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10代のための哲学対話「なぜ女子は怖いのか?」

2021年05月03日 まんのう町立図書館主催

前回4月19日に同図書館主催で行った哲学対話の参加者達と決めたテーマで行いました。今回は、オンラインからも参加できる形をとりました。
オンラインからの参加者が4名、会場5名です。参加者の年代は、小学校6年生から大学1年生でした。

参加者からは、「怖い」と感じることについて次々に発言が出ました。

でも、それって、女子にしか言えないことなのかな?男子についても同じことが言えるんじゃないかな?と思う内容が含まれていた気がします。

「なぜ女子は怖いのか?」という最初のテーマからは、少しづつ離れて、別のテーマがいくつも生まれてきたように思いました。それが全く別のテーマなのか、どこかで、やっぱり「女子の怖さ」と関連しているのか、どうなのだろう・・・。


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グループ(集団)の怖さ

・個人だと大丈夫だけど、グループだと怖い。(女子)
・グループに、自分のことを色々言われてそう。(女子)
・キラキラしてるグループには話しかけにくい。それは男子のグループでも同じ。(女子)
・陰湿なグループは怖い、そうじゃないグループは怖くない。(女子)
・女子という自分がよくわからないコミュニティに対して抱く恐怖というのはあるかもしれないけれど、女子特有の怖さというのはよく分からない。(男子)


 もし、「女子のグループ」と「男子のグループ」が違う性質を持っていたら、同じ「グループ」という言葉でも、それぞれ違うものを思い浮かべていたかもしれません。もちろん、違う性質を持っている可能性もあるし、同じかもしれないし、部分的に同じなのかもしれません。


女子の笑い声は怖い

・女子のキャッキャしている笑い声は、怖い。(男子)
・女子の笑い声を聞くと、自分の悪口言われてるような気がして、あまり良いイメージがない。(男子)

 これは、女子の笑い声だけなのでしょうか。男子たちの笑い声はどうなのでしょう?それとも、「他人の笑い声」自体が、なんとなく恐ろしいものを秘めているのでしょうか。

女子を怒らせる男子

 「なぜ女子は怖いのか」という問いを立てた参加者が遅れてきていたので、テーマを決める時にその場にいた他の男の子に、どうしてこのような問いが出てきたと思うか聞いてみました。

・そもそも男子が女子の癪に障るようなことを言って、女子を怒らせているんだと思う。それを勝手に、男子が偏見で「女子が怖い」って言ってると思う。(男子)

 どうやら、男子は女子の癪に障るようなことを言って怒らせてしまうから、「女子は怖い」ということになるらしい。「女子の癪」「男子の癪」というものが、あるのかな?


表の顔と裏の顔

・女子でも女子が怖い。(女子)
・女子は仲が良い子がどんどん変わっていくと同時に、自分の好きなものもどんどん変えていく。世渡り上手。表の顔からは想像できないくらい、裏でとんでもない悪口を言っているのが怖い。(女子)
・男子にも裏の顔はある。偏見かもしれないけど、でも、女性の方が裏の顔を共有しているのかな。男子は一人で抱え込みやすい。(男子)

 ここで想定されている「裏の顔」とは、公にできない内容を含むということなのかもしれません。そういう意味では、秘密の内容ということになるでしょうか。仮に、嫌いな人のことや恋愛や悩みなどの秘密を、女子は女子同士で共有しているとしたら、男子の共有具合はどうなのだろう?女子ほど、男子は男子同士で「裏の顔」を共有していないのかな。共有の範囲や程度も気になります。それに、「裏の顔」の性質は、男子と女子とで異なっているどうかも気になってきました。


口調の怖さ

・男子はストレートにものを言う。遠回しにこない。上から目線。(女子)
・自分が学級の中で役割を担っていて、みんなのことを悩み考えて決めたことに対して、普段ほとんど関わりのない男子が、「もっとこうすれば良いのに」と言ってくる。男子の方がパパッと決める(女子)

 男子がストレートにものを言うのだとしたら、女子は、遠回しにものを言うってことなのかな。
「女子は最初の段階で決まる。最初にグループから外されたら、ほぼ無理。」という女子の参加者からの発言も思い出されました。女子同士の人間関係と男子同士の人間関係が、もしも、違っているとしたら・・・。言葉の選び方や発言の仕方も変わってくるのかもしれません。(例えば、女子が僅かな言葉で、グループを外されかねないとしたら、かなり周りの様子を伺って言葉を発しなければならないと思います。)やっぱり、女子同士のグループと男子同士のグループの性質がどんなものなのかもっと知りたくなります。

