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郷土玩具蒐集家・梅林新市が作成した郷土玩具雑誌目録

 先日、以下の記事で郷土玩具蒐集家・研究者であった梅林新市という人物のことを紹介した。梅林は郷土玩具や九州の方言だけでなく、郷土玩具関連の雑誌も蒐集していたようだ。在野研究者必携の『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』(トム・リバーフィールドさん編集, 2019年)(注1)によると、梅林は『日本蒐書家名簿』(日本古書通信社, 1938年)に載っており、蒐集分野のひとつが玩具関係本となっている。

梅林は、昭和前期に発行された郷土玩具関連の雑誌の紹介を『書物展望』7巻11号(書物展望社, 1937年)に「昭和時代玩具誌盛衰記」として投稿している。この文章は、当時発行されていた郷土玩具関連の雑誌の目録としても有用だと思われるので、紹介されている雑誌を以下に引用してみたい。

人形の家 1926年5月~1927年4月 3号 田中緑紅編 京都 「鳩笛」の続編

富士乃屋草紙 板龍齋(板祐生か?)編 鳥取

人形筆 1929年まで 2号 『人魚』の続刊

面茶 1929年9月~1932年1月 4号 大阪 芳本倉太郎、太田小實、梅谷紫翠、川崎巨泉

でこでこ通信 1929年1月~1932年6月 15、6号山内神斧「世界のおもちゃ画集」、武井武雄「名玩画集」の付録

古茂里 1930年5月~1931年11月 6号 伊藤藤兵衛刊行

片言 第一期 1931年4月~1932年2月 6号 東京 加藤武刊行

第二期 1932年4月~9月 表紙は下村作次郎

風車 第一期 1931年9月~1932年6月 7号 名古屋 大供玩具研究会の機関誌、「相合傘」の続巻

第二期 1932年9月~1934年7月 3号

木形子研究 1932年4月~1933年8月 12号 木形子洞、橘文策

郷土秘玩 1932年4月~9月 5号 有坂與太郎、松下正影編

郷土玩具 1933年1月~1934年 29号 有坂與太郎編、創元社発行

泥人 小倉圓平編

うつし絵 1933年4月~8月 2号 東京 加藤滋の売品目録中心

髷髪歓賞 1933年7月~1935年1月 6冊 鳥取 板祐生編

木形子異報 1933年12月~1936年7月 12号 橘文策(梅林の文章は六策となっている。)編 「木形子研究」の続刊

草紙 1934年4月から 5号 古茂里の続巻

犬張子 1934年7月~1936年7月 24号 祖父江梧棲中心の土俗玩具研究会の機関誌

気儘絵本 5冊 鈴木常雄編

紀州郷土玩具 1935年1月 5号 安藤直路

東玩 1935年2月~12月 8号 「片言」の続巻。加藤武と中心とした東玩会の機関誌

鈴守 1935年3月~1936年2月 12号 伊勢山田(三重) 慶谷俊雄編

玩具談叢 1935年4月 5、6冊 香川 加藤増夫編 続巻は「玩具往来」(後に「鳩笛」と改題)

牛鬼 1935年5月~8月 4冊 愛媛 山本萬雄

土偶 1935年6月 11号 朝鮮

海豚笛 1935年7月 1号 河村幸次郎編 下関郷土玩具研究会

くぐつ 1935年6月 1号 兵庫 松本丙午棲編

土天神 1935年10月 22号 東京 金井虹二編

人形人 1935年12月~1937年12月 10数冊 有坂與太郎編 「郷土玩具」の次の雑誌

虎斑 1936年2月 1号 加藤武編 東玩の続刊

愛玩人 1936年3月 2号 板祐生

べにうし 1936年7月 3号 福岡 原田種夫編

玩具句録 1937年1月 6号 松下正影編 6号より影絵と改題

これくしよん 1937年4月 6号 山内神斧編

天神さま 1937年1月 1号(続刊) 神奈川(横浜) 吉田一太郎編

日本郷土玩具協会誌 1937年8月 2号まで 有坂與太郎が「人形人」を捨てて出版した。

東玩 1937年9月 1号 「日本郷土玩具協会誌」に対応する形で創刊

以下は雑誌の付録になっていたものだとしている。

和漢礫 1930年4月 1号 名古屋

人形 1935年1月 3号 東京

土俗伝説 1935年11月 1号 東京

飛んだり 1936年19月 1号 東京

協会だより 1936年12月 2号 東京

梅林自身は以下の雑誌を発行していた。

土の色 12冊 3号が土俗玩具号

土人形 1932年6月~1933年7月 7冊

雉子馬 12号

玩具新報 40号

雀の本 2号

以上を補足する形で『書物展望』8巻3号(1938年)に「昭和時代玩具盛衰記(補遺)」が掲載された。「昭和時代玩具誌盛衰記」の掲載後に各地から様々な反響があり、教えを受けたという。紹介されているのは以下になる。なお、郷土玩具を主としていない雑誌は除外した。

協和 満鉄社員会発行 毎号郷土玩具の記事が掲載されている。

明朗 1937年3月創刊 満州 毎号表紙が満州の郷土玩具

木形子通信 6号

木形子展望 1937年6月創刊 橘文策主催の木形子研究会の新機関誌

蔵書票玩具集 約5巻 大阪 中田一男

鯛車 1938年1月 1号 「日本郷土玩具協会誌」を改題したもの

以上に梅林の紹介している郷土玩具関連の雑誌を列記してみた。私が知らないだけかもしれないが、聞いたことがない雑誌が多い。いくつかは持っているので機会があれば紹介していきたい。

 このような様々な雑誌の出版や交換を通じて各地の郷土玩具蒐集家は交流を行い、様々なネットワークを形成したと考えられる。雑誌はこのネットワークの検討に重要であろうが、上記の雑誌は現在どれくらい残っているのだろうか。

(注1)この本の凄さに関しては、興味がある方は以下の記事を参照いただきたい。



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