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【私の本棚】いつまで成長神話で疲弊しているの?(内田樹編・著「撤退論-歴史のパラダイム転換にむけて」)

……どっかで聞いたことのあるタイトルと言う人は、ネットの世界が長い人ですね。
閑話休題。

まず結論(この項だけでOKです(笑))

内田氏の「撤退について書いてほしい」との依頼に応じた識者15人の寄稿をまとめたものです。なぜ撤退か。少子化・超高齢化や気候変動で国力が衰退し、国民資源が目減りしているにも関わらず、人々は論じることを忌避している。だから論じてみよう―ということです。

これだけ人減っているわけですから。シュリンクしているわけですから。成長、成長と街頭で叫ばれて、違和感覚えませんか。自分は覚えます。

かといってコンパクトシティ化しても、いずれそこの住人が高齢化して、さらに集約したコンパクトシティをつくらないといけない。解決になりません。じゃあどうする?

個人的には「個人の選択肢を増やす「プランB」とは何か 」(兪炳匡)だけでも読んでみるべし。成長からのパラダイム転換を具体的に個人レベルで提案しています。編者本を左翼本と言う人がいます。主義主張はさておき、まず読んでみましょう。真っ向から否定できる人はどれくらいいるでしょう。


ここから筆者の駄文です


私は読後、三つのことを思いました。「少子化対策という選挙公約」「エゾシカ、ヒグマ、キタキツネ」「億り人が入る棺桶サイズ」。

なんのこっちゃ?

「少子化対策という選挙公約」。参議院選挙の年です。各党、判で押したように少子化対策が並びます。でも前の選挙も、前の前の選挙も、その前の選挙も、少子化対策あったはず。では出生率が上がったか。あがってるわけないですね。日本は政策で出生率をあげることは、もはや不可能なのです(個人的には可能だと確信していますが……別の機会に)。現在の社会システムでは厳しいということなんですね。

「エゾシカ、ヒグマ、キタキツネ」。私の住んでいる北海道では、市街地にヒグマが出た、シカが出たというニュースは、まったく驚くものではなくなりました。それだけ日常茶飯事になったのです。

でもそれは当たり前。本来彼らが住んでいたエリアまで開発しちゃいましたから。本書でも指摘されていますが、野生と人間との緩衝地帯がなくなってしまったのです。山河がなくなれば山林、田畑が荒れます。食糧安全保障がどうなるかなんて言うまでもないでしょう。さらにヒトが知らない病原菌を持った動物が「下界」へ降りてきます。新しいパンデミックも怒り得るでしょう。

そうやって成長こそが発展の礎と教えられて、みんな育ちました。かつてはそうです。いかに稼ぐか。FIREしたい、億り人になりたい、そんな話題もSNSで飛び交います。

しかし、1億稼いで万歳しても、死ぬときに必要なのは棺桶と墓くらいです。成長神話を信じて突っ走って、最後は六文銭をもって三途の川を渡ればいいだけです。変な話ですが、言いたいことわかりますよね(笑)。

資本主義は成長することで成り立つシステム。だからこれだけ人口が減っているのに、「そんなに成長するわけないじゃん。ダウンサイジングな社会政策を」などと口にするエライ人、センセイはいません。

コロナ禍で、地方への移住が進むと言われました。いまどうでしょう。「できれば都会に住み続けたい」と、都心回帰の多いこと。でもね、東京が反映しているのは地方の税収と人を吸い上げたからということに、どれだけの人が気づいているでしょうね(ある意味原発の立地と同じこと)。地方が衰退すれば東京はどうなるか、わかりますよね。

子どものころ、移動式スーパーは場所を問わず健在でした。やがて地元資本のスーパーになり、さらに都市型巨大資本スーパーが林立。地元資本スーパーや商店街、移動式スーパーは壊滅状態になりました。交通弱者も都心まで買い物にいかないといけない。その救世主として移動式スーパーが登場しました。あれ……?これは何を意味しているんでしょうね。

国土が違いすぎるアメリカ型資本主義をうのみにしなかった欧州で、元気な地方都市が多いのはなぜか。どうして日本だけ取り残された国になったのか。脱成長で持続する社会とは何か。それらのアイデアがわかります。

撤退は敗北ではありません。

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