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奥泉光「鳥類学者のファンタジア」を読んで

プロジャズピアニストである希梨子(フォギー)はある日JazzBarで演奏中、第二次世界大戦中ドイツで、行方不明となった祖母の姿をみる。祖母である霧子も日本で当時天才と称されるピアニストだった。ドイツでの祖母の足跡を調べるべく調査を始めたところ・・・

ロンギヌスの石、オルフェウスの音階、歌劇「ピュタゴラスの天体」、宇宙オルガン。神秘的なキーワードに彩られフォギーと弟子の佐知子ちゃんが現代日本、戦時下のドイツ、果ては宇宙の水晶宮へと時空を超えて旅する音楽と宇宙の神秘の物語!!

作者、奥泉光は小学4年生にしてウクレレを購入し友達とバンドを結成する。現在でも自身がキーボードを弾くR&Bバンド、フルートを吹くJazzバンドで執筆の傍ら活動しているくらいの音楽好きとあって、この鳥類学者のファンタジアにおいてその音楽愛が爆発している。物語の舞台の大半は戦時下のドイツなのだが文体はノリノリで進行していき、クラシック音楽とJAZZが随所に散りばめられている。

終局、フォギーがピアノで演奏する音楽(十二音技法)、オルフェウスの音階によって宇宙の根源的な所に行き、その秘密がとかれる。そこは音楽で満ちていて音楽で成り立っている。

この小説とは別に、ぼくはアンサンブルというのは宇宙を理解するために生まれたと書かれているのを読んだことがある。ぼくには宇宙まで達するような音楽的技術も音楽的魂もないけれど、ぼくが音楽が好きな訳がこの小説を読むととても理解できる。ぶるぶるっと小説の内容に同調する。歌うこと、楽器を弾くこと。その奥にあるもの。

鳥類学者のファンタジア、鳥類学者は何処にも出てこないけど、そのタイトルの意味は宇宙を俯瞰、鳥瞰してみるということだと思う。

今回もご一読ありがとうございます!!奥泉光はこの共通テーマで新・地底旅行、ビビビ・ビ・バップという小説を書いています。新・地底旅行は明治期を舞台にして地球空洞説を信じる学者が地底を探検するうちに、そこは宇宙のとある場所と繋がっていて・・・、ビビビ・ビ・ビバップはまだ半分しか読んでないけど21世紀末の物語フォギーの孫が出てきます。ぼくはこの小説でパンデミックという言葉を知りました。

秋の夜長の読書感想文。次は阿部和重「ピストルズ」を読みます!!皆々さまも良き本の旅を!!

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