見出し画像

なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 41 おさらい②

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

プロジェクトマネジメントを機能させるために

前回同様、
これまでの考察を自問的な流れで整理します。

前回は、
プロジェクトマネジメントを機能させるには、

まずは、
QCDバランスの要となる
Q(スコープ)に関する 不確実性 をプロジェクト前半で排除し、
QCDバランスを確立すべきと考察しました。

では、
QCDバランス確立後、断続的に発生する
QCDバランスを脅かすものには、どう対応すればよいのでしょうか。

まずは、
QCDバランスを脅かすものを課題として摘出し、
対応期限はできるだけ早く(いわゆるASAP)として、対応します。

プロジェクトによっては、課題と似たような言葉に、
問題、タスク、TODO、アクションアイテム(AI)などがありますが、

ここでは、
課題を「QCDバランスを脅かすもの」とします。

プロジェクト前半で、
プロジェクトマネジメントが機能して、
要件(やりたいこと)、制約(できないこと)、
実現方式(要件と制約を、どうバランスして、どのように実現するか)を
決め切れていれば、

プロジェクト後半で発生する課題(QCDバランスを脅かすもの)は、
たいていの場合、ユーザ部門起点の要件変更の類になります。

余談ですが、
プロジェクト前半で、実現方式を決め切れていない場合、

同じ要件変更でも、
開発部門におけるあらたな制約(できないこと)による要件変更の類が
混ざってきます。(あまり望ましい状態ではありません)

ちなみに、
プロジェクトにおける課題数(*)は、
プロジェクトの調整負担などを勘案すると、10〜20程度が限界で、
20を超えてくるとプロジェクトが瓦解する可能性が高くなってきます。
(毎週の定例会議で、毎回20以上の課題と向き合うことを想像すると、
 ゾッとするのではないでしょうか)

補足:*
ここでの課題数は、オープンの課題数です。
課題が発生したら、できるだけ早期の解決をはかり、
オープンの課題数が10〜20程度に収まるようにします。

では、
そもそもQCDバランスを脅かすもの(課題)とはどのようなもので、
どのようにすれば摘出できるのでしょうか。

課題には、
実は、容易に摘出できるものと、できないものがあります。

容易に摘出できるものは、例えば、
進捗遅延や要件変更、仕様の詳細化を進めた際の認識相違などです。

これらの課題は、予定のタスクを進めていくと発生し、
だれもが想定外であることを認識できるため、摘出が容易な例ですが、

タスクが先送りされてしまい、
だれもが想定外であることを認識しにくいものがあります。

例えば、
結合テスト以降の役割分担や責任範囲、スケジュールなどの
調整準備の着手遅れです。

補足すると、
プロジェクト前半の横ぐし的な活動から、縦割り的な活動に移り、
再び横ぐし的な活動に移った後の活動の調整です。

縦割り組織の間には、
必ず不確実性(**)があるため、
本来であれば、できるだけ早く、着手されるべきですが、

結合テスト以降の準備工程は、
WBSにもないことが多く、何気なく先送りされがちです。

補足:**
結合テスト以降の
役割分担や責任範囲、スケジュールや不具合発生時の動き方などは、
部門をまたがると意外に想定外のことだらけです💦

これらは、
縦割り組織の脆弱性による、いわゆるポテンヒットのため、
調整部門の当事者による検知・摘出がなかなか難しい課題です。

当事者のプロアクティブなマインドセットに期待をしつつも、
PMやPMOによる目配せがないと、摘出が難しい課題です。

では、前述のような
課題を早期に摘出するには、どうすればよいのでしょうか。

それは、
WBSの全てのタスクを極力「できるだけ早く(ASAP)」で
実施するように配置することです。

期限に余裕のあるタスクは、むやみに後回しにしがちですが、
基本的には全てのタスクを「できるだけ早く」配置するようにすることで、
不確実性が早期に排除されます。

補足ですが、
全てのタスクを「できるだけ早く」配置すると、あたりまえですが、
リソース不足が発生します。

その場合、
リソース不足が発生しないように、タスクに先行関係を設定することで、
リソース不足を解決します。

ちなみに、
課題管理の際、特に重要なことは、
課題対応が滞らないよう、課題を一覧で、常に可視化し、
上位者の目に触れるようのすることです。

一覧で上位者の目に触れるようにすること(可視化)は、
課題推進にとても有効に機能します。

余談:タスク管理ツール
昨今のタスク管理ツール(JIRAやBackLogなど)の場合、
単純なタスク管理としては、機能しますが、

現時点では、まだいわゆる一覧表示機能が弱いこと、
マネージャーがJIRAやBacklogを使いこなせることが少ないことから、
課題管理としては、有効に機能しにくいので、注意が必要です。

このように、
課題管理を適切に運用することで、
プロジェクトマネジメントが機能し、QCDがバランスします。

次の記事(42回)


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?