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日本の企業に必要なのはインプットを肯定・奨励する風土と「面白がり力」だと気付いた話

皆さん、ヤフーアカデミアって聞かれたことあります?
日本を代表するIT企業の一つであるヤフーがつくった企業内大学であり人材開発部門なのですが、ここでは「参加者が自らの内面に向き合って情熱に火をつける」ような独特の人アプローチで合宿研修を行なってたりします。

以前、このヤフーアカデミアの合宿でお話しさせていただいたことがあるのですが、その際のお題は「僕の半生での気づきや学び、公務員からの起業というキャリアチェンジにあたっての心の動き」などを語ってほしいというものでした。
そういうテーマだったので、資料作成のために公務員時代も含めて自分の仕事を総ざらいして振り返ったわけですが、そこで「なんで大きな組織は時代の変化に鈍感で新しいことができないのか」…その理由の一つを思いついたので、仮説も交えながら書いてみます(ヤフーアカデミアはこうして講師役の人にも多くの学びをくれる素晴らしい仕組みだと思います)。

1. 仕事はインプット系とアウトプット系に大別される

僕は、仕事ってのはおおむね二系統に大別されると思ってます。
一つ目は情報を取り込むインプットサイドの仕事であり、もう一つはインプットを元に処理をして何かを生むアウトプットサイドの仕事。
インプットサイドの仕事は、実はとてもクリエイティビティを必要とするものです。

新聞とかニュースに出てくる情報ってのはいわば完成された料理であり食材ではない。仕事としてのインプットってのは食材を探してくることなので、どうやって鮮度が高く味が濃く他の人が知らないような食材を獲得するかということに要諦があります。

2. 鮮度高く価値あるインプットを得るために

そしてそういう優れた食材-活きた情報を得るためにはどうしても人と人とのつながりに頼ることになる。
どうやって優れた情報を持つ人と知り合い、仲良くなり、活きた繋がりを作って信頼を得るかという対人スキルがなければ優れた情報を得ることはかなわない。
また、そのためには自身も優れた情報を提供できるか、少なくとも損得勘定抜きに誠実に相手と対応できる能力が求められます。

3. インプットにおける「面白がり力」の重要性

それにプラスして、当人がどんな分野に興味を持っているかというキュレーション能力も大事ですし、新しい情報に目を輝かせながら楽しんで情報を集めることができる「面白がり力」のような心理的スキルも大事です。

「面白がり力」が高い人は楽しそうに仕事をするので、なんとなく遊んでいるようにみられてしまい、組織内では損することが多いのですが、社外に出ると、未来を拓きそうなトピックを敏感に察知し、そこに周りの人をひきつけて巻き込み、さらには人と人を結び付ける接着剤の役割まで果たします。

面白がり力は人をひきつける重力のような役割も果たし、そのまわりには自然と人が集まってくるのでインプットの量も増えていきますし、一次情報が増えるので自然とインプットの質も高まっていきます。

4. 官僚的組織におけるアウトプット偏重の人材育成

アウトプットサイドのスキルには創造的な能力と事務処理的な能力の両方が含まれるけど、そのうちの創造的な能力が発揮できるかどうかはインプットの内容にも大きく左右されます。
そのため、アウトプットの仕事=お役所仕事的事務処理にとどまってる方が多いんじゃないかと思います。
たとえて言うなら、おいしい食材でないとおいしい料理は作れないし、料理の作り方も学べないということです。

役所に勤めていると、若手の頃は極端にインプットが制限された状態でアウトプットの鍛錬だけをしこたまやらされるんですよ。
そうなるとインプットサイドの能力がうまく育たず、創造的な仕事ってのができなくなる。さっきの例えでいうとありきたりの料理しか作れなくなる。

組織の中で、係長、課長、部長と職階が上がっていけば本人が努力せずともインプットされる情報の質は自動的に上がっていく。でも創造的ではない前例主義のコンサバなアウトプットしか出したことがない人ばっかりなので、インプットの質の向上が活かされずアウトプットの質が向上しない。それどころか、たまに新しいことをやろうとしている人がいたとしてもそういう人たちが全部つぶしにかかったりもする
ジャンクフードばっかりで育った人間は本当に美味しい料理の味がわからないから、新鮮な食材をもとにおいしいもの作ろうって努力してる料理人の卵にも無理解だってこと(あ、これは例えであって本当は僕、ポテチとかファストフードとか嫌いじゃないです)。