・女子の喋り方が怖い。怖そうな言い方される。口調がきつい。(男子)
・中学に入ってから、グループが別れてきて、小学校の時にはあまり見たことがなかった口調の怖い人がでてきた。(男子)
・小学校だと人数が少なかったので、何と無く気の合う人とかたまる。中学校に入り、より人数が増えるので、より気の合う人と固まる。怖い人は、より怖い人と固まって、「怖い」が洗練される。(女子)

同性に対して話すときと、異性に対して話すとき口調が違うのかな。どんな時に、どんな風に違ってくるのだろう。


共有すること

・女子は、学校などでグループ分けさせられるときに「〇〇ちゃんと別々になるとか、マジで泣く」と言うことがよくある。(女子)

 この発言を受けて、ファシリテーターの杉原自身は女性なので、女子のグループがどんな風だったかを少し思い出しました。グループ同士で何かを選ぶときに、お揃いにしたり、親友同士でお揃いのアイテムを持つということがあったのです。男子には、お揃いのものを持つということがあるのかどうか聞いてみました。

・兄弟で持つものがかぶることはあるけど、友達とお揃いにするということはないと思う。せいぜい、「同じ部活に入ろう」ぐらいかな(男子)

・俺たちには、そういう概念がないよなっ!!お揃いのものを持つとかなんか気持ち悪い感じがする。お揃いにしてると、変な目で見られそう。(男子)

・お揃いのものを持つことはない。逆に、友達とは違うものを持って、自慢したい。(男子)

・一緒に遊べたらそれで満足。(男子)


頭がいい子と悪い子

・前にいた小学校で、男子も女子も頭がいい子が固まっていた。頭が普通の子たちは、普通の子たち同士で固まる。頭がいい子と悪い子は、分かれてた。頭がいい子は、男女平等に仲良くできてた。だいたい頭が悪い子同士の間で問題が起きてた。

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ファシリテーターの頭の中

 今回の哲学対話の時間は1時間半でした。だいたい半分の時間が来た頃には、話題がてんこ盛りになっていて、当初設定していた「なぜ女子は怖いのか?」から少しづつ違うところへ来てしまったかのようです。

どうやって、最初のテーマに関連付けようか・・・。

さて、どうしようかなと思ったものの、こういう回があっても良いかなと思い直しました。

参加者が他の参加者の発言を聞いて、それぞれに異なったところに着目したのでしょう。どんどんアイディアが出て来て、想いのまま発言されたのだと思います。

それ自体、私にとって、とても嬉しいことです。

思いついたことや考えたことを言葉にしてみることで、みんなが一緒に考えてくれる。まずは、そういう場があること、それができることは面白い時間だということを、哲学対話に慣れていない参加者に体験してもらいたいと思いました。

そのため、私自身も、今日は「なぜ女子は怖いのか」について議論しなければならないのだ、ということから、少し離れることにしました。何よりも、この日の様子を見ていて、強引な仕方で、対話に介入しない方がいいなと思いました。


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さあ、問いを考えてみよう!

最初のテーマから、参加者の発言で話題はてんこ盛りです。参加者に、対話の中で、新たに出てきた疑問を問いの形にしてもらうことにしました。参加者から出てきた問いは次のようなものでした。

●クラスや学校の中で、カーストが上の人の方が怖い?
それとも、カーストなど関係なしに怖い部分はあるのか。

●同性と異性どっちのほうが怖いのか

●怖さをなくすために自分にできる考え方はあるのか

●頭が良い人と悪い人の集団の違いは?

●女子は女子1人では怖くないのか?

●怖い人の要素って何んですか?(例:頭の良さ、モテるかどうか、性格など)

●なぜグループに分かれるのか

●なぜグループがある?

●グループからはみ出しているのはどんな人か

●グループからはみ出している人はなぜ入らないのか?

●性格上自分と少し似ているとジェラシーを感じてしまうことはないか?(同質の人と結びつきができるという意味で)

なかには、問いを立てることができない参加者もいました。彼らは「どういうこと?」と首を傾げながら、小声で話していて、頭の上には、沢山のクエッションマークが浮かんでいるようでした。これは明らかに、私の説明不足でした。既に「なぜ女子が怖いのか」という問いの元で、対話をしているはずなのに、もう一度問いを立てるとはどうしてなのか、混乱してしまったのだと思います。

この後、参加者全員で、引き続き対話したい「問い」に投票します。
投票の結果、決まったのは、【頭が良い人と悪い人の集団の違いは?】でした。

(私は心の中で「そこに決まったのか・・・。これをどう最初のテーマと結びつけようか・・・。」と思いました。なんだかんだ、やっぱり、最初のテーマを捨てきれないファシリテーター。)


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【頭が良い人と悪い人の集団の違いは?】

さあ、後半の哲学対話を始めよう!「頭の良い/悪い」と「集団」というキーワードもあります。どんな発言が飛び出すかな?

