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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 25 3つの曖昧さ

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

形式知化されなかった暗黙知

本記事の第24回まで、
プロジェクトマネジメントが機能しない理由を考察して参りました。

結果、
プロジェクトマネジメントが機能しない理由は、主に次の3つとなります。
(それぞれの具体的な内容については、各回をご参照ください)

・不確実性の早期排除が目的として意識されていないこと。
・本来はスコープとして扱うべきQが品質のまま扱われていること。
・不確実性を早期排除するためのWBSの作り方が理解されていないこと。

実は、これらは
プロジェクトマネジメントに関する3つの曖昧さが原因です。

1.プロジェクトマネジメントの目的が曖昧で手段の指針にならなかった。
2.QCDバランスの起点となるQが品質という曖昧なもののままだった。
3.WBSの作成におけるスケジューリングの考え方が曖昧なままだった。

これらの曖昧さ、
すなわち、暗黙知が形式知化されずじまいのまま、曖昧なまま、
プロジェクトマネジメントの説明が展開されているため、

プロジェクトマネジメントを
正しく理解できず、正しく機能させられていないのです。

本記事では、
これらの暗黙知のまま曖昧だった部分について、
言語化して、形式化することにチャレンジして参りました。

本記事の投稿を通して、
おかげさまで、いくつか新たな気づきもあり、
自分の頭の中もだいぶ整理されてきました。ありがとうございます。

なぜ暗黙知が形式知化できないのか

少し余談ですが、
では、なぜ暗黙知は形式知化することが難しいのでしょうか。

(個人的な見解ですが、)
 それは、暗黙知は無意識の中にあって、
 それを意識下に引き出してくることができないためです。

例えば、
普段、私たちは自動車を無意識で運転してますが、
教習所の教官でもない私たちが、ひとつひとつの動作を
言語化して説明することは、意外と難しいのではないでしょうか。

しかしながら、
運転もはじめは教習所の教官から言葉で説明を受けたはずです。
意識下にあった知識が、いつのまにか無意識にできるようになり、
意識下の外側(無意識の方)に行ってしまっています。

なぜ、
こうした、意識下から無意識下への知識の移動 が起こるのでしょうか。

それは、
意識下に置いておける(保持できる)情報の量に限界があるからです。

具体的には、
私たちが同時に意識できることは3〜5つ程度ではないでしょうか。

そのため、
新たに学ぶことは、
意識的にそれを幾度も繰り返すことで、
無意識下に移動させ、意識せずに自動的にできるようにします。

結果的に、
意識下の領域を空けることで、
また新しいことを保持できる(学べる)ようになります。

自動車の運転も同様に、
前述のようなメカニズムで無意識に運転できるようになり、
運転中にお話や、何なら食べながらでも運転できるようになります。

いわゆるベテランが
複雑な知識を同時に扱うような高度な技ができるのは、
こうした仕組みによるものです。

それゆえ、
暗黙知を形式知にするには、無意識下に移動した知識を
少なくとも、もう一度意識下に持ってくる必要があります。
(意外なことに、これがなかなか難しいのです💦)

ではどうすれば、
もう一度意識下に持ってくることができるでしょうか。

それは、初心者の素朴な疑問です。

例えば
・なぜそれをやっているのですか。
・辻褄の合わない部分がありますが、ここはどういう意味ですか。
・具体的にはどのような観点でやっているのですか。
などの素朴な疑問です。

実は、ベテランは、
初心者に問われてもすぐには答えられないことも多いです。
それは、無意識下にあるものを意識下に持ってこれていないためです。

冒頭の
プロジェクトマネジメントの曖昧さ(暗黙知)に対しては、
次のような素朴な疑問が有効です。

・スコープを決めることが重要との説明ですが、
 QCDの中にスコープがないのはなぜでしょうか。

・WBS作成時、プロジェクトマネジメントの目的である
 QCDをバランスさせるにはどのような観点で作成すればよいですか。

みなさまは、こうした疑問をお持ちでしたでしょうか。
そして、それは解決されていましたでしょうか。

余談:形式知の功罪のうちの罪の方
暗黙知が形式知化され、さらにその形式知が権威を持ち始めると、
私たちは思考停止してしまい、その形式知に対する素朴な疑問を
持ちにくくなってしまいます(^_^;)…

次の記事(26回)


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