安心感と斬新感が溢れるKurasuのリズム
取材の日から、ちょうど1ヶ月が経ちました。秋に深まって、涼しく感じながらも、論文の締切に追いかけられ、めちゃくちゃに汗をかけた日々でした。その中、Kurasuのコーヒーを手に、大槻さんとの会話を何度も聞き返しながら、メモしたり、笑ったり、海外にいるコーヒー仲間のことを思い出したりした時間は本当に宝物でした。
自分がMelbourneでコーヒーに癒されたのと共通しているからでしょうが、Sydneyにいた時期からKurasuの発想を始めた大槻さんに自然に親近感を持っていました。また、スペシャリティコーヒーのみではなく、それを中心に日本のデザイン、ライフスタイル、カルチャーをモダンな形で海外向けの発信に励んでいるKurasuが、まさに憧れのタイプで、好感度が先入してしまったかも知れません。これも含めて、落ち着いてから勉強ノートをまとめてみました。
安心感・斬新感
日本語が分かるので、Kurasuという名前を口にすると、和の雰囲気が伝わってくる、京都らしいやね〜って第一印象でした。それがホームページを開いて読んでみると、海外のお客さんも視野に入れるインターナショナルブランドの勢いに尊敬する気持ちに一瞬変わりました。
その後、Kurasuのコーヒーをオンラインで買うことにして、海外の消費者として一通り体験してみました。それから、今日もう一度頭の中で整理してみたら、安心感と斬新感という二つの「芯」が、今覚えているKurasuの魅力にもっともぴったりな言葉だと思いつきました。本当は僕たちにとっては、人生の暮らすにも安心感と斬新感を常に手に入れようとしているのではないでしょうか。その贅沢感はKurasuにうまく作り上げられています。
普通に工夫 日本でフランス語やイタリヤ語など外来語で名つけたブランド名をよく見かける一方で、欧米、特にライフスタイルやデザイン性を強調するブランドに新しい(時に読み辛い)単語があったりしますね。ブランド名が迷わせるほどお洒落な今、ECよりスタートしたKurasuはわりとシンプルな名前です。全然インターネットっぽくはありません。それに日本語の知らない方にもやや読みやすいです。意味も生活そのもの、誰にでも身に近い、手で届く普通なことで、この普通がいいですね。分かりやすいので距離が一気に縮まってくるのが安心させます。好きなブランドの名前を思い出すと、確かにシンプルなのが一番印象深いです。Apple, Penguin, Dyson, Hay, MINI…愛読しているコーヒー雜誌もStandart。
海外にいたから、欧米の好みに偏ったりしてもいなければ、日本の職人文化を伝えたいからわざと伝統的な表現を使ったりもしていない、和の空気感も洋の透明感もKurasu一つの単語で演出しています。このバランスが良く取れているイメージ作り、生活というuniversalのコンセプトからの提案は、ブランドとビジネスの原点に広く受け入れる、成長していく可能性が十分に与えられました。デザイン思考で言えば、ビジネスのdesireability:消費者に求められる;とflexibility:変化に適応できる柔軟性があれば、永続性:sustainabilityにも繋がるとのことですね。ここは大槻さんのビジョンにもっとも感心しています。
Storytellingに工夫 新しいブランドに興味があれば、まずはInstagramやGoogleで検索し、ホームページで「About us / Our story」を先に読むのが自分のくせです。Kurasuのストーリーは大槻さんの口から語ってくれるように親切に書かれています。まるで彼自身のブログを読んでいるようです。会社の口調から書かれるブランドステートメント・戦略宣言みたいのが掲載される場合は多い中、彼の親切なstorytellingはまた、安心させました。
生活を充実させたり、品質を高めるライフスタイル系の買い物が、ECか店内か場所と関係なく、実は人と出会うことだと思います。この人が焼いたコーヒー豆が飲みたい、あの人が作った服を着てみたい、物、商品という媒体・メディアを通して、作り手、提案してくれるデザイナーと繋がっていく、感覚を共用できるのは最高な買物だと思います。
コーヒーをウェブでオーダーしてから間も無く、大槻さんから手書きの手紙のようなメールが届いてきました。インタネットやテクノロジーに頼り切った毎日は、不安も一層増えているのも事実です。そこに人間しかできない暖かさ、Temperature of human touchがライフスタイルブランド・ビジネスに大事ですね。ウェブのコンテンツから、ニュースレター、また、日本全国に渡るコーヒーロースターを紹介する動画、本など、商品のデザイン、パーケージの包み方まで、Human-centred designの工夫がKurasuに輝いています。
良かったらそのStoryをぜひ原文で読んでみてください!
