夢は書店員と言った、女の子。
僕は広告業界に身を投じている。今、働き方が問題になっている業界だ。
僕はグラフィック(紙)の畑だけど、ときたま電波の仕事もやることがある。
そんなときは、映像制作会社の人と組んでやるわけだけど、
この「映像」という畑が、紙とは比べ物にならないほど忙しい。
徹夜は当たり前だし、家に一週間帰れないこともざらにある。
よくTVで、ADさんがデスクの椅子を並べて寝ている姿が流れるが
(それを流すのもコンプライアンス的にどうかと思うが)
その姿をイメージしてもらえればいい。
僕は、その映像制作会社の同年代の二人と仲がいい。
ひとりは1つ下の男の子。もう一人は5つ下の25歳の女の子。
その二人とこの間、飲みにいった。
会では、お互いのこれからの夢を語りあった。
僕は、30も過ぎて人生に迷っていた。
目標も夢もあるのだが、なにか「これだ!」という決定打に
欠けていて、具体的なアクションをおこせないでいた。
そんなとき、5つ下の女の子が、自分の夢について語り始めた。
「わたしは、結婚をして子どもが大きくなったら書店員として
パートをすると決めているんです」。
夢でも目標でもなく、それは決定事項だった。
その迷いのない口ぶりと、彼女の優しくも意思を感じる視線に
僕はなんだか自分のことが恥ずかしくなってしまったと同時に、
彼女の夢がとても羨ましくもあった。
売れたい、認められたい、評価されたいという人間ばかりの
この業界において、その子の素朴で優しい夢は、大げさでなく輝いていた。
「学生時代アルバイトしていた本屋の空気が好きだった」と彼女は言った。
ありのままの自分を認めてあげて、幸せを感じられればそれでいい。
夢に大きいも小さいもないし、
夢に人の意思や視線が入る余地なんてないはずなんだ。
その子の夢を聞いて、もっとピュアに夢と向き合って動きだそうと決めた。
誰がなんと言おうと、自分が喜ぶことをする。それだけだなのだ。
新たなコンテンツの制作のために大切に使わせていただきます。何に使ったかは、noteにてご報告させて頂きます。