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『起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(著: 大西 康之)

【内容】
リクルートを創業した江添浩正の生涯を追った伝記。


【感想】
こ、これは、スタートアップ版、『グレード・ギャツビー』じゃないか…
出てくるのが、日本の伝説的な財界人や、総理などの政治家、はては子会社で働いていたのは後にAmazonを創業する創業者ジョフ・ベゾス。
人材獲得に以上な執着を見せ、数々の事業を成功させた江添だったが、成功とコンプレックスで人格が壊れて、いつしか歯車が狂いだす。
江添のどんどんダークサイドに落ちていく様は、『白い巨塔』の財前教授や『スターウォーズ』のダースベイダー…
四六時中酒臭いなり、妻や物に当たり始め、政治家へと急激に接近し始め…戦後最大級の疑獄事件へと発展して行く。
Amazonや Googleがその後行い大成功したデータセンターやクラウドサービスをその10年以上前に、行おうしたいる矢先の江添の逮捕…

本の冒頭、圧倒的な世界企業となったAmazonを創業したジョフ・ベゾスも、当時名もない会社だったファイテルも江添の買収した会社で働いていた。
そして、著者は語り始める…
江添が疑獄で葬られなければ、Amazonよりも遥かに前に、今のクラウドコンピューティングにあたる事業を始めており、日本は今のような経済的な失墜に至らなかったのではないか。
日本の失われた30年は、江添の逮捕から始まったとの著者の見解から、物語は語られていく。
江添が捕まったそもそものリクルートコスモスの未公開株の譲渡は、日本では以前から常習的に行われていたことであり、江添だけが狙い撃ちされて捕まり、そこから日本の起業家は萎縮し新たなユニコーン企業を産み出さなくなったのだと…
議論の余地のある話だとも感じつつも、知らなかった事実や、江添浩正という人物の先見性と行動力に、引き寄せられるように様々な才能。
筆が乗っている…熱の籠った矢継ぎ早な語り口で、次々に創業当時から優れた才能を持った人材を登用、活用。そこには、後の様々な著名人やスタートアップの社長、東大の教授、立花隆を始めとした著述家が在籍していた。
また、仕事した企業もダイエーやトヨタ、ソニーなど日本を代表する企業ばかり…

これはタブーなしにドラマ化、Netflixあたりでドラマ化したら、『全裸監督』クラスの面白く作品になるのではないか。というか、アマプラでドラマ化することで、この流れを一巡(?)させられるのでは、なんて思ったりしました。

この本の中でも度々触れられる江添は、経済界を代表とする旧態依然とした日本の体制に、嫉妬され抹殺されたという話を目に触れたことがあり、ずっと気になっていた人物でした。
この本を読んで、そういう面もありなあと思ったりもしました。
あと、なにより江添浩正をこんな切り取り方をしたことがあるのを読んだことがなかったので、とても興味深く読めました。


個人的には、リクルートというと1964年の東京オリンピックのロゴやポスターのデザイナーとして有名な亀倉雄策がリクルートから出版していた『Creation』というデザイナーやイラストレーターを扱った雑誌を編集していて、未だに手元にあるのですが…
その背景に、こんな歴史があったということに、驚きともなんとも言えない感覚が残ったノンフィクションでした。

https://str.toyokeizai.net/books/9784492062166/

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