再現に工夫 大槻さんによるとKurasuがお客さんが自宅でも再現できるコーヒーや器具などに工夫しています。Kurasuのコーヒーを自分で淹れて、リビングで飲んでいると、Kurasuと自分の暮らしが重なっている景色にキュンとしました。
もともと普段手で触れる商品の良さをインタネットで再現することからKurasuが始まりました;そこから、日本のスペシャリティコーヒーの美学を世界中のお客さんの日々に再現できるように専念するようになりました;また京都という唯一無二のベースにお店を出してから、京都なりのおもてなしを日本及び海外のお客さんまで再現しています;日本全国の豊かなコーヒー文化、ロースターの姿をまたコンテンツに再現し、積極的に発信しています。「再現」はだんだんKurasuのビジネスインセンスのように見えてきます。
技術の発展により、物理的な距離を超えて、商品、サービスをお客さんに届くことはもう当然のことです。ECでの取引率は違いなくコロナより全盛期に入っています (online transaction)。この数年流行っていて、一時成功していた体験式消費も運営コストが高すぎて、コロナの影響を受け、物理的な接触を避けるため、さらに難航してしまいました (offline experience)。ARでの再現もまだまだ実の体験とギャップが大きいし、人間性に合うかどうかも議論されています(technology innovation) 。Online vs Offline, Human vs Technology いろいろチャレンジされているビジネスモデル vs 消費文化の関係が動揺しています。ここは「再現」をクリエティブなアプローチで挑戦するいい機会だとも思います。
ビジネスの価値観と消費者の美意識がお互いに影響し合い、育て合う同士です。Quality of livingを求める客層を目指す以上、自分はどうやってお客さんの望みに答えたり、憧れになったりすることまでできるのか、方向性をはっきりと意識しながら、ビジネスの基盤、コンテンツ、発信、規模を考量しなければなりません。ビジネスを人間のように考えてみれば、五感に対等する発信元もあります。例えば、ビジュアル(sight)、メッセージ(hearing)、品質(touch)、個性 (smell) 、コンテンツ(taste)。そこに全て一致する価値観を伝えることはできていますかを反省してみたら、いかがでしょうか。技術の可能性はhuman-centred design、お客さんへの理解から提案、規模には品質を絶対妥協しないという覚悟がboutique businessに必修な試練ですね。
発信に工夫 この前大山崎コーヒーロースターズの中村さんとの取材にも触れましたが。京都の未来にもコラボレーション、外への発信が大事なことだ今回大槻さんも語っていました。資料を調べていたところ、「文化首都として、文化力による京都の活性化、こころの文化の未来への継承、世界への発信」という京都府からの文化施策も見つかりました。
文化を心にしているKurasu、未来をいつもビジョンしている大槻さんこそ、業界に珍しいアプローチを取って、ビジネス自体が世界への発信をミッションとして目指しています。今まで日本発でデザインとビジネスセンスとも優れているブランドは、よく海外への進出に野心が足りないとか、価値観が違いすぎて、海外ではうまく行けないとか、主流派の判断を最近の取材からも聞いたりしていますが。これからKurasuのような少数派に後輩が絶対ついていくと自分は信じています。本来デザインのexcellenceからの安心感にプラス、コミュニケーションのexcellenceによる斬新感に惹かれて、コミュニティーが集まってきます。そこからきっと新文化、影響力が生まれます。
KURASUの美学
こんなKurasuに持つ独特な美学を自分勝手にこのように解釈しています。
・文化の価値観、使命感をこころに、
・世界へ持っていくビジョンを実現するため、
・効率の高い技術、品質の高いコンテンツをビジネスのDNAに導入し、
・力強く、しかも品がよく発展させていくリズムを創り出す
Cultural business
ビジネスが成績を出してから、文化の要素を後から飾り者としてつけるのが、創業ブームでは珍しくない話です。ただ、ビジネスの価値観x消費文化の関連性からして、boutiqueの品質で勝負する以上は最初から文化的価値観を意識しなければなりません。それは消費者、コミュニティが本当に好奇心を持っている、評価しているコアです。自分の文化への理解、再現する熱意がKurasuの心だと思います。
Visionary Leadership