・高校で、頭がいい人ほど祭り上げられていた。頭がいい人のなかに、頭が悪い人を小馬鹿にする人たちがいた。(女子)

・人に対して理解のあるグループもあるけど、人に対して理解のないグループは、他のグループに対して偏見や敵対心を持ってる。(女子)

・頭が良くて黙々と勉強する人いる。頭がいい人でも、共感力のある人もいる。世渡り上手。そういう人が怖くみえる。級長やってたり、生徒会やってたり、発言力がある人が強く見えたりすることもあるのかな。(女子)

ここで、参加者から質問が出できました。

「皆さんが思う頭のいい人って、勉強ができる人のことですか?」

この質問をきっかけに、「頭が良い人とは?」という話へ、そして更に「グループ」について話が展開しました。

・頭のいい人は、勉強だけじゃなくて、みんなにも優しく接することができる。親切な人。それが本当の頭のいい子。逆に頭の悪い人は性格が大変!裏でめちゃくちゃ悪口言ってそうな人、先生に対する態度がエグい人。テストの順位が何位?って聞く人もいるけど、自分より下だったら煽ってくる人もいるかも。(女子)

・グループにもいるけれど、一人でいたい時には、一人でいさせてくれる。それを許してくれる理解のあるグループだった。(女子)

・人に対して理解のあるグループが、真の賢いグループなのでは?という意見も出たけど、そんなグループ見たことない。自分は生徒会長をやっていた時、みんなにとって良いようにしようとたけれど、絶対に「いや違う」という意見が出てくる。みんなに平等に接することは難しい。世渡り上手な人は、「いいんじゃない」って表向きは言っている。けれども、これは違うんじゃないかって深層心理では、思ってることがみんなそれぞれあるはず。理解がある人は、本当は自分では良いと思ってない事について、「いい」と言っていることがあると思う。(女子)

グループが一人でいることを「許してくれる」という言葉が気になりました。逆に、許してくれないと、一人でいられないのかと思うと、グループって拘束力があるのかな・・・。対話のなかで出てきた発言で、自分の気持ちを使い分けたり、裏表があるという「世渡り上手」と「理解のある人」との関連性も気になりました。


グループとは、何かを共有している集団のこと?

・一部を共有しているグループと、全部を共有しているグループがある。部活が一緒のグループだったけど、趣味も違うし、文系理系も違ってた。持ち物も一緒に揃えているというグループもあって、グループによって共有部分の範囲が様々あった。(女子)


【フリートーク】

時間が来たため、哲学対話の時間は一旦閉めました。その後、フリートークの時間を設けました。

雑談の時間になってリラックスしたのか、「なぜ女子は怖いのか」という問いを立てた男の子が、沢山の思いを語り始めました。

人として絶対に言ってはいけないような酷いことを、女子に面と向かって言われたというのです。ところがその女子は、先生も抱き込んでしまっている。あろうことか(?)、先生も女子なのだとか。そして、周りの女子も抱き込んでいる。そんな女子が、なかなか実権のある役職(?)についていてしまい、もう俺は終わったのだ、と語ります。

すると、参加者の女子がこれを受けてか、次のように話しました。

女子って、結構ものを言うのに、いざ、自分が嫌な局面になると、「〇〇君に自分はこんな酷いことを言われた」と周りの女子に話したり先生に言うかもしれない!

周りを先に抱き込むというのは、女子だけではなく、男子にも言えるのでしょうか。「世渡り上手」という言葉と、「裏の顔」「共有」、など様々なことが私の頭をぐるぐる駆け巡りました。

政治家のことを思い浮かべると、男性でも周りを抱き込むということがありそうだけど、どうだろう。男性と女性、男子と女子は、年齢や置かれている環境が違うから一緒に語ることはできないかもしれない。「女性の怖さ」と「女子の怖さ」が必ずしも全く一緒とは限らないな、と思ったので、「男性」と「男子」を一緒に考えない方がいいのかもしれない・・・。

他にも、男子からこんな話もありました。

男子と女子が入っている部活だけれど、男子のペースに合わせたら、女子がついていけなくてしんどいから、女子もついていけるようトレーニングのメニューが変えられた。それなのに、女子はキャッキャ言ってて、余裕みたいだった!!

男子は、女子たちのために配慮しなくちゃならないことがあるのかな。女子は、男子たちのために配慮しなければならないことってあるのかな。

「そもそも異性と接点が少ないため、女子と男子、お互いがお互いの不満を言い合えるとしたら、『キラキラ』してる」という、何気無い言葉も、なるほど・・・そういう風に考えてみたことはなかったな、と思ったのでした。




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