かないような雑貨屋を巡った。


女の子はこういうところが好きなんだね……


俺も楽しんだ。


帰る時間になり、さよならを言い、車に乗ると、アスカが何かを言っている。

窓を開けると、小首を傾げて

「また……会ってくれるよね?」

と言う。

俺は彼氏に対して少し申し訳ないとおもいながらも

「時間が合えば、いつでも」

と答えた。

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