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敵は内にあり。白人至上主義が誕生するまで

新約聖書に登場する使徒パウロは、私たち一人ひとりの内面には戦いがあるという事実を認識していました。すべての信者は、戦わなければならない "内なる敵 "を持っています。この肉と御霊との生涯をかけた戦いは、私たちが死ぬまで続きます。

20. もし、わたしが望まないことをしているとすれば、それをしているのは、もはやわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのです。
21. それで、善をなそうと思う自分には、いつも悪が付きまとっているという法則に気づきます。

ローマの信徒への手紙 7

イエスもまた、別の言葉で内なる敵について語りました。ゲッセマネで眠りこける弟子たちに向かって、イエスは祈るように諭し、彼らが祈らなければならない理由を述べました: 「霊は喜んでいるが、肉は弱い」(マルコ14:38)。この地上にいる限り、私たちは肉的で利己的な性質に縛られているのだ。私たちがすべきことをさせないようにするのは、内なる敵なのです。

あなたがたは、心から出るものによって汚されている、つまり内面から出るものによって汚されている」(マルコ7:15)。

性的不品行、不品行、放蕩、偶像礼拝、魔術、憎しみ、不和、嫉妬、激怒、利己的な野心、不和、派閥、ねたみ、泥酔、乱痴気騒ぎなどである。
「このような生き方をする者は、神の国を受け継ぐことはできません」(ガラテヤ5:19-21)。


いきなり精神論かよ🙄ってところですが、イエス・キリストユダヤ人でした。ユダヤ人は神の言葉が委ねられているという点で優れていると聖書には記されていますが、そのユダヤ人であるイエスは異教徒のみならず自身と同じ血が流れているユダヤ人も含めた人間の内にある敵を最も否定しました。弟子たちもその意志を引継ぎます。

ローマの信徒への手紙 7 | 新共同訳 聖書 | YouVersion | 聖書アプリ | Bible.com

神の言葉に従順であり、神との契約の中で選ばれた民だったはずが、新約聖書によって人間の言葉によって改心が求められるようになった。その理由は、近年明らかになってきているユダヤ人に焦点を当てると見えてきます。

英ユ同祖論

日本人とユダヤ人が同祖である日ユ同祖論は最近よく聞くようになりましたが、イギリス人ユダヤ人とが共通の祖先を持つとされる「英ユ同祖論」というのもあります。最初の提唱者は、リチャード・ブラザーズ(18世紀)が元祖とされます。イギリス人やその他のヨーロッパ人の中に隠されたイスラエル人が存在し、彼らの生物学的なユダヤ人の先祖であることに気づいていないとのこと。この考え方は、イギリスで発祥し、その後、アメリカへと広がりました。

リチャード・ブラザーズ

1757年12月25日ブラザーズはカナダのニューファンドランド・ラブラドール州で駐在していたイギリス兵の子どもとして生まれたましたが、少年時代にイギリスに渡り、14歳の時に英国海軍の中等兵として入隊しました。ですので、彼の国籍はカナダです。1783年には中尉の地位に就きましたが、アメリカ独立戦争が終結したため、同年末に除隊します。

その後、ブラザーズ中尉は、大陸戦争のさなかにカナダから(小休止中の海軍士官として)ロンドンへ移住しました。

1789年、ブラザーズは下宿しながら、神から大きな目的を託されたと信じるようになり、予言を開始。彼は、フランスのルイ16世とスウェーデンのグスタフ3世の死を正確に予言しました。ルイ16世グスタフ3世の両君主は臣下の手によって非業の死を遂げたのです。

彼らの霊的活動の勢いは増し、1794年の終わりには、ブラザーズはさらなる予言を発表し始めていました。隠れユダヤ人がヨーロッパ中に住んでおり、自分自身がダビデ王の子孫であると主張。これに基づき、ブラザーズは自分がヘブライ人の王子であることを明らかにし、1795年11月19日に地球の支配者であることを宣言すると予言しました。散らされたヘブライ人はパレスチナに連れ戻され、神殿の再建は1798年に始まるだろうと。しかし、ブラザーはまた、世界の支配者として啓示を受け、イギリスのジョージ3世が王冠を彼に譲るとまで言い出しました。

ここまでくるとトンデモ発言の域に・・・😀😀😀

その頃、ルイ16世が処刑されたことで、ジョージ3世の王位は確かに怪しく、イギリス諸島のさまざまな派閥はフランス革命と共和主義に同調していたのもあり、国内は緊迫状態でした。そのため、当局はブラザーズを逮捕して精神病院にぶち込みます😀

