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エッセイ

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実体験や、日々の気づき。思ったことなど。
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#エッセイ

「おれはきっとマンガ家になる。」

「おれはきっとマンガ家になる。」

「マンガ家」という職業をはじめて意識したのは、14歳のときだった。

当時通っていた塾の棚には、生徒が休憩中に読む用のマンガがたくさん置いてあった。
マンガ好きだったおれは授業よりも、この休憩中のマンガの為に塾へ通っていたといっても過言ではない。

気になっていたマンガを一通り読んでしまったおれは「次は何を読もうか」と迷った。
そしてタイトルだけ何となく知っていた『スラムダンク』というマンガを手に

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好きなことは「見つける」よりも「選ぶ」。

好きなことは「見つける」よりも「選ぶ」。

最近、「好きなことを見つけて仕事にしよう」みたいな言葉をかなり良く耳にするようになった。
正直、おれはこの言葉があまり好きじゃない。

たしかに好きなことがあってそれが仕事になったら、それはもちろん素晴らしいことだ。

ただ、おれはこの言葉が社会の中に一種のしんどさを生み出している側面もあると思う。
「好きなことを見つけなきゃ」とか、「好きなことがない私はダメだ」というしんどさだ。

しんどさが生

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年末はやさしいから、好きだ。

年末はやさしいから、好きだ。

おれは年末が好きだ。
年末はやさしいから、好きだ。

個人的な話になるが、困ったことにオトナになってからは「今年はやり切ったぞ!」と手放しで言える年がなかなか来てはくれないようになった気がする。

学生の頃は、学校や部活の枠の中で用意された一年をこなせば、何となくの達成感を毎年得ることが出来た。

特に今年は、コロナの影響もあり、多くの人にとってそうだったように、おれにとっても本当に本当にボロボロ

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おれは井の頭公園の池の柵を壊したいと思った。

おれは井の頭公園の池の柵を壊したいと思った。

おれは吉祥寺に住んでいる。

ほんとうは吉祥寺からちょっと離れているのだが、人からおしゃれな生活をしていると思われたいので吉祥寺に住んでいると言い張っているのだ。

そんなおれが住むおしゃれタウン吉祥寺には、「井の頭公園」という公園がある。

26歳にしておじいさんみたいなのだが、おれは散歩が趣味なのでもちろん井の頭公園によく足を運ぶ。
ヒマがあるとほとんど毎日行くくらいの熱狂っぷりだ。

程よい

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キミたちは、石焼きいも屋に命を助けられたことはあるか?

キミたちは、石焼きいも屋に命を助けられたことはあるか?

おれは小学3年生から大学卒業までアイスホッケーというスポーツをやっていた。

日本ではマイナースポーツなので、サッカーや野球などのメジャースポーツと比べるとその規模はかなり小さいのだが、現役のとき、高校と大学では一応毎年全国大会に出場していた。

とは言ってもおれ個人としては、悲しいほどにアイスホッケーのセンスがなくずっと下手クソであった。
でも、おれはどれだけ厳しい練習も基本的にいつもまじめにが

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27歳の誕生日、焦燥感を寡黙なマッチョゴリラに砕かれた話

27歳の誕生日、焦燥感を寡黙なマッチョゴリラに砕かれた話

おれは高校3年間アイスホッケー部だったのだが、同期に寡黙なマッチョゴリラがいた。
いや、もちろん正確にいうとゴリラではなくゴリラによく似た同期だ。

身長こそ168cmほどでそこまで大きくなかったが、鋭い顔付きで身体は全体的に太く、筋肉ムキムキであった。
口数は少なかったが自分のこだわりみたいなものを持っている男で、いい意味で厳しくてキツい性格をしていた。

練習には文句も言わず黙々と取り組み、走

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まさかアラサーにもなって、姉にきんたまの数を報告するとは。

