正統的周辺参加【学びほぐしの備忘録】#1
自身の学び直し、学びほぐしのアウトプットとして書いていこうと思います。まず1回目は、
正統的周辺参加
正統的周辺参加(LPP:Legitimate peripheral participation)とは、「社会的な実践共同体(コミュニティ)への参加の度合いを増すこと」が学習であると捉える考え方です。文化人類学者レイヴとウェンガーによる「状況に埋め込まれた学習」の翻訳とともに日本でも活発に議論が行われるようになってきました。
「正統的周辺参加」論は、学校以前からの徒弟制において、熟達者から新入りに技が伝承していく様子を観察した研究がもとになっています。最初は下っ端の仕事をしながら、より熟達している人がこなしているより重要な仕事を傍らで観察し、真似して覚えていきます。少しづつ「周辺的」な位置から「中心的」な役割を果たすようになっていく姿を「学習」と捉え、下っ端であってもそのコミュニティの「正規メンバー(=正統的)」であり、周辺部分から徐々に参加度を増していく、という意味で「正統的周辺参加」論と名づけられました。
正統的周辺参加では、学習を「頭の中に情報をインプットする過程」ではなく「コミュニティへの参加の過程」として捉える点、その成果を「知識の増加」や「行動の変化」ではなく「アイデンティティの変容」に置いている点が、その特徴です。
新入りが、コミュニティの中で徐々に「空気が読める」「役に立てる」ようになりながら、次第に「中心的な役割」を担えるようになっていく。そうして、やがて「自分は一人前だ!」と思えるようになり、コミュニティの中核を担う「古参」となっていく。そんなプロセスこそが「学習」なのではないか、と捉えたわけです。
コミュニティで「一人前」の地位を築いた「古参」のメンバーは、誰しもが初めは「新入り」でした。そんな「新入り」のメンバーでも、少しずつ「周辺」の活動に参加する過程で、徐々に「中心」に近づいていきながら、やがて「一人前」になっていく。その特徴を踏まえて、「正統的周辺参加」と呼ばれているのです。
コミュニティ内での「参加による学び」を循環させるには、「新入り」が気軽にコミットできる「周辺的」だけど「正統性」のある活動を用意しておくことがポイントであるとも言えます。新たなコミュニティを立ち上げる際には、こうした仕組みをあらかじめ埋め込んでおくのが良いと考えられますね。
「学びの実践共同体」について、私は横の学びといった表現を使いますが、会社組織だけではなく、社会の中で様々なカタチの「コミュニティ」が増えていくと良いなあ、と考えています。