『広益体 妖怪普及史』(勉誠社)に橘正一の『化け物研究』あらため『民間信仰』が登場
先日、『広益体 妖怪普及史』(勉誠社)をご恵贈いただいた。本書は以下の記事で言及したことのある伊藤慎吾・氷厘亭氷泉編『列伝体 妖怪学前史』(勉誠出版、2021年)の続編である。
『妖怪学前史』では研究者や作家など妖怪を研究していた人物を中心に論じられているが、『妖怪普及史』では妖怪の受容、その語られ方の変遷が論じられている。勉誠社のウェブページに目次が載っているのでリンク先を貼っておきたい。
この中で民俗学史や好古家の系譜に関心のある私として気になっている論考を以下に記載したい。
集古会系同好会の記録―趣味人たちの妖怪普及ネットワーク 毛利恵太
井之口章次―柳田・折口の学問を推進し後学を育てた 永島大輝
南島の妖怪偉人たち―地方における妖怪普及史の一例 御田鍬
妖怪普及者ハーン―訪日者たちが見たストレンジ・シングス 毛利恵太
妖怪事典編纂履歴―舟を編み上げた人々 毛利恵太
この他にもタイトルで興味をそそられる論考が多いので、関心のある方はぜひ目次を見て欲しい。
ところで、この本の永島大輝「総論 研究者が妖怪を普及させた ザシキワラシ普及史」には、
橘正一が発行した雑誌『化け物研究』-最終的には『民間信仰』と雑誌名を変更して発行ーが資料として活用されている。この雑誌は以下の記事で言及して「方言・民俗研究者・橘正一の発行していた『化け物研究』あらため『民間信仰』について」(『草の根研究会会誌』第1号、2023年)で紹介しているが、永島様の論考に私の資料紹介を引用いただいた。
永島様によれば、『民間信仰』で紹介されているザシキワラシは今日流通しているイメージとは異なる事例であるという。私も同じ橘の文章を読んだが、このようなに歴史的に位置付けられるとは考えていなかった。私の紹介がきっかけで資料の認知度が広まって私には考えられなかった視点で論じられるのは、紹介した私としては非常に光栄なことだ。
(敬称略)