将来的の可能性について聞いたら、「やります!」と言い続けた大槻さんが大好きです。先のことを誰よりも考えるだけではなく、できる方向性を見出す、あそこへの道を作ってくれるのは素晴らしいリーダーシップです。海外と日本、京都から日本全国、コーヒーからライフスタイル、オンラインと店作り、自営とFranchise、複数の線が走っているロードマップはこころに基づき、未来へつなぐビジョンがあったから書いた譜面ですね。
Technological intelligence
Shopifyのような進んでいる技術を駆使してきた大槻さんは、また次の事業拡大に新しいシステムの開発に手かかっています。技術と言ったら、追いかけられないほど更新していますが。そこは自分のこころ、ビジョンを達成するためになる技術を慎重に選択、そこから手に入れたデータをよく理解しなければなりません。やるには知識、時間、チームの協力は必ず必要とされています。この経験もビジネス作りの楽しみの一つに違いないでしょう。
Aesthetic system
ここまで全体的に考えると、大槻さんはいわゆるビジネスマンよりかは、business architect のような肩書きにもっとふさわしいと思います。システムデザインというdesign thinkingのコンセプトもありますが。彼は確かにKurasuのシステムを建築士のように全般にデザインしているように見えます。Kurasuの美意識をどこまでも徹底させるように、次にいくため、このシステムをsubscriptionに一体化されているのではないかと思います。
Business is Platform
Subscriptionを通して、これまでKurasuが注目してきたcollaboration, content, community、またcommunicationはみんなうまくまとまります。
ビジネスの基礎から考えると、subscriptionを成功させたら、従来の客層の基盤が一層固まり、リピート(repeat)が保つのは次への発展には何よりも有利です。そして、毎月のコラボによって、リーチの幅が広くなり、新客も増えていく予測ができます。コミュニティーのスケールが大きくなればなるほど、客層の多様性、リピートの密着性、データから、またより深くインサイトが手に入って、作戦を調整する余裕もあります。
消費文化への影響から見れば、安心感と斬新感とも優れるKurasuから毎月新鮮かつ個性が異なる豆が自宅まで届くので、勢いで買ったり、貯まっりすることも避ける効果もありますね。環境にも優しいです。
Subscriptionのシステムはしっかりできていれば、プラットフォームとして働かせて、コンテンツの再現、文化の発信にもきっと新しい可能性が生まれます。物理的に商品の自社開発や支店の数など自分(I)だけのenergyでやると、どうも限られていることは、プラットフォーム作りでみんな(We) になって、一緒に提携していけば、synergyが出てきます。道が限りなく広がっていきますし、チームもコラボしているみなさんの未来にもより良い環境作りになります。
Leaves Coffee、大山崎コーヒーロスターズ、Kurasu、ビジネスの美学はそれぞれ違いますが、スペシャリティコーヒーへの情熱とコーヒーというメディアで価値観を発信していく趣旨は一緒です。コロナはビジネス環境に悲しいこと、辛いこと、たくさんのチャレンジを与えてくれたと同時に、自ら一新すること、またこの環境の再建に自分の居場所、やり甲斐、これからの在り方を改めて考え直すには、非常に有難いきっかけを作ってくれました。この中、いつも元気をくれるコーヒーはdaily essentialになれたように、コーヒー業界の皆さんは、ビジネス文化にも活気を淹れるessential businessになったら素晴らしいことですね!
Design creates culture, culture shapes values, values determine the future.
Robert L Peters
今学期が無事に合格したら、Kurasuのsubscriptionにも入りたいですね、自分へのご褒美に。
Build up
Kurasu starter kitで三種類の豆が楽しめます。最初のパックを開いた翌日は白いパッケージにどうしても気になり、豆をカンに入れ替え、パックで絵を描き始めた。昔京都で見かけた織物、町に溢れる柔らかな言葉のリズムを思い出しながら、好きな色を選びました。コーヒー豆をイメージした点点はいつの間にか小鳥のようになってきました。Kurasuをinspirationに自分の気持ちも再現できました。これからもっと多くの人々にこの美しい日々のリズムを感じてもらいたいですね。楽しみにしています!
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