風の抜ける場所で
さあ、ランチに行きましょう。とっておきの場所があるのよ。
そう言ってDylaはわたしを促した。
わたし・とっておきって?
Dyla・着いてのお楽しみよ。
と、いたずらっ子のように笑った。
わたしたちは車に乗り、ダマスカスゲートの前を通過し曲がりくねった道を通り少し高台へ向かっていった。
車を止め眼下にはエルサレムオールドシティが見える。砂埃で少し蜂蜜色した木々や遠くに見えるオリーブ山。緑と淡い茶色の混合。
Dyla・ここよ。
玄関先の庭にはデーツの木やオリーブの木などこの地を象徴するアラブと地中海のミックスされた雰囲気がある。木々の中の階段を登り建物に入る。外観は白とブルーのモザイクが美しく穏やかで静かな時間が流れている。テラス席はとても開けていて空気の抜けも良く外が40度もあることを忘れさせてくれる。周りが爽やかな白とブルーで統一されているのもその効果の1つかもしれない。
Dyla・
ここはね、パレスチナを支援しているカフェなのよ。元々は美術館だったんだけどね。使われているお野菜なんかもイスラエル産じゃなくてパレスチナ産なの。パレスチナの農家から仕入れているのよ。あの席に座りましょう。眺めもいいわ。
わたしたちはテラスの奥の席に腰を下ろした。
風が本当に気持ちがいい、心地のいい雰囲気のカフェだった。
Dyla・わたしはチキンサラダを、あなたは?
わたし・うーん、わたしはナスとフムスのサンドにする。
Dyla・それとレモネードを2つね。アラブのレモネードは格別よ!
そういって微笑んだ
わたし・
わたしはパレスチナが大好きなの。パレスチナ人の友達はいつもわたしに親切で、初めてこの国に来て本当に大好きだって実感したの。わたし個人でできることって限られてるけど、わたしができるパレスチナ支援って何かな?あなたたちは外国人のわたしに何をしてもらいたいと思ってるの?教えて欲しい。できることをしたいの。
わたしは意を決して聞いてみた。支援するという言葉がとてもおこがましく感じ、相手をどんな気持ちにするのか一抹の不安もあった。
Dyla・
そうね、知って欲しいの。パレスチナって国を。わたしたちがどんな暮らしをしているのか、どんな攻撃を受けているのか。イスラエルを批判する必要はないわ。あなたが見て感じたこと、それを発信して欲しい。わたしたちは決して今幸せではないのよ。基本的な権利がないの。自由に自分たちの国を移動することもできなくて。
わたし・そうね、興味を持つこと、知ること知ろうとすることが愛よね。どの宗教も愛を説いているのに。わたしはもっと知りたいし、伝えたい。わたしのフィルターを通してになるけど。みんなにパレスチナの今を知って欲しい。
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