柴田明恭

サムライビジネスギルド(SBG)代表。1995年東京大学法学部卒、日本生命保険相互会社…

柴田明恭

サムライビジネスギルド(SBG)代表。1995年東京大学法学部卒、日本生命保険相互会社入社。人事、企画畑を歩み、在職中の2006年にUCLAロースクールへ留学。法学修士。2012年からダイコクドラッグで創業者会長の右腕としてグループを牽引。売上高1000億円達成の立役者となる。

最近の記事

エリートのスポーツ、ラグビー

ラグビーワールドカップで日本がアイルランドを破りました。体格に劣る日本のフォワード陣がスクラムで互角以上の奮闘を見せ、集中力を切らさない全員でのディフェンスが格上アイルランドを追い詰めました。どのスポーツよりもフィジカルが求められる競技でありながら、どのスポーツよりも精神性が重要になるところに、ラグビーのおもしろさがあります。 よく言われるように、ラグビーは紳士のスポーツです。ラグビーは紳士のスポーツ、サッカーは庶民のスポーツだと言われると、日本人は少し違和感を覚えてしまい

    • 原発事故と被害者心情と刑事裁判

      東京電力の旧経営陣3名に対し、東京地裁が原発事故で無罪判決を言い渡しました。刑事事件としては妥当な結論だったように思います。この判決に対し、テレビでは福島県民にインタビューし、「納得できない」「理不尽だ」といった声を取り上げています。福知山線脱線事故でも見られた、お決まりのパターンです。 罪刑法定主義や推定無罪といった刑事の原則は、基本的人権の根幹中の根幹です。人権とは、絶対的な権力者である国家から、私人を守るためにあるものだからです。この思想を自由主義と言います。対する民

      • 仲間意識と仲良しクラブ

        吉本興業をめぐる一連の騒動もようやく沈静化してきました。 芸人自身が取ってきた仕事を会社を通さずに引き受けていたことが発端となった今回の騒動ですが、その背景には、芸人へのギャラ配分が少ないこと、大半の芸人が芸能では食べていくことができず生活苦となっていること、芸人と会社との間で契約書の取り交わしをしていないことなど、芸人と会社との関係に関するいくつもの課題があったとされています。その反面、反社会的勢力との交際など不祥事が明らかになると、契約解除や謹慎など、会社からは芸人へ厳

        • 個を活かす -老舗旅館陣屋の取り組み

          鶴巻温泉の元湯陣屋さんにお伺いしてきました。 陣屋さんは、将棋や囲碁のタイトル戦会場としても知られる老舗の高級旅館ですが、それと同時に旅館業界の救世主のような存在でもあります。思い切った設備投資やIT化などで経営危機を乗り越えた後、自社で開発したCRMのシステムを「陣屋コネクト」としてほかの旅館へ提供し、旅館業務の効率化、高度化を支えています。直近では、全国の旅館が無料で情報交換することができる購買システム「宿屋EXPO(ヤドエク)」もローンチしました。 旅館は、そこに泊

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          エスカレーターひとつにすら垣間見える日本社会の内向性

          東京では左、大阪では右。 立つ場所は左右異なりますが、東京でも大阪でも、エスカレーターでは立ち止まる人はどちらか片側に立ち、急ぐ人はもう片側を歩くのが一般的になっています。ぼくが高校生の頃(80年代)にはまだそういう慣習は確立していなかったので、日本でこれが定着したのはまだここ30年以内のことです。 この慣習が始まったのは、東京メトロ千代田線の新御茶ノ水駅だと言われています。通勤途上のサラリーマンが多く使うにもかかわらず、駆け上がったり駆け下りたりしたくても階段がなく、距

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          大学の原風景 -90年代に大学生であった者として

          説話論的な磁場。それは、誰が、何のために語っているのかが判然としない領域である。そこで口を開くとき、人は、語るのではなく、語らされてしまう。語りつつある物語を分節化する主体としてではなく、物語の分節機能に従って説話論的な機能を演じる作中人物の一人となるほかはないのである。にもかかわらず、人は、あたかも記号流通の階層的秩序が存在し、自分がその中心に、上層部に、もっとも意味の濃密な地帯に位置しているかのごとく錯覚しつづけている。(蓮實重彦「物語批判序説」) 久しぶりに五月祭に

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          実るほど頭を垂れる稲穂かな

          今日で平成が終わり、いよいよ明日から令和が始まります。在位期間中常に国民の幸せを祈り続けてこられた天皇陛下には、一国民として、心から感謝の意を申し述べたく思います。 天皇陛下は、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺を体現されています。自ら、象徴天皇とはどうあるべきかを自問自答してきたと語られているように、謙虚でいつくしみ深いその立ち居振る舞いも、考え抜かれたうえでの所作だったに違いありません。最も高い地位にある人が、誰よりも慎み深く振舞う。行動規範や価値観という点で、天皇

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          絶対に裏切らない二重スパイ

          広告代理店におけるメディア担当というのは、例えるなら最後まで裏切ることのない二重スパイである。もちろん暗躍する舞台は広告代理店および媒体社だ。メディア担当が代理店と媒体社の双方からうまく情報を引き出し、双方にとって有益な未来を創りだすことができれば、それはメディア担当の付加価値となる。 ある素敵なブログに書かれた一文です。広告代理店におけるメディア担当を指して「最後まで裏切ることのない二重スパイ」と表現しています。ですが、この表現は多くの仕事に当てはまるような気がします。