なんともお粗末様に聞こえますが、それでも10年以上も監禁状態の中、彼らは予言を続けたことで、かなり多くの支持者を集めたそうです。それもそのはず、この思想はモルモン教に影響し、アングロ・サクソン的な白人至上主義まで発展します。

せっかくなので、ここで彼の予言を見ていこうと思います👀

戦争批判

長引くウクライナ情勢で戦争に対して嫌悪感が抱かれつつある現代の世の中のようにブラザーズもまた戦争に嫌悪感を感じ始めることで元祖白人至上主義である彼の思想が確立されるようになります。驚くべきことに近年下記の記事のように過激派で知られるようになった白人至上主義戦争批判からはじまっていたのです。

【TVに映るウクライナ避難民はなぜ白人だけか――戦争の陰にある人種差別】
ウクライナで人道危機に直面しているのは白人ばかりではなく、むしろ有色人種ほど危険にさらされやすい。

【ウクライナにおける「ネオナチ(白人至上主義)問題」】
2018年12月31日、米国でのユダヤ系最大紙である「フォーワード」は、米国生まれのウクライナの閣僚が暴力的なネオナチ活動家(白人至上主義)のグループの奉仕に感謝し、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領約1200人のネオナチ(白人至上主義者)と友人たちで、2日間のヒトラー敬礼祭(ナチス式敬礼祭)を開催していたと報道した[6]。また、暴力的な極右グループはウクライナで何年も活動しており、それらは政治的重要性だけでなく攻撃性も増しているとした。



ブラザーズがカナダから移住した後のイギリス海軍としての生活は楽しいものではありませんでした。彼はその経験から、戦争や神を冒涜すること、特に軍事的成功のためのキリスト教の祈りや、軍事的忠誠のための強制的な神聖な誓いに対して強い嫌悪感を抱くようになりました。彼の言葉は、国家とキリスト教との間の矛盾を言及することからはじまります。

では、キリスト教を公言する人が世界で最も多く、知識も世界で最も啓蒙されているヨーロッパの人々が、公の法律や礼拝の形式によってそれに反対するよう指示されているのに、どうして神に向かって「みこころが地にも行われますように」と真剣に言うことができるのだろうか。

国の法律が意図せずにキリストに反対するように作られているとはいえ、人々の祈りのどれもがそうならないように注意することは、人々に課せられた義務である。

そうして、ローマを霊的な意味でのバビロンとし、この大きな陰謀の真犯人をだいたんにもローマ教皇であると指摘します。ブラザーズは黙示録に記されている全人類を惑わした竜の特徴である『七つの頭と十本の角』という言葉を使って痛烈に批判します。

七つの頭と十本の角を持ち、冒涜の名に満ちている緋色の獣は、教皇を意味する--この章においてのみ、黙示録の他のどの部分においても、教皇はいかなる名でも、いかなる意味でも言及されていない。
ローマもまた、第16章と第19節の中ほどという1つの部分にしか出てこない。教皇は、その多くの冒涜的な名前に加えて、同様に神の権限と特権を仮定し、祝福された救世主の代わりに自らを教会の最高首長と呼んでいる。
無知な者を欺き、無謬であり、他人の罪を赦すふりをしている。
また、あたかも聖霊によって聖別され、その力強い祝福と力強い霊魂を好きな者に自由に与えるよう神から直ちに命じられたかのように、司教と呼ばれる者を叙階し、彼らに手を置き、同時に聖霊を受けると言う。同様に、彼は、その人格における聖性の卓越性と、その行動におけるキリストへの従順を、他のすべての人間よりも優位であると主張する。

この七人の王とは、七人の強力な軍事教皇を意味する。
彼らが王と呼ばれるのは、彼らが戦争好きであり、他の点でも彼らのように剣で統治していたからである。

教皇が戦争に関与しているという内容は、情報通の方ならこの発言が的を得ていないわけではないことはお気づきかと思います。

【ナチスの残虐行為に関する教皇ピウス宛書簡が発見される】
ナチス時代におけるローマ教皇ピウス12世の役割に関する議論が続いている。新たに発見された書簡は、教皇がユダヤ人とポーランド人の絶滅について知っていたことを示唆している。

【ユダヤ人虐殺、早期に把握か ローマ教皇「黙認」で新資料】

なぜかブラザーズはローマ教皇庁聖職者の結婚を認めていない点まで言及。女性と別居している男性の方が、夫であり父親である男性よりも、神により受け入れられ、司祭の務めを果たすのにふさわしいという教義を、真の信仰から大きく逸脱し、堕落していると指摘しています。