そして、独立してから思うのは、こういう話ってのは役所だけでなく日本の会社の多くにも当てはまるってことです。
多くの企業では情報の漏洩やら引き抜き・転職を恐れて社員が外部とのつながりを持つことに消極的です。そうしたインプットの少ない環境で事務処理的なアウトプット仕事ばっかりさせている。その結果、クリエイティビティがない過剰管理主義の中間層が量産されて若手をインプットからさらに遠ざける…という悪循環になる。その結果、日本で新しいものが生まれる芽がどんどん摘まれている…という状況になってる。

5. インプットの能力を鍛える場としての共創スペース

そんな状況を変えたいならどうすればいいか…そのためにはまずは若手のインプット能力を鍛えることが大事だと思います。

最近では、色々な会社が共創スペースって作ってるけど、持ち主がその使い道をイマイチわかってないケースが多い気がします。
せっかく多額の予算を使って場所を作りながら、単に既存の取引先とのおしゃれな打合せスペースとしてしか使ってないパターンもよく見ます。

そんな使い方ではなく、クリエイティブな能力のある社員育成のためにどう活用するか、社外の人材との繋がりをどう作るか、そしてそこからインプットをどう得ていくのか、そういうことが学べるような場所にしていくべきだと思います。今、クリエイティブを学ぶ研修ってアウトプットのためのメソッド(だいたいのブレスト派生的なものはすべてアウトプットのメソッドです)は学べてもインプットについて学ぶ場はないですから。

6. 人事評価制度のアップデートの必要性

また、人事評価制度もアップデートされるべきだと思います。
ほとんどの企業ではリスクを負って新しいことにチャレンジするよりもなにもしない方が有利な人事評価システムになってます。それではだれも新しいことをやろうとはしないし、そのためのインプットをする努力にもコストをかけない。
しかも人事評価は「会社として必要な人材はどういう人間か、わが社はどんな会社なのか」というメッセージでもあります。
だから、何も新しいことをしようとしない人間だけの組織が出来上がっていくんだけど、一番上層階まで上り詰めた社長クラスの方には最強の情報がインプットされるので気が付くわけですよ。
「新しいことやらないと怖いな」と。

で、社長が「新しいことをやらなくちゃだめだ、イノベーションが必要だ」と叫んだとしても分厚い中間層に阻まれて若手のインプットが増やされることはない…残念なことに。 

なので、本当は人事評価システムの中に、インプットの部分を評価する仕組みを実装するべきだと思うのです。
インプットのプロセスを分解してそれぞれのフェイズを評価するようなことができればいいんじゃないかなと思います。
何もわかってない上司の主観が入らないようにすることも重要。KPIをうまく設定して、インプットの大事さを理解し、「おもしろがり力」なんかも自然に身に着けられるような仕組みを作りたい。
アウトプットのトレーニングやメソッドってすでに体系化されたものがあるんですがインプット(対人間での信頼に基づく鮮度の高い情報の入手)の方は体系化されたものがない。

それは活きたインプットのスキルを分解すると、好奇心の持ち方とか人との接し方などの言語化しにくい複数の領域が重なり合って体系化しにくいからだと思います。僕はここの言語化と指標化・体系化に取り組みたいと思っています。

7.おもしろがり力の強い人を育てることの意義

たぶんシリコンバレーが特別なのは設備がどうとかとかお金が集まってるとかじゃなくて、情報の「面白がり力」の強い人が極端に多い場所だからだと思うんですよ(行ったことないけど)。
日本にシリコンバレーを作るって話をたまに聞きますが、そういう話では設備投資ばっかりにお金を使ってます。そしてその額の大きさをドヤ顔でアピールするけど、それって選挙対策やんってやつばっかり(行政が施設を創るのは大体が政治家からの圧力です)。
僕は、そんなんには全然意味がなくて、本当の価値は人の育て方にあると思うんです。
設備じゃなくて人の問題。

仏教の講話かなんかの有名なやつで、地獄も天国も設備としては同じだって話があるじゃないですか。
地獄でも天国でも大きな鍋の周りを死者がぐるりと囲んで長い箸を持たされている。地獄だとみんな身勝手なので自分の箸で自分が食べようとするだけ。なのでうまく食べられずにやけどするばかり。
一方で天国だと長い箸をうまく使ってお互いに食べさせあうのでやけどもせずおなかも満ち足りてみんなハッピーだと。
あれと同じで、実はシリコンバレーも日本も設備とかの差は実は全然大した問題じゃなくて、そこにいる人の心持の問題だと思うんですよ。クリエイティビティってのはそこにいる人(の考え方や物事の捉え方)次第で全然変わってくると思うんです。
日本の大組織でもインプットを制限して自前主義でなんとかするような「地獄」的な発想ではなく、ほかの人に自分の箸で食べさせることによって天国を自ら生み出していくような発想をもてばいいのにね…と思ったという話でした。

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