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Re:Ronカフェ

Re:Ronカフェ「能力社会」をあるく

2月18日(日)、朝日新聞の読者イベントに参加してきました。

Re:Ronカフェは今回が初回で、面白い内容盛りだくさんでした。
勅使川原真衣さん(組織開発コンサルタント)、松本紹圭さん(産業僧)のお二方がパネリストで、2部構成で行われました。
「能力主義」だけでなく、「リスキリング」「Social Well-Being」「Time Management」等、新たな用語がどんどん出てきては、私たちはそれらに振り回されて誰も幸せになっていない。下手すると、みんなで自分達の首を絞めているのでは、という問題提起から始まったのが今回のセッションでした。

第1部のトークショーはもちろん、第2部のみんなで車座になって本当に対話し合うのが、すごく面白くて充実していました。私も参加者の一人として色々発言しました。そうした対話、議論の中で思った事を書いていきます。

「主体性」って?

パネリストの勅使川原さんが第2部の最初に発した疑問ですが、これは思いっきり共感できます。
「社員に主体性のある取り組みを」等とのたまう企業経営者は多いと思いますが、これはほぼ権力者に都合の良い「主体性」に過ぎないと思っています。もしかすると某国の「主体思想」を起源としているのではないか、という疑念を持たざるを得ないわけです。
私も前職では色々な改善アイデアを出したりしました。しかし、実際は一人何件以上というノルマが課せられた挙句、大半は却下されていました。おまけに当時の上司は「実施したものを出して点数を稼ぐ」方針でしたので、設備を無駄にいじって「改善事例」として会社に報告するという酷いものに矮小化されていました。従業員が経営層の意向を読み取って先読みして動く事を、「主体性」と言っているに過ぎなかったのです。

おかしな「リスキリング」

「リスキリング≒学び直し」もテーマに上がりました。これ自体を否定するわけではありません。何歳になっても新しい事を学ぶのは大事です。
ですが、今の日本のリスキリングは本来とは違った方向に暴走している様に見えてしまいます。本来の"Re-Skilling"は、企業が新しい技術や仕組みに対応できる様に、企業の責任で社員に学ぶ機会を提供するというもののはずです。ところが、日本ではリストラを前提として、自己責任で学べという全く違うものになっているわけです。
私も前職では製造現場で働いていて、班長(製造現場を指揮するポジション)登用試験を受けるために会社指定の通信教育を受けた事があります。これを修了しないと課題レポートに進めないためでしたが、これも自腹だったわけです。ただ、3年連続で早期退職という名のリストラが行われ、昇級試験自体が凍結されてしまいました。
自発的に学ぶ事は良いのですが、自己負担の通信教育を半ば強制させてそれはないだろうという失望の方が多くて、結果的には早期退職して転職する道を選びました。本当に「何なんだよ!?」でした。

少し脱線しますが、日本には「経営大学院」がやたら乱立していませんか?もちろんビジネスを理論から学んで、実践力を高めていく事は良い事です。ただ、一応修士号を持っている身からすると、修士論文がなく講義とペーパーテストの点数だけで修士号(MBA?)は、学位の価値を下げているとしか思えないのです。ここは悩ましいですね。

無理ゲーを強いられる

ちょっと昔の話になりますが、「イクメン」という言葉が出た時代がありましたね。議論の流れの中で私が発言したのですが、私も父親ですので、子育てをするのは自然な事だと思っています。(離婚した今は、それができないのが辛い)ところが、「イクメン」が暴走し始めて、「仕事も家事も、学校行事も成果を出せ」という無理ゲーを要求する風潮が出てきてしまいました。非常に残念だと思います。性別関係なく、みんな仕事をしながら子育ても一生懸命やっているのですよ。しかし、現実はあれもこれもは出来ないのです。そんなスーパーマンみたいな人はどこにいるんですか?
更にこの流れで、別な方から「Time-Management」への疑問が出てきました。恐らく「働き方改革」の中で新たに出てきた用語で、「スケジュール管理をして、仕事と私生活のバランスを取りましょう。」という様な意味合いなんでしょうけれど、これは相当無理があると思いますよ。そもそも仕事を定時で上がれている方は果たしてどのぐらいいるんでしょうか?もちろんある程度まとまった睡眠時間は取りたいし、できれば就寝時間をあまり遅くはしたくないのです。ただ、個人の努力だけでは難しいのは現実で、形だけの「働き方改革」ではなくて、仕事が定時内で完結できる仕組みを企業の責任で取り組んでもらいたい、そうじゃなきゃ厳しいと思います。

参加された方がそれぞれに悩みを抱えてきて、それに基づいた発言をされていましたので、議論が充実しているのはもとより、発言一つ一つに深みがありました。
時間はあっという間に過ぎていき、本当は延長戦をやりたいぐらい濃密なセッションでした。Re:Ronカフェは今後も開催されるそうです。


朝日新聞読者ホール


第1部トークショー


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