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理性のラストワンマイル 〜合理的判断を妨げるもの〜

 「思い込みが誤った意思決定を招くことがある」という意見に反対する人はあまりいないですが「あなたの思い込みが誤った意思決定を招くことがある」という意見に賛成する人もあまりいません。

 私自身もバリバリ心当たりあるんですが、たいがい人間は「自分だけは違う」と思ってしまうんですよね。

 状況に適応した合理的判断を行うためには、自分というラストワンマイルを乗り越える必要があるのです。

過去の成功体験には要注意

 ラストワンマイルの罠に嵌りやすいのは、過去の成功体験がある人たちです。「感・経験・度胸」タイプの人がこれにはまる典型と言われてますが、ビジネス環境、社会環境が大きく変わる昨今、熟練の経営者、経営幹部もこの罠にはまる可能性が十分にあります。

 「感・経験・度胸」タイプの人が、過去の自分の成功経験自体に固執してこの状態に陥るのに対し、熟練の経営者、経営幹部は過去の自分の成功経験を生んだ環境に固執してこの状態に陥ります。

 この罠に嵌らないためには下記2点が非常に重要です。

自分が成功体験に固執する可能性があることを自覚する
第三者からのフィードバックを受けれる状態を作る

 心のどこかで「自分は大丈夫」と思っている人ほど危険です、常に謙虚で客観的な姿勢を持つことが大切です。

 その自覚を持つためには、第三者からのフィードバックを受けることが非常に大切です。自分の組織(会社、団体など)に属さない第三者の、客観的な視点からのフィードバックを得ることができる環境を作っておきましょう。

組織内でのフィードバック、利害関係を共有する立場の人からのフィードバックは時に「みんなで仲良くデスマーチ」となる可能性があります。第三者の客観的な視点が重要な理由です。

3つの環境の変化に備えよう

 状況に応じた適切な対応をするためには、下記の3つの環境の変化に常に注意しておく必要があります。

自社環境の変化 :  社長が会社立ち上げた時と今は違うんですよ
ビジネス環境の変化 : その戦略が通用した時代は終わってるんですよ
社会環境の変化 : 社会が求めるものが変わってきてるんですよ

 以下、3つの環境の変化に気づくアンテナを持つためのポイントと推薦書籍をご紹介します。

自社環境の変化 :  社長が会社立ち上げた時と今は違うんですよ

 人間誰でも合理的じゃなくなることがあります。そこまでワンマンで会社を引っ張ってきた社長の場合、強烈な成功体験がその引き金になる可能性があります。それに気づくためには「人間はどんな時に、どんなふうに非合理になる可能性があるのか」をあらかじめ知っておくことが重要です。

 そこで推薦するのはノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの本です。従来の経済学は合理的人間をモデルの前提としていましたが、カーネマンはそこに「人間は常に合理的とは限らない」という視点を持ち込み、そこから行動経済学という分野が生まれました。

 本書は人間が非合理に陥り安い状況と症状を、とても分かりやすく解説しています。

ビジネス環境の変化 : その戦略が通用した時代は終わってるんですよ

 ビジネスで成果を上げてきた熟練の経営者、経営幹部もつまずくことがあります。業界を取り巻くビジネス環境が変わり、従来の王道戦略が通じなくなっているのに気づかない場合です。これに気づくためにはこれまであまたの業界で繰り返されてきた栄枯盛衰の歴史を知ることが重要です。

 そこで推薦するのが本書です。様々な事例を交えて、業界を取り巻くビジネス環境の変化と共に、新たなモデルへの移行が必要となっているのに、従来型のビジネスモデルを踏襲して転落していった企業そこで生まれた新たなリーダー企業についての考察が展開されます。

 上記書籍「イノベーションのジレンマ」を経済学的観点で説明した下記の書籍も併せて読むと一層理解が深まります。

社会環境の変化 : 社会が求めるものが変わってきてるんですよ

 我々が生活している社会基盤も緩やかに変化を遂げていきます。その変化は非常に緩やかなので、不変のものとして捉えても問題無い時代もありますが、大きなうねりを見せる時代もあります。

 今は従来型の経済・社会制度の制度疲労が生じ、それを修正し持続可能な未来を作る活動としてSDGsにフォーカスがあたっています。いわば今は社会環境が大きなうねりを生じようとしている時代なのです。

 そんな時代、社会制度の変化に対する知見を得ておくために推薦するのがこの本です。著者はノーベル経済学賞を受賞したダグラス・ノース、制度派経済学の泰斗です。

 大きな変換点に差し掛かりつつある現代、本書の「経済変化の本質は何か?」「制度はどう進化するのか?」「何が成長と衰退を分けるのか?」に関する考察は、私たちにその変換点との向き合い方を示唆してくれます。

変化に対応する者が生き残る

生き残るためには周りの環境に応じた合理的判断が大切です。

プールでは泳ぐ、陸では走る
爆弾スイッチは慎重に、パーゲンでは積極的に
2019.11.29  鳥谷健史

Photo by Donald Giannatti on Unsplash



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