          絶対に裏切らない二重スパイ

          初詣に見る日本的寛容性

          年が明け、平成31年を迎えました。移り行く時代の中で正月らしさは少しずつ失われてきているように感じられますが、それでもなお多くの人たちが初詣に出かけ、1年の幸運を祈願し、おみくじで運勢を占います。神社には多くの出店が立ち並び、初詣の景色に彩りを添えます。日本人は皆幼いころに親に連れられてお参りに来たからでしょうか、神社の出店を見ると年をとっても懐かしい気持ちになります。思わず買い食いをしてしまう人も多いことでしょう。 幕末に日本に訪れたドイツ人考古学者シュリーマンは、寺社に

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          社会派バラエティー番組にすら垣間見ることのできる「日本らしさ」

          テレビ朝日系列で放映された「池上彰と振り返る平成30年」という番組を見ました。高校生のときに平成を迎え、バブル景気の真っ最中に大学生活を送り、社会人として平成不況の荒波を経験してきた者として、平成の30年間での日本の変化には感じる部分も大きく、楽しく番組を見ることができました。 ところで、こんな番組のなかにも、「日本らしさ」を発見することができます。世の中の変化のすべてが、日本国内だけの文脈で語られていたという点です。飛行機の中でも吸えていたタバコが、今や路上や飲食店でもど

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          台風の被害、風評の被害

          台風21号の影響はまだ続いています。関空は運航を再開したものの、便数はまだ通常時の2割以下。いつもはインバウンド観光客で賑わうミナミの町も人出は半減しています。 こうした中、大阪府の松井知事が万博招致のために欧州歴訪に出発しました。皮肉なことに関空ではなく中部国際空港から飛び立った松井知事は、台風による風評が招致に悪影響を与えないよう意識しなければならないことでしょう。6月の地震の際もそうでしたが、メディアは最もセンセーショナルな映像を選んで報道するため、外部から見るとあた

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          TUBA -大企業によるベンチャー活用のひとつのモデル

          フランスリヨンにTUBAというオーガナイゼーションがあります。リヨン市が音頭を取り、ヴェオリア・ウォーターなどのリヨンに拠点を置く大企業が出資することで作られた組織です。リヨンという都市の未来像をデザインすることをミッションとしています。 TUBAは、市の中心部でシェアオフィスを運営しています。このインキュベーション施設が特徴的なのは、TUBAの母体となっている大企業が自身の保有する膨大なデータをここで働くベンチャーに開放していることです。たとえば世界有数の水メジャーである

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          歴史に学ぶ裕福さの落とし穴

          農業生産性を農民1人あたり何人分の農作物を生産できるかで示す方法があります。農民1人で2人分生産できるのであれば2、10人分生産できるのであれば10と表示します。その逆数が農民の人口比率になります。たとえば、生産性が2であれば2分の1つまり人口の50%が農民、生産性が10であれば10分の1つまり人口の10%が農民だということです。この値を1から引くと、農民以外の人口(非農人口)の比率を求めることができます。 農耕社会は、灌漑しやすく平坦な河川沿いの谷間で始まります。農耕によ

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          共存と同化 -プラハの町から国際化を考える

          プラハは、ヨーロッパでも有数の国際観光都市です。ヨーロッパはもちろん遠くアジア、アメリカから、年間650万人もの観光客が押し寄せます。小さなプラハの町は、いつも世界中からの観光客であふれかえっています。 9世紀のプラハ築城とともに本格的な都市建設が始まったこの町は、14世紀に神聖ローマ帝国の首都になったことでヨーロッパ随一の大都市へと発展しました。大きな戦禍に巻き込まれなかったこともあって、プラハには今でも伝統的な建築物が当時のまま立ち並んでいます。異なる時代の建築物が現存

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          巨大化した組織における個人の物語 -ロイズにて

          ロイズに来ています。ロイズは、言わずと知れたロンドンの世界的な保険市場です。けれど、一般的な保険会社とは異なる形態をしているため、ロイズのことを正確に理解している人は少ないかもしれません。 ロイズは、保険の引き受け手(アンダーライター)と保険仲介業者(ブローカー)の集まる場を指します。保険事故のリスクを引き受ける(=保険事故が起きたら保険金を支払う)のがアンダーライターで、ブローカーは、アンダーライターと保険加入者との間に入って保険の設計を行います。一般の保険会社が定型の保

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          グローバル化時代におけるガラパゴスの強み

          ヨーロッパ出張の乗り継ぎで、イスタンブール空港に来ています。 イスタンブールには、20数年前に来たことがあります。当時のトルコ人はまだムスリム色の強い装束で、古くて田舎くさかったターミナルの中は、空気が白く濁るほどタバコの煙が充満していたことを思い出します。今ではターミナルでタバコを吸う人はいません。ビシャブを着けている女性も少なくなりました。中国人、韓国人など、以前はいなかった多くのアジア人もこの空港で飛行機を待っています。ローカルな装束に身を包んた多くのトルコ人と、その

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