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商品を売るのではない、「夢」を売るのだ

かつてスポーツクラブの経営をされていて、ずっと懇意にしていただいている方からの電話。かなりご無沙汰続きで申し訳ないなと思いながら行動できずにいた自分を悔いました。いつものとおり元気いっぱいの高い声で、近況報告かねて私の状況も気にかけてくれました。

彼の強みはネットワーク。相談すると必ず誰かを繋いでくれます。そしてそれが一定の成果につながるからいつも驚かされます。見返りは一切期待しないのが彼のスタンス。お金ではなく彼自体の「ブランド」を稼いでいると語っていました。人を繋ぐこと。その時点ではお金は発生しないけど「未来」を稼ぐ。身近に、もしくは地方などの遠方にも仲間を作ることが、この先彼がやろうとしていることに対して重要な役割を担うと信じています。

「金」という軸だけで考えてしまっては多様で厚みのある経験は積めません。お金以外の何を稼ぐか、そのポートフォリオを組むことが大事。モノがあふれる現代において、私たちはモノを選ぶことに疲れています。自分が信頼する人のおすすめを選ぶことで、あふれる情報の波をかいくぐる。至るところに信頼のタネを撒くことが、未来を切り開くアセットになります。

この人の生き方が好き。発言に惹かれる。夢に共感できる。人が紡ぎ出す物語を売る。商品やサービスは、あっという間に模倣されて価格競争の波に飲まれてしまいます。商品やサービス単体を必死に売ることで経営が成り立ったのは一昔前の話。誰もやっていないことに挑戦して、誰もしていない経験をして、誰もなし得ていない実績を作るからこそ差別化がはかれます。商品やサービスの背後にある物語。あなたは何者で、何がやりたくて、今何をしているのかを問われて即座によどみなく語り尽くせる人にフォロワーが増えていきます。

この指とまれ。

華やかで理想的な世界を語り、狼煙をあげて、面舵いっぱい、「あっちに行けば最高に素敵な世界が待っている」と叫ぶ。すると、船を作れる人、コンパス職人、料理人、エンターテイナーが集まってきて、海図を広げて目的地を確認、目的地に到達するためのアイデアを出し合って航海が始まります。風呂敷を広げた後はフォロワーに任せる。周りをワクワク、ドキドキさせて動かすためには、夢を大きく、荒唐無稽な目標を語る方がいい。

夢を見せられる言葉、言語化能力と実行力。この人についていきたい、このプロジェクトに参加したい。あたかも宗教のように、信者が教祖を盲信するかのように。そして本人が一番楽しそうに、夢を語ってバカなことばかりしている。

人の価値観は多様に。だからこそ私たちは孤独になりました。「大きな物語」がなくなって、夢を語る場所も少なくなって、人と人との間に分断が生じる現代社会。一方でSNSを通して「夢」を共有しやすい場所が、若者の間で広がってきました。物理的な距離間、性別や人種、思想や文化を超えてつながることだってできます。だからこそ「夢」が大事。大きな夢は、人々を繋ぐ物語となって、離れ離れになった私たちをコミュニティに閉じ込めてくれます。

冒頭に挙げた私のメンター。彼はまさしく、ここに書いたことを地でいくような人間です。バカみたいに夢を語り尽くす彼の生き方は、私の人生に大きな影響を与えました。独立したのも彼のせい(笑)彼からは守破離の「守」を教えてもらいました。ここからは教えを「破」り、「離」れるとき。居心地がいい、コンフォートゾーンを抜け出して挑戦していきたいと思います。

久保大輔




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