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いま1番こわいもの

「結婚」という言葉にナイーブになっている。

悪友のイムハタが結婚するんだそうだ。サークルのOBライブのMC中に発表しやがった。ちょっとカッコイイじゃんかよ。

彼は私の2つ上のバンドサークルの先輩で、もう何度も何度も、飽きるほど杯を乾かしている友達だ。鳥貴族で朝まで緑ハイを飲んだり、はしご酒後のカラオケで朝まで爆睡したり、深夜の赤羽をさまよったり、泥酔いした私を介抱してくれたりと、イムハタとは酒の思い出が嫌という程ある。

友達が多い陽キャタイプで、飲み会が大好き。ただし酒は強くない。酒が好きなのではなく、盛り上がる場が好きなのだ、あいつは。

彼の妻もサークルの先輩だ。大学時代から付き合い始めた2人は、同棲を経て夫婦になった。

あぁ、あっち側の世界に行ってしまったんだな。

20代半ば、知り合いが続々と結婚しているし、交際中の男女は少なからず今の相手との次のステージを意識していると思う。

愛する人と結ばれる、助け合って生活していく。甘美な響きはあるけれど、他人と多くの時間を共有することで生じる副作用が、私は怖い。

それは、私の両親の姿から影響を受けているのかもしれない。もしくは、今が充実しているからなのかも。チャランポランな私には「人生の墓場」だとか「自由を縛る鎖」だとか、負の側面ばかりが際立って見えてきてしまう。

1度経験しないとどうなるかわからないという点で、「結婚」と「死」を同じ箱に入れて蓋をしている。だから、結婚の話題を振られるとグエッとなってしまうし、友人の結婚も心の底からは喜べなかった。

これはあくまで個人的な妄想でしかなく、結婚している方々を否定している訳ではないことをどうかわかってほしい。当たり前のように社会に飲み込まれ、個人がドロドロに溶かされていく恐怖にまだ耐えられる自信がないのだ。

※イムハタくんの名前は仮名です。どうぞ、末永くお幸せに。