『ゴーン・ガール』、アメイジングな人はつまらないミスを犯す


 はーい、テツガク肯定です。

 2024年、私が最初に観た映画は『ゴーン・ガール』という作品でした。

 それで、観終えた感想を素直に言えば。
 タイトルにもあるように。

アメイジング(完璧)な人はつまらないミスを犯す。



 まず、映画の話をする前に3人の人物を紹介させてください。

 ニコラス(ニック)・ダン
 主人公の男性です。
 主に振り回される男性となります。

 エイミー・エリオット・ダン
 ニックさんの妻、アメイジング・エイミー。
 主に様々な人を振り回す女性です。

 マーゴ・ダン
 ニックさんの双子の妹です。



 映画の序盤、ニックさんとマーゴさんの会話。
 冴えない表情の兄のニックさんにマーゴさんは言います。

 どうしたのよ、ニック?
 話す気ないなら、代わりにあたしが
 マーゴ・ダンのびっくりするほどつまらない話を始めるけどいい?

 そんな感じのことを言います。(吹き替え版で)
 それから、いろんな話が飛び出し、この年がエイミーさんと結婚5周年だと告げられます。

 エイミーさんとの出会いの回想が入り。
 唐突に人生ゲームを楽しむ二人。
 ニックさんは言います。

 人生ゲームか、どうなればあがりだ?(吹き替え版)


 この何気ない二人のやりとり。
 それがこの映画の全てだと、今の私は思っています。

 ここからはネタバレ全開です。
 苦手な方はお戻りください。





 この映画はエイミーさんがニックさんに復讐する話です。
 最初はエイミーさんにとって、理想の男性だったニックさんでしたが。
 徐々に怠け始め、若い女性と楽しんでいる。浮気していました。

 それで、エイミーさんは決めました。復讐を。
 

 やるからには完璧に。


 そんな彼女の本のアメイジング・エイミー同様に。
 完膚なきまでの復讐計画。


 夫、ニックは仕事もせず怠けていて。
 お金を使い込み、妻の生命保険を増額した。
 日頃から夫は暴力を振るい、エイミーさんは命の危険を感じていた。
 銃の必要性を感じるほどに。

 そして、ある日、エイミーさんは失踪。
 キッチンには大量の血痕。もちろん、血液はエイミーさんのもの。
 鈍器、ゴルフクラブのようなもので殴られたような痕跡。
 後で見つかる倉庫には、夫はしないゴルフクラブと使い込みを証明する贅沢品。



 死体なき失踪事件。
 残された物や証言はニックさん不利に。
 エイミーさんが書き残した日記や宝探しのメッセージなど。

 私の想像ですが。
 この日記は事実が3割でエイミーさんの創作が7割……。
 いえ、事実が1割の創作が9割?

 まあ、割合はどうでもよく。
 よく練られたエイミーさんの復讐計画。

 その動機は……。

 自分より若い巨乳の女性を夫が選んだから。


 最高の計画にしては、とても身近な理由。
 映画の中でエイミーさんはこんなことを思っています。

 近所のおバカさんと友達になる

 彼女のくだらない身の上話を聞き――
 自分もかんしゃくもちの夫に悩んでいる、と吹き込む


 それで、冒頭でも言いましたが。
 この映画の始まりは、ニックさんとマーゴさんの兄妹の会話。

 どうしたのよ、ニック?
 話す気ないなら、代わりにあたしが
 マーゴ・ダンのびっくりするほどつまらない話を始めるけどいい?

 今の私からすれば、まさにこの映画です。

 失踪後、エイミーさんは高飛びでもする予定だったのか。
 どうするつもりだったのか、わかりませんが。
 中盤で出会った知らない女性にはめられます。



 アメイジング・エイミー、つまらないミスを犯す。


 エイミーさんはニックさんを相手にする時だけ。
 アメイジングな存在で、ニックさんいわくサイコパスになれますが。
 知らない他人が相手だと……アメイジングでは在れない。

