学び直しに必要なのは、描いている人生を生きられる「希望」のある社会

今、巷で話題になっている、産休・育休中のリスキリングの件。

黙っちゃいられないなと思い、言葉を綴ってみる。結構まだ未整理な面もあるので、不完全さをお許しいただき、読んでいただけたら幸いです。

考える出発点はなによりもこれは「自分ごと」であった。

わたしは2018年9月に博士課程に入学し、2020年6月に妊娠がわかった。だからといって、博士課程をやめることもないし、現場も担うプレイングマネージャー的な動きをする経営者であることも変わりなく続けた。

経営者なので、制度的に「産休・育休」があるわけではないが、産休的な時間はあったのか?と振り返ってカレンダーを見直すと、2/26(金)に息子が生まれるが、その週の頭、2/22(月)にクラファンを達成している。(出産予定日は3/5だった)ゆえに、事後処理的なことには追われていたと思う。記憶ははっきりいって、ない。なんなら、あかんやろうけれど、産後、助産院にいるあいだも、どうしても送らないといけないメールを携帯で送った記憶はある。(たぶん、さすがにPCは持ちこまなかった)

3月はさすがに、産後、産褥期は養生が大事なことを産後ケアやってきた友人たちがたくさん教えてくれていたし、なにより助産院で産んでいたので、そのあたりは、かなり気をつけた。コロナ下にも関わらず、多くの友人たち、ドゥーラさんにも支えられた。

でも、4月にはすでに仕事をしていた記憶はある。

大学院は休学を1年とったが、復帰は9月だったので、実質的には産後1年経たずしてのことだった。

さて、わたしの場合、首相が想定しているような人ではないかもしれないが、確実に、産後にリスキリングしていたのは間違いない。学び直し、という言葉はなんだかぴったりとはこないが、学業に励んでいたし、博士レベルの議論ができることを目指してアカデミックスキルを養うことに日々苦闘していた。

それがどれだけ大変だったか、ということをここでつらつら書きたいわけではないが、でもやっぱり、本当に、本当にしんどかった。(現在進行でもある)。
指導教官からもやめるかどうかを迫られることは多々あった。それがまた辛かった。でも、幸いなことに、4ヶ月から保育園にいって、馴染んでくれた息子の存在や、連れ合いとその家族の支えは大きかったと思う。
それでも、夜は起きていられない。子を寝かしつけていたら、気づけば寝てしまうし、睡眠が授乳で何度も中断されるうちは、とにかくずっと睡眠不足(今も若干そうである)。日中は脳が、子を授かる前の状態の1/3も機能していない。

そんな状態であっても、あきらめないで、その学びにチャレンジし続けられるのは、その先にどうしても目指していること、実現したいことがあるからだ。

わたしが、出産の際に、大変お世話になった松が丘助産院の宗先生も、乳飲み子抱えながら、助産師をめざし「学び直し」に大学へ通った話を以前聞かせてくれた。「トイレで授乳をしていたから、壁に飛び散ったお乳の跡が残ってたりして笑」なんて冗談で笑っていた。

そんな苦労も経て、今の松が丘助産院があり、そこで多くのお母さんたちが、どれだけ助けてもらってきただろうか。(勝手ながらの想像だが)宗先生ががんばってその時、産後でも学ぶことを選んだのは、きっと、それだけの想いがあったからだろうと思うし、それはやっぱり今に通じていると思う。

さて、本題の産休・育休中のリスキリングに話を重ねていくと、過酷な産後にそれでも学ぼうと思えるのは、それだけのモチベーション、想いがないとできない。「お金をもっと稼げるようになるために」ももちろんその源泉になるかもしれないが、自分の人生で子育て以外に、自分のやりたいこと、実現したいことを描いたり、それが実現しやすい社会だと感じられることが重要ではないか。もちろん「子育てだけに専念する」という生き方を選ぶ人も尊重されてほしい。社会の中で、子を産めば自分の望むキャリアをあきらめなければいけない女性や、育休をとったら会社での扱いが変わってしまうような男性がいるのは悲しい。描いている人生を生きられる「希望」のようなものを感じられる社会であってほしいし、そのような社会になるように、自分は貢献していきたい。

イギリスの大学のキャンパスにいると、ベビーカーを押しながら歩いている女性や、結構な年配の学生がいたり、本当に多様な人がいる。「みんな同じタイミング」で入学しなくたっていいと思えること。「学び直し」がいつでも可能な、空気感、文化、価値観は、制度だけではつくれないので、このあたりを醸成していくことが本当に大事なことだと思う。
そして制度は、学び直しの経済的支援にはじまって、大学内に保育施設、おむつ替えコーナーや、授乳室を設けるとか、イギリスだと院生でもmaternity leaveといって、産前産後に休める制度がある。

だから、自分は、子どもも、家族の生活も、仕事も、研究(学び)もあきらめないでいようと思う。背中を見せられるように。
学部卒業に9年かかったけれど、それでも、今がある。時間かかっていいし、一回あきらめて、まだ戻ってきたっていいし、学びは、いつだって、わたしたちを歓迎している。そんな風に想いたい。

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