性の生しぼり|『全部を賭けない恋がはじまれば』を読んで
高円寺、池袋、渋谷、五反田、東京に上京してきた「私」とは生活圏が近いようで、駅前の雰囲気がありありと目に浮かんでくる。「もしかしてあそこか?」なんて考えながら、物語に出てくる街のホテル街を思い出す。読み終わる頃には、この物語が小説であることをすっかり忘れてしまっていた。そう感じさせるくらい、どこにでもある特別な物語の数々が綴られている。
「忘年会」の話が特に好きだった。登場人物が全員若くて、勢いがあってめっちゃバカだ。品も無ければ、金も無い男女の浮ついた集まり。こういう所で