目的と手段の関係
「目的」と「手段」。
この二つは,様々な分野で取り上げられ,よくセットで目にすることが多い。
芸能・芸術,スポーツ,ビジネス,教育,成功哲学,テクノロジー,スピリチュアル...
これだけ色々なジャンルで取り上げられている話題なのだから,人間にとってよほど重要なことなのだろう。
そう思って「目的」と「手段」の話に耳を傾けてみると,
めちゃめちゃ重要な内容であることが理解できる。
私がこの話題に初めて触れたのは今から11年前。
東日本大震災が起きた年のこと。
当時,大学の監督からのご縁でイタリアに行く機会があって,その時にイタリア人の柔道の先生からこの話を聞いた。
その時に聞いた話を簡単にまとめると,
「私たち人間は,色々なものを通して人生を豊かにしている。」
「それは,人によっては音楽であり芸術であり,ときには宗教である。私たちにとって柔道もそのうちの一つである。」
「つまり,今私たちがここで“柔道をしている”ということは,“人生を豊かにする”ということの手段であるのだ。」
なんともイタリア人らしい,芸術家や哲学家を感じる答え。
アートに満ち満ちている。
70歳を過ぎてなお,杖を片手に柔道衣でお話をされる姿が,今でも鮮明に思い出される。
その頃の私は,日本スポーツ界では当たり前である「競技主義」や「勝利至上主義」のなかで,もがき苦しんでいた。
たかだか学生で,しかもアマチュア選手の私が「もがき苦しむ」ということは,なんとも大げさな話のように聞こえるだろう。
しかし,幼い頃から特定のことをコツコツ一筋でやって,ある程度の評価を受けながら自分の“学生キャリア”を積んだ人間にとっては
とても重大な問題であった。
さらに追い打ちをかけたのは,「学生を終えたあとの人生」に対するとてつもない不安である。
今までは,勝っても負けても「競技を続けること」で,ある程度の評価がされてきたが社会人選手は違う。社会人になって競技柔道を続けられるのは,「オリンピックを目指す」一握りの存在に限られてくる。
自分の成績やコンディションの状態,現在地が無情にも突きつけられた。
結果を出さなければいけないという気持ちから,貴重な試合の一つ一つに自ら重圧をかけてしまっていた。
そんな状態では結果は悪くなる一方で,結果を出したいがモチベーションは上がらないという悪循環が自分を取り巻いていた。
イタリアで聞いた話は,めちゃめちゃ衝撃だったし,自分を客観的に見つめることができた。
「自分は今,柔道をすることで人生を豊かにできているか?」
答えは,NO。
豊かとは真逆をいっていたし,時間をただただ浪費していた。
では,「柔道を通して人生を豊か」にするためには一体何が必要なのか?
その先生はとても丁寧なことに,その“答え”も教えてくれた。
「それは“楽しむこと”だ」と。
ただただ,そのことを楽しむことだと。
それが人生を豊かにする最大の方法であることを教えてくれた。
え?たったそれだけでいいの?と思ったが,なんとなく分かる気がした。
楽しむことか。
今の自分が柔道をしていて“楽しい”と思えることは何か?
と自然と考えが巡っていた。
この一連の問答によって,「目的と手段」という概念は,体験を持って理解することができた。
幼い頃,知らず知らずのうちに柔道をする(手段)ことで,ポジティブな他者評価や充実感・達成感を味わう(目的)ことができ,人生を豊か(ゴール)にすることができていた。成長するにつれ,なかなか目的が達成できないと,“柔道をするというだけで評価される自分”がいつのまにか目的になってしまっていたこと。
そして,顕在意識では「もっと勝ちたい。結果を残したい。」と思いながらも,潜在意識では既に“柔道をするというだけで評価される自分”が満たされてしまっているので,顕在意識と潜在意識との迫閒で“もがき苦しむ”ことになること。
人生を豊かにするための“手段”が,
“目的”になってしまうということ。
以下のブログ記事にも「目的と手段」という話が取り上げられているので,
興味がある人はリンクからご覧ください。
https://ameblo.jp/mitsulow/entry-12751493328.html
この記事に書いたことは,あくまでも私の解釈。
しかも,その解釈は「次の瞬間」には変わっているかもしれない。笑
ちなみに,学生のその後の自分は「目的と手段」を明確に分析することで,
自分が柔道を楽しむためには何が必要なのかを考え,練習の際に「楽しむこと」を心がけて取り組んだ。
すると,練習の一回一回が劇的に変化し,潜在意識は「柔道をしていることで評価される自分」から,「自分の能力を最大限に引き出した柔道をすること」に自然と切り替わっていたのだと思う。そのときの自分の状態は,潜在意識と顕在意識がシンクロして「本当に引き寄せたいものを引き寄せられる状態」であったのだと思う。
実際に,今まではまったく手の届かなった大会で入賞し,インカレ(全日本学生)の出場権を獲得することもできた。
自分にとって必要であった結果が引き寄せられた。
そして,もう一つの不安要素であった「学生を終えたあとの人生」にもシンクロは影響した。
自分を支えてくれた柔道を,卒業後にも続けるためには?
そして「楽しむ」ためには?
自分に問いただして出た答えは「海外で柔道の指導者になる」こと。
ご縁とご縁が幾重にも重なり,本来は難しいとされる語学資格や試験さえスムーズに運ばれ,青年海外害協力隊としてインドで柔道を教える道に歩みを進めた。
「目的と手段の関係」
「顕在意識と潜在意識の調和による“シンクロニシティ”」
壁にぶち当たっているとき,困難な状態や辛い状況。
そんなときこそ「人生を豊かにすること(ゴール)」を明確にイメージする。
自分自身を冷静に分析し,ゴールに必要なための“手段”と“目的”について考えてみる。
すると,現状の問題点や改善点が見つかり,その部分を軌道修正し,明確なゴールに向かうことができるようになるのだと思う。
簡単に言ってはみるが,これが非常に難しい。笑
そもそも,自分の人生の主導権をしっかりと持てていることや,
思考や言葉・行動が自分自身を創りあげているということや,
自分の周りの全てに感謝の姿勢を持てていることなど,
挙げればきりが無い。
けど,ある意味では非常に簡単で,
「自分の人生は自分がつくっている」と気づくこと。
無意識にそう思えるまで,意識的に繰り返し,
染みこませていく必要も時には必要かもしれない。
今の段階ではここまで。
私自身が,道の途中でまだまだゴールに向かって歩みを進めている。
この“途中経過”を読んで,少しでも何かのお役に立てたのなら幸いです。
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