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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 24 QCDバランス

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います。
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

プロジェクトマネジメントがなすべき2つのこと

本記事の第19回〜22回で、
QCDのQの全量性の確保、について

第23回では、
全量性の確保されたQとD(納期)をいかにバランスさせるか
について述べてきました。

実は、
QCDのQの全量性の確保、と
QCDのQとD(納期)をバランスさせた、後は、

プロジェクトマネジメントがなすべきことは次の2つに絞られます。

それは、
1.当初のQCDバランスに内在する不確実性の早期排除、と
2.途中で発生する課題(QCDバランスを脅かす不確実性)の早期排除、
です。

理屈上では、不確実性がなければ、
あらかじめ定めたタスク(TodoやAction Aitemなど)を
淡々とこなせばプロジェクトは完遂できるはずなので、

「当初」と「途中」の不確実性を早期に排除できれば、
 結果的に、プロジェクトは完遂できることになります。

1.当初のQCDバランスに内在する不確実性

当初のQCDバランスには、必ず不確実性が存在します。

例えば、
・要件を検討する体制の一部が決まっていない。
・技術的な実現性が確認されていない部分がある。
・そもそも、最終的な意思決定者が曖昧。
などです。

こうした不確実性に対して、
当初のQCDバランスは想定をおいて、
いったんバランスがとれたことにします。

そして、
そこで置いた想定を、よくもわるくも確定させるため、

プロジェクトマネジメントでは、
リスクの顕在化タイミングを意図的に前倒しできるように
工程やタスクの順番を配置したWBSを作成します。

できれば、リソースや時間に余裕のある
プロジェクトの半ばくらいまで(設計工程の前半あたりまで)には、
主だった大きなリスクは顕在化させ、不確実性が排除できていることが
望ましいです。(第2回、第3回の記事ご参照)

2.途中で発生する課題の早期排除

一方、
プロジェクトがはじまるとQCDバランスを脅かすもの、
当初にはなかった課題(もしくは問題)が必ず発生します。

プロジェクトマネジメントでは、
それらを課題一覧として管理し、それぞれできるだけ早期に
解決できるよう対応します。

それぞれのチーム内で解決できるものはチーム内の課題一覧で、
チームをまたがるものはプロジェクト全体の課題一覧で管理します。

課題が解決されてクローズできると、
QCDは元通りにバランスすることになります。

この際、
プロジェクトで同時に対応できる課題には限界があるため、

課題が多すぎてプロジェクトが瓦解しないよう、発生した課題は、
できるだけ早期の解決をはかり、課題数を少なく保つことが必要です。

課題の摘出

なお、
課題、すなわちQCDバランスを脅かすものは、
リーダーや担当者からは出てきにくいため、PM、PMOが積極的に、
ひろう必要があります。

なぜリーダーや担当者から出てきにくいのでしょうか。

それは、
課題一覧に掲載されてしまうと、課題解決状況に対するフォローが
始まってしまうためです。

課題対応は、
担当者にとって、やることが多いところに加えての対応が必要になるため、
担当者はうすうす気づいていても、自分からあげることは難しくなります。

特に、
チームや部門をまたがる課題は、よりいっそう上がってこなくなります。

なぜでしょうか。
チームや部門にまたがる課題は、たいていの場合、
双方の調整事項が整合していない場合がありますが、
どちらが課題をあげるべきか曖昧なため、放置された状態になりがちです。

補足すると、調整事は、
相対する部門の責任(もしくは自分達だけの責任ではない)との理由から、
自チーム、自部門として、自分の範囲はキチンとやれていると、
無意識に思い込んでしまい、課題として認識できなくなってしまう。

いわゆる、ポテンヒットです。

そのため、
疎ましがられ、嫌われる可能性はありますが、
プロジェクトマネジメントを機能させるために、
ここでもPM、PMOが積極的に課題をひろっていく必要があります。

次の記事(25回)


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