 本来の計画は自殺する予定だったのかわかりませんが。
 結果的にニックさんのもとへ戻るしかなくなった。
 本当は、死刑にしたかった復讐相手のもとへ。

 立派な計画のわりに身近な動機で、貫き通す信念も控えめ。
 エイミーさんにはニックさんが必要。
 アメイジング・エイミーで在り続けるためには。

 私が思うにエイミーさんがバカにしていた人達は。
 こういう、つまらないミスを犯さないために。
 普段、くだらなくて、つまらない身の上話を聞いている。

 学校の試験みたいなもの。
 多くの人の身の上話を聞けば。
 だいたい、その人がどういう人か察する。

 どうも、中盤に出会ったグレタという女性の方が。
 とっても悪い女性だったようです。

 見事にそれを見抜かれてしまった。
 エイミーさんはとっても悪い女の子のふりをしている。
 ただの育ちのいいお嬢様だということが。

 グレタさんは『ワイルドシングス』のスージーさんで。
 エイミーさんは頭がいいケリーさんという具合。

 知らない他人の前では。
 アメイジング・エイミーの魔法は通じない。
 感情的な身の上話が共通言語。
 それで知らない誰かと繋がっている、感情論という言語で。


 ですが、それをくだらないと思っているから。
 なかなかニックさんへ気持ちが伝わらない……。
 すれ違いも埋まらない……。

 頭がいい人に起こる不思議な現象です。
 テストでは満点なのに、目の前にいる人には想いすら伝えられない。

 と、正直、私にはエイミーさんがつまらない人物に思えましたが。
 この映画はニックさんとマーゴさん、二人の兄妹の絆が面白く感じました。
 男女の関係ではなく、それ以上の何かで繋がっている。


 あんたとは生まれる前から一緒なんだから(吹き替え版)

 確かにな、と思えるほど。
 ニックさんが疑われても支え続けたマーゴさん。

 人生ゲームか、どうなればあがりだ?(吹き替え版)

 結婚とか何かのゴールって儀式を済ませたら?
 それとも、自分以外の誰かと繋がれたら?

 不思議なもので、ニックさんとマーゴさんの関係が理想的に思えて。
 でも、二人は夫婦でもなく、正直ただの兄妹や家族でもない。

 お互い、自分の心臓を預けた、頼りになる相方。
 そういう具合に私には見えました。



 ついでに、エイミーさんの話ですが。

 ニックさんはエイミーさんが犯したミスを知りませんでしたが。
 アメイジングな存在もミスは犯します。
 それも、つまらない人が犯すような難しいミスではなくて。
 つまらない人には犯しようがない、つまらないミスを。

 ニックさんはエイミーさんをサイコパスと言いますが。
 私からすれば、エイミーさんがくだらないという退屈な日々を受け入れられる。
 そういう大多数の方がサイコパスのように思えます。最近の私には。

 エイミーさんみたいな感じが本来の人。
 やるからには完璧に、とびきりアメイジングに、特別な人生を。

 つまらないミスを犯さないように、つまらない日々を受け入れる。
 だなんて、我がままが失われた、無感情で無表情なサイコパスにはなれない。
 それこそがアメイジング・エイミー。


 頭がいい人は肝心なところでアンダーを出してしまう。
 大多数の人が犯さないミスをうっかりやってしまう。

 賢い人のジレンマですね。
 愚かな人とは違うから賢い。
 ゆえに、愚かな人は犯さないミスを犯す。

 けっきょく、みんなミスは犯すということです。
 既に『ワールドガチャ』で大外れを引いているんです。
 大きな過ちの中にいるのですから、同じ仲間です。



 問題は――。
 それを認めることができるか、できないか。

 私は愚かですから認めちゃいます。
 そして、ハッキリと故郷を思い浮かべます。

 人生ゲームか、どうなればあがりだ?


 それは帰りたい故郷を思い出した時。
 今の私はそう答えます。

 ハイヨー、シルバー! ウェーイ!
 ハイホー、ワガママ! ウェーイ!



 人生は帰り道、心が覚えている。
 馬に跨ったら、槍を持って『ROCK YOU!』と今を貫け!
 何れ、『ROCK YOU!』の感想も描けたら。



 それでは、また次の機会にお会いしましょう。







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