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質問034:ボールが大きく見える方法は?

昔はよく野球の世界などで、ボールが止まって見えたとか、
大きく見えたとかいう話を聞きました。
テニスでボールが大きく見える方法などありませんか?

回答


▶「St.のドット」に目のピントを合わせる

 
例えば机の上にテニスボールを置き、目から前方30センチくらいのところに用意します。
 
当たり前ですけど、普通に見るだけだと、普通の大きさです。
 
その背景にある机の表面や、周りのペンやPCのマウスなども、ボールと一緒に視界に入っている状態。
 
つまりボールは「背景の一部」です。
 
では次にボールの「印字の一文字」などの、細かな対象(例えばダンロップのセントジェームスであればSt.のドット)に、目の焦点を合わせてみてください。
 
すると、先ほどは普通に見えていたテニスボールとは、見え方が変わってくるのが感じられないでしょうか?
 
ドットの中の「毛羽のかたまり」が見え出したりします。
 
今度はそのかたまりの中の「1本」が見えてきます。
 
目のピントが、ピッタリ合ったり、たまにモヤッとなったりしながらも、べたっとした平面ではなく毛羽の立体感が見て取れたり、色鮮やかに感じられたりすると思います。
 
集中力は細部に宿るのです。
  

▶これが「ボールに集中」している状態

 
そしてこの時、何も頭の中で考え事ができなかったはずです。
 
これがボールに集中している状態
 
あるいはボールの実サイズは変わらないとしても、こちらで実験したとおり、メラメラとフレアが浮かび上がって、「全体として大きく映る」という見え方もあります。
 

▶「存在感」が大きく感じられる

 
先ほどは「背景の一部」としてペンやマウスも一緒に見えていたのに、今度は「毛羽の1本」だけが中心視野にあり、相対的にボール全体は大きく感じられます。
 
存在感が大きく感じられるとは、「大きく見えている」と言い換えられる話を次にします。
 
背景は、目の隅の周辺視野に映るとしても、もはやペンもマウスも、ハッキリとは見えません。
 

▶テニスで大事なのは「感じ方」

 
物理的なサイズの見え方としては同じだとしても、存在感は大きく感じられる。
 
また、スピードとスピード感が違うように、サイズとサイズ感も違います
 
そしてテニスを上手くプレーするうえで大事なのは、「感じ方」なのです。
 
実際のスピードが速くても、飛んで来るボールが遅く感じられれば、テニスは簡単になります
 
「そんなことがあるのか?」といぶかる向きもあるかもしれませんけれども、私たちは日常生活でも普通に感じています。
 

▶「並走するトラック」の荷台に乗る

 
たとえば同じ1時間でも、楽しい時はあっという間なのに対し、退屈な時はひどく長く感じたりしないでしょうか?
 
いつも申し上げていますが集中している時というのは、楽しかったり充実感を覚えたりします。
 
そういう時間は、自分のなかではアッという間に感じられるから、相対的に物理的な外の世界は遅く感じます
 
つまり、自分が速いと、周りはゆっくり。
 
これは例えるなら、自分が時速100キロメートルで走るトラックの荷台に乗っていると、並走している時速100キロメートルで走行しているトラックが、まるで止まっていたり、ゆっくりに見えたりするのと同じです。
 
とはいえ並走しているトラックも、本当は止まっているわけではなく、ゆっくり走っているわけでもなく、時速100キロメートルで走行しているというのが実際です。
 

▶対戦相手に「速く感じさせる方法」

 スピードとスピード感について別の観点からもうひと話題。
 
速いボールを打てなくても、相手に速く感じさせればいいのです。
 
そのひとつの手段が、いわゆる「チェンジ・オブ・ペース」ですね。
 
緩急にもバリエーションがあって、「緩緩急・緩・急急・緩急」などを混ぜると、対戦相手のスピード感(イメージ)を撹乱して、打球タイミングを外すミスを誘えたりします。
  

▶「サイズ感の変化」に気づく

 
サイズに話を戻すと、実際テニスコートでも、集中力が高まるとボールのサイズを大きく感じたり、ボールの速度がゆっくりに感じたりし始めます。
 
特にサイズは遠近法に従い、ボールが相手コート側にあるうちは小さくても、自コート側に迫ってくると大きく膨れ上がって来ます
 
例えば、目の前に立てた人差し指の指紋を見ながら、人差し指を近づけたり遠ざけたりすると、指のサイズの変化が見て取れるでしょう。
 
また指紋に目のピントがぴったり合っていると、背景はぐらぐら揺れると思います。
 
ですからこの見方に慣れていないうちは「プレー酔い」するのですけれども、それは望ましい兆候です。
 

▶ボールが「止まって見えた」

 
仰せの野球の話でも、ボールが大きく見えたり、ゆっくりに見えたり、止まって見えたりというエピソードも、物理的にボールが大きくなったり、ゆっくりになったり、止まったりしたからでは、もちろんありません。
 
打撃の神様と称された川上哲治による「ボールが止まって見えた」という有名なエピソードについて、こちらでご紹介しています。
 
そのように「感じられる」というのが、ラクにプレーするうえでは大事
 

▶「普通の見方」と全然違う

 
散歩中、1輪の花の花弁に、目のピントをフォーカスしてみてください。
 
さらにより細かく、模様などの一点だけに集中します。
 
すると、その花がよりくっきりと鮮明に見えたり、明るく映ったり、平面ではなく立体感が見て取れたりするはずです。
 
いずれにしても「普通の見方」と、目の焦点を対象の細部に絞った「新しい見方」とでは、まったく違うはずです。
 
大げさでも何でもなく、「違う世界」が見えてくるはずです。

思考に支配された実態のない「バーチャルな世界」ではなく、感覚で感じる「リアルな世界」。
 
その時こそ、私たちは「今」を生きていて、楽しくなり、充実するのです

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