まさかアラサーにもなって、姉にきんたまの数を報告するとは。

これはおれが新潟の苗場で冬の季節労働をしていたある日の、風呂場での話だ。
お姉ちゃんから着信があった。

おれには姉がふたりいるが、「お姉ちゃん」と呼ぶのは5歳上の長女の方である。

おれは仕事で疲れた身体を寮の湯船の中で温めていた。
冬の苗場はよく冷えるのでこの時間がたまらないのだ。

風呂場ではOPPOのスマホから『オードリーのオールナイトニッポン』を流していた。
radikoのタイムフリー機

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「保温効果がない」、という機能がある。

「保温効果がない」、という機能がある。

西荻窪に住んでいた頃、よく井の頭公園まで散歩をした。
公園通いをしていると、キントーのタンブラーを持参している人たちが結構多いことに気づいた。

タンブラーを使いこなす人たちは、おれからするとやたらカッコよく見えた。

このキントーのタンブラーは、シンプルながら蓋がちょっと個性のある形をしていてかわいい。
表面はマットでありながら少し艶がある質感で、圧倒的に佇まいが良い。

本人たちからすると、単

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しあわせバタ〜味。

しあわせバタ〜味。

「冷静になってよく考えるとヘンな物」、と言われて頭に思い浮かぶものはなんだろう。
おれの場合、それは『しあわせバタ〜』である。

知っている人の方が多いだろうが、一応説明すると『しあわせバタ〜』は、カルビーが販売しているポテトチップスのことだ。
2012年に期間限定で販売され、人気が出ていつの間にか定番ラインナップに入ったらしい。

最初は特に気にしていなかったのだが、おれはある時ふとこのネーミン

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「カレイの唐揚げ」と家族観。

「カレイの唐揚げ」と家族観。

「カレイの唐揚げ」にちょっとした思い出がある。

この"カレイ"は魚のカレイのことだ。
ちなみにエイと見た目が良く似ているが、別の種類らしい。

小さかった頃、札幌の「平岡」にある祖父母の家によく泊まりに行った。
おれの実家も同じく札幌だったので、平岡までは車でたいだい30分程だった。

平岡の家は、かなり古いボロボロの平家で基本的にはおじいちゃんとおばあちゃんの2人暮らしだった。
外の小屋では、

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家族の前での一人称問題。

家族の前での一人称問題。

世の中には”厄介な問題”がたくさん存在している。
そして、その中の一つが「家族の前での一人称問題」である。

いきなり質問からはじまって恐縮なのだが、あなたは家族の前で自分のことを何と呼んでいるだろうか?
現在おれは、「おれ」である。

「いや普通じゃん。」と言われそうだが、もうちょっと話を聞いてほしい。

これからおれは、今まで誰にも話していなかった「あること」について初めて懺悔しようと思う。

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友達がシンドい時、甘いものをあげるという正解。

友達がシンドい時、甘いものをあげるという正解。

友達に「シンドいこと」が起きた時、なんと声を掛ければ良いかって難しい。

人間生きていれば、好きな人にフラレれたり、誰かに裏切られたり、職を失ったり、重い病気に罹ったり、家族が死んだりと、シンドいことは定期的に起きるものだ。

自分自身にシンドいことが起きた時は、「ぐえ〜」とか言って自分で苦しんでいれば良いだけなので特に問題はない。
だが、誰か周りの大切な人たちにそれが起きた時、うまく立ち回ること

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創作をするのは、人を救う為か。

創作をするのは、人を救う為か。

自分の価値観を一発で壊される瞬間ってたまにある。

“それ”が起きたのは、Kという同い年でデザイナーの女性の友達と飲みに行ったときだった。
このKとは、大体年に1回か2回くらいの頻度で会う。

大体、どこかでランチを食べて喋るか、居酒屋で飲んで喋るか、喫茶店でコーヒーを片手に喋るかだ。

お互い本好きなので、「最近読んだアレが面白かった」とか、好きな作家の話などをする。
よく本をあげたり、貸したり

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「てつと」と「キネ」。

「てつと」と「キネ」。

実は、おれは名前を2つ持っている。

一つは本名である「てつと」。
もう一つが「キネ」だ。

何もふざけている訳ではない。
本当の話なのだ。

うちの「望月家」には、昔から家族ぐるみで仲良くしている「藤井家」という一家がいる。
元々住んでいた家が近所だったことが、きっかけで付き合いが始まった。

趣味や空気感が似ていたのと、何よりお互い同じような年頃の子供が3人ずついたことで、もうかれこれ30年以

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