地球温暖化で得する国?北極圏の国々、特にロシア!

地球温暖化により、海水面上昇が起こり、オランダなどの低地は壊滅的なダメージを受けるであろうことは、先に述べた。おそらく、東京やニューヨーク、上海など、港湾都市はロッテルダムほどではないにせよ、かなりのダメージを受ける。はっきりいって、地球温暖化で得する国はほとんどなく、ダメージを受ける国のほうが多い。ところが、数は少ないものの、地球温暖化で利益を得る国も存在するのだ。

察しはつくと思うが、北極圏に面する国々だ。ロシア、カナダ、アメリカ、デンマーク(グリーンランド)、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドだ。

特に、最も利益が大きいと思われるのはロシアだ。ロシアに属する北極海には、膨大な石油・天然ガスが眠っているとされる。今までは氷にとざされて採掘できなかったが、採掘できるようになる。他にも、北極海の航路や軍事基地のメリットが大きい。

ロシアは、ウラジオストクなどの港を持つが、韓国の釜山やシンガポール、上海、スエズ運河、パナマ運河などと比較すれば、その重要性は極めて低かった。ところが、北極海の氷が溶けると、北極海に面したロシアの陸地に新しい港ができるかもしれない。例えば、日本からヨーロッパへ船便で輸送する場合、北極海を経由しない場合は、マラッカ海峡やスエズ運河など、チョークポイントを2箇所も経由する上に、かなり時間がかかる。それを、大幅にショートカットできる。さらに、北極海に面した港ができれば、寄港地として、または温暖化して工場をつくれるようになったシベリアで製造した物資や採掘した資源などを、北極海の港から輸出できるかもしれないのだ。

軍事基地の話をすると、北極海に面した基地からのほうが、アメリカを攻撃するのは容易になる。普段見慣れた地図ではなく、北極海にフォーカスした地図を見てもらいたい。

北極海

普段見慣れた地図で見るより、北極海経由のほうが、ロシアとアメリカの距離は遥かに短いことがわかるだろう。戦闘機やミサイル基地を設置すれば、アメリカには脅威となる。

また、これはロシアだけの話ではないが、地球温暖化が進めば、今までは寒すぎて人が居住できなかった場所に住めるようになる。例えば、シベリアは、寒すぎて人口はものすごく少ない。農業にも不適だ。それが変わる可能性がある。カナダも、人口のほとんどは南部、アメリカとの国境付近に集中していたが、北部にも可住地が広がる可能性がある。アメリカのアラスカや、デンマークのグリーンランドも同じだ。

今は、ロシアはウクライナ戦争でNATOや日本から目の敵にされているが、北極海航路が便利になると、それを交渉カードにして経済的な交流が再開するかもしれない。長い航海においては、寄港地となる港がないと危険極まりないからだ。ロシアの北極海に面した港がその役割となるだろう。そうなれば、ロシアは経済成長するかもしれない。

基本的には、高度経済成長は、フロンティアで起こる。悲しい歴史ではあるが、日本は戦争で焼け野原になったがために、東京と大阪がもう一度フロンティアになったのだ。大正時代から続く建物がずっと残っていたら、近代的な高層ビルや首都高、鉄道網などの建設にはかなりの時間がかかっただろう。中国も、共産主義で長いこと技術革新から取り残されていた上に、膨大な人口があったからこそ、改革開放後に高度経済成長が実現した。

だが、ロシアが経済成長するのは、非常に危険である。少なくとも、プーチン大統領の存命中は、高度経済成長は起こらないでほしいものだ。もし、ロシアが経済大国になり、中国と組まれたら、アメリカや日本は非常に危険な立場に置かれるだろう。

なお、これから地球温暖化がどの程度進むのかは未知数であるため、本当に、ここまで書いたロシアの経済成長が起こるのかは不明である。

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