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宮崎駿「風の谷のナウシカ」を読んだ頃

それは23歳の時だった。ぼくはインドの安宿でノイローゼ気味になっていた。はじめて勤めた会社が倒産したあと、何かを求めてインドにいったが、何も得ることが出来ず、ここに居ても何もならないとそそくさと日本に引き揚げた。
ぼくは、就職した物流販売の会社が倒産したことで、何か作れるようになりたいと思っていたのと、酷いアトピーを克服した過程で無農薬の有機農業に興味が湧いていた。
母の知り合いを頼って、東京町田にあった営農団地の一画にミネラルの研究のために有機農業を営んでいるM田さんという方のところで働かせて貰うことになったのだ。お給料はないとのことだったが、それでも学びたい氣持ちが勝った。
はじめての畑仕事は何から何まで楽しかった。M田さんのところに学びにきていた先輩二人に種まきから堆肥肥料作り、鍬の使い方、畝の立て方、草取り、一緒に作業しながらいろいろと教えて貰いM田さんはミネラルの事や発酵の事、菌、微生物、命の繋がりを教えてくれた。(この農場ではM田さんが作っているミネラルを堆肥や肥料を作るときに入れたり、野菜に葉面散布したりする。)
二月に半分に切って断面に灰をつけて植え付けたジャガイモが7月の頭頃収穫出来るようになった。
ジャガイモは腐りやすいから収穫したら空いているビニールハウスに広げて表面を乾かす。
こんなに沢山のジャガイモを見るのは生まれてはじめてだ。畑を耕し種芋を植え付けて収穫するところまで体験したぼくは会社が倒産した事からきていた社会的な不安から解き放たれた。
安心したのだ。食べ物を作れる。何とか生きていけるなと。

その頃にぼくは「風の谷のナウシカ」を読んだのだ。

アニメ映画のナウシカを見たことがある人は沢山いると思うけど、元の漫画で読んだとなると数はグッと減ると思う。映画は物語の4分の1くらいで終わってしまっていてナウシカの物語はその先もっと続いていく。

人間が起こした火の七日間戦争、その後の世界。世界は汚れそれを浄化するために巨大化かした菌郡が腐海の森を作る。腐海の森から出る瘴気を吸えば人間は死ぬため人々はマスクをして生きる。
そのような世界でも人々は争いをやめない。王国と神聖皇帝が率いる世界の戦争。ナウシカは戦いに巻き込まれながら、世界の秘密を知るために旅をする。
菌郡の森と共に巨大化した虫達。徐々に広がっていく腐海の森。
戦いと旅の中で、ナウシカは森の人の案内で腐海の森の深部にたどり着く。全てが浄化された正常な空気の世界。そこは肉体でたどり着く事は出来ず、無意識の世界からしか人間はたどり着くことがでいない。浄化された場所に肉体で入ると人々は血を吐いて死ぬ。木も草も虫も人も汚れた世界で生きていけるように體の組成を変えられてしまっているのだ。

最後に辿り着いた、火の七日戦争の以前の技術が隠された場所でナウシカは全てを知り理解する。

虚無がナウシカを捉えようとする。

それでも人にまみれ、この星とともに生きていく決意をするナウシカ。

ぼくはこの作品に出てくるこのこの台詞が好きだ。

「我々はナウシカにはなれないけれど、ナウシカと同じ道を歩む事は出来る。」

あの頃のぼくは、この本で菌や微生物、虫なども含めた大きな命の繋がり、無意識の世界での繋がりを知り、畑の土の上でそれを感じた。

ダンゴムシが巨大化した王蟲(オーム)が言う。

我々は個にして全、全にして個。

無意識下の繋がり、それは確実にある。ただ在る。


今回もご一読ありがとうございます。
ナウシカの物語ストーリもとても面白くて引き込まれます。神奈川、沖縄、鹿児島と流れ流れてきたぼくですが、「風の谷のナウシカ」は数々の引っ越しを経てもずっと一緒に旅をしてきた数少なくなった本のうちのひとつです。宮崎駿はほんとにすごい。興味のあるかたは是非読んで欲しいです。


最後に一言、

No more mask❗We want to see your smile‼️




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