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加賀紫水の編集していた『土の香』第15巻はどこまで発行されたか?

 加賀紫水の発行していた雑誌『土の香』は各巻が5、6冊で構成されているが、調べてみると第15巻は3冊しか出ていなかったことが分かった。私が調べることのできた第15巻第2号が通巻85号、第16号第1号が通巻87号であるため、第15巻は3冊しか発行されなかったようである。しかしながら、怪しい点があり、第15巻第3号(通巻86号)は本当に発行されたのかという疑問がある。私が調べた範囲では、この号の存在は確認できなかった。第15巻第3号が存在するか否かのそれぞれの理由は以下のようになっている。

<存在すると言える理由>
①編集者の加賀紫水が号数を付けている。

②第18巻第2号の「「土の香」の足跡」で加賀が第15巻を3冊あると述べている。

<存在しないと言える理由>
①第18巻第2号の橘正一「「土の香」所載方言資料目録」で第15巻は2冊しか出版されていないと述べられている。

②第15巻が発行されていた時期の『土の香』には毎号方言に関する文章が投稿されているが、この方言資料目録に第15巻第3号が載っていない。

③第15巻第2号(発行日:1935年6月1日)と第16巻第1号(発行日:1935年7月1日)の発行日が6月、7月と連続しているので月刊の『土の香』では、両者の間にもう1冊発行するのは難しい。

④同時期に発行された趣味叢書の河本正義『諸国風俗問状越後国長岡領答書』(発行日:1935年6月15日)、田中正行『熊本県に於ける動植物方言分布』(発行日:1935年6月20日)にも第15巻第3号が割り当てられていない。

⑤田中正行『熊本県に於ける動植物方言分布』には『土の香』の広告が載っているが、第16巻第1号の広告である。

存在すると言える理由は『土の香』の発行者であった加賀の証言のみであるが、存在しないと言える理由は加賀以外の証言や雑誌の記述がもとになっているので、後者の方が理由として強いだろう。そのため、私は第15巻第3号は発行されなかった可能性が高いのではないかと考えている。

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