見出し画像

【キャリアコンサルタントの本棚】#1

私の読書録みたいなコンテンツです。ジャンルに捕らわれず、いろんな「読む体験」を綴ります。今回は!

【ウィーン・フィルの哲学~至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか/渋谷ゆう子】
「正統にして先鋭。ハプスブルグ家の治世から受け継がれる無二の奏楽、その伝統の奇跡」

ネットでも、あちこちでよく取り上げられていたので、読みました。いやあ、とても面白かったです。

世界最高峰の楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。ニューイヤーコンサートや最近の話題ではJ.ウィリアムズ自作自演のCDなどでは知っていましたが、その歴史や成り立ちまでは知りませんでした。この本には過去から現在に至るまでの「歴史」とともに、組織形態としての「特異性」も克明に描かれていて、大変興味深く読みました。

第1章「音楽界でのファーストペンギン」では、コロナ禍と楽団がどう対峙し、いかに演奏活動を復活させ、音楽界にどう影響を与えたかが、ドラマチックに描かれています。
第2章「ウィーン・フィルとは何者か」第3章「ウィーン音楽文化と自主運営の歴史」では、経営母体をもたない自主運営のオーケストラの誕生の経緯、その仕組み、歴史的な音楽家たちとの邂逅などが描かれていて、この本でのメインテーマともいえる章です。
第4章「戦争が落とした影」第4章「王たちの民主主義」第5章「アート・マネジメントの先駆者として」では、20世紀の二つの対戦、そして現代の「ウクライナへのソ連侵攻」に対して、どう対峙したか、そして「近年の楽団運営の改革とその結果」また「後継者育成」と変わりつつある音楽業界への対応などが描かれています。
音楽ものではありますが、「組織論」の一つとしても、楽しませていただきました。おススメです。

「気に入らない指揮者は二度とステージに立たせないし、オペラピットでもステージ上でも、指揮者を無視して自分たちの演奏をしたりもするのだ。ウィーン・フィルはそうした誇り高き曲者揃いの奏者で構成されている」
「彼らのビジネスマン顔負けの下準備や交渉、有事での対応力を見ていると、この根源的な事実を忘れそうになる。「できるビジネスマン」としての側面を持つ彼らが、自らその演奏会で楽器を弾いているのだ」



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?