見出し画像

『田中一村展 奄美の光 魂の絵画(東京都美術館)』

【内容】
日本の画壇とは一線を引いた活動で、独自の日本画を描いた田中一村の回顧展。

【感想】
田中一村展は、かねてより注目していた画家の大回顧展ということで、大変楽しみにしていました。会場には、初期の水彩画から晩年の大作まで、幅広い作品が展示されており、彼の芸術の軌跡をたどることができました。
特に印象的だったのは、初期作品に見られる瑞々しい色彩と、大胆な構図です。幼少期から絵画への才能を発揮していたことが伺えます。しかし、アカデミックな教育を受けていないという背景からか、人物や動物の描写には、やや未熟な部分も見られました。
中期の作品では、線が不安定になり、絵全体に緊張感が失われているように感じました。初期に見られたモダンな感覚が影を潜め、画家としての苦悩が垣間見えた作品も少なくありません。
しかし、晩年になると、彼の画風は大きく変貌を遂げます。奄美の自然を題材にした大胆な構図と、鮮やかな色彩は、見る者の心を捉え、独特の世界観を作り出していました。未完の作品も展示されていましたが、そこには、さらなる可能性が秘められているように感じました。
田中一村は、独学で絵画を追求した孤高の画家でした。その自由な表現は、時に稚拙に見えながらも、オリジナリティあふれる作品を生み出しました。
個人的には、南国のモチーフを描いたということもあり、アンリ・ルソーにも近しい印象を受けました。ルソーからの直接の影響はなかったのかも知れませんが…
展覧会を見て、もし彼がもっと長生きしていたら、どのような作品を描いたのだろうかという想像が膨らみました。彼の晩年の作品には、まだまだ成長の余地があったように感じました。

今回の展覧会で、田中一村の独創性とエネルギーにあふれた作風を観れて、とても良かったと感じました。

【追記】
歴史にイフは存在しませんが、仮に田中一村が68才で亡くなる数年前に会えるとしたら、自分ならどうするだろうと思ったりしました。
自分だったら、水彩画の巨匠アンドリュー・ワイエスと、当時はまだ日本でほとんど評価されていなかった伊藤若冲の画集を渡したいと思いました。
頑な人ながら、生前にこの2人の画家の作品を観ることが出来ていたら、その後、もっと凄い作品を実現出来ていのではないかなんて妄想をしたりしました。

https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_issontanaka.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?