ブラザーズが案じていたように禁忌が招いた結果だからでしょうか?相次ぐ法王と聖職者のスキャンダルは止まることはありません。

【カトリック教会の性的虐待スキャンダル、法王はどうする バチカンで会議始まる】

ここまでくると、ブラザーズの予言にもちょっと聞く耳を持ってしまいますね。黙示録の十本の角は十人の王であるとし、王とは各国の枢機卿たちを意味するそうです。権力はないが彼らは偉大で独立せず、助言権威をもって教皇を援助していると言います。ブラザーズに関する簡易的な情報ではなかなかここまで説明されてはいません。
彼はまた、イギリスをイスラエルの失われた10部族と結びつけました。そして、ヤコブユダの子らに暴力をふるい続けてきた異教徒は神の復讐の裁きを受け滅びる終末論へ展開させます。


イスラエル人のほとんどはユダヤ人ではない


ブラザーズはじめ、その後の英ユ同祖論者たちの持論も含めますと、イスラエルの12部族は族長ヤコブ(後にイスラエルと名付けられるます)の12人の息子であるとしています。ヤコブは、ヨセフの部族に代わって、エフライムとマナセの子孫(ヨセフの二人の息子)をそのまま完全な部族の地位に昇格させました。 ヤラベアムとレハブアムの時代、12部族の間に分裂が起こり、ユダ、ベニヤミン、レビの一部の3部族がユダ王国を形成し、残りの10部族がイスラエル王国(サマリア)を形成しました。 したがって、彼らは「イスラエル人の大多数はユダヤ人ではない」と主張しています。


古代イギリス(ブリタニア)の後の侵略者であるスキタイ人、キンメリア人、ゴート人がこれらの失われた部族の代表であり、ジョン・ウィルソンは、イスラエル人の子孫には西ヨーロッパのすべてのゴート族が含まれると主張もあるようです。
(ちなみにヤギを英語読みするとgoat=ゴートとなります。偶然でしょうか?

ヘロドトスは、古代ペルシア人はスキタイ人全員をサカエと呼んでいたと記録しています。イサクからサカエに至る特定の語源の連鎖は、サクソン人 (「サクの息子」、つまりイサクの息子と解釈される) に続きます。
エフライム部族マナセ部族が現在のイギリスとアメリカ合衆国であると考えられているというものまであります。


誰が本当のユダヤ人なのかまで考えようとすると途方も暮れますが、ユダヤ人を忌み嫌っているユダヤ人がいるとしたら、史実の説明がつくものもあります。第二次世界大戦を振り返ってみます👀

ユダヤ人による反ユダヤ主義

●スターリン
ソビエト連邦の政治家であり最高指導だったスターリンはレーニンを継いだあと、ユダヤ人への大粛清を実施しました。
スターリンの権力体制への移行にともない、多数のユダヤ人が標的にされ、彼らは選挙権を失い、高等教育を受ける権利や医療を受ける権利、食料切符を受ける権利を失いました。共産党内部のユダヤ人支部は1930年にことごとく廃止。党指導部での権力抗争のなかで、スターリンとその支持者とは、ボルシェヴィキの中から着々とユダヤ的要素を除去し、意図的に反ユダヤ主義のスローガンを掲げました。

比較的高位の公職についているユダヤ人や、新経済政策の時期に蓄財した投機家や利得者の中にいた多くのユダヤ人に対して、底流として存在していた人びとの不信感が利用されました。貧困の正義が利用されたということですね。スターリニズムのテロ、すなわち1930年代の「粛清」の犠牲となって倒れたユダヤ人も数え切れなく、特に芸術や学問の分野からは多くの犠牲者が出たとされます。

 
そんな反ユダヤ主義に加担したスターリンは、グルジア人だとされていますが、ユダヤ人だったという説もあります。

その根拠の1つとして、彼の本名が挙げられます。彼の本名はヨシフ・ヴィサリオノヴィチ・ジュガシビリでしたが、「ジュガシビリ」とは「ジュウ(ユダヤ)の子孫」という意味です。彼はそれを嫌って、スターリン(鋼鉄の人)というあだ名を本当の名にしてしまいました。ユダヤ人を大粛清したにもかかわらず、スターリンの周りはユダヤ人が多かったと言われます。スターリンの長男ヤーコフの妻もユダヤ人娘スヴェトラーナの恋人も夫も共にユダヤ人(3人目の夫もユダヤ人)、自分自身の妻は側近のモロトフの妻(ユダヤ人)と親友でもあり、ユダヤの血の流れている孫たちもいました。その上、彼の侍医たちはユダヤ人ばかりでした。


ヨシフ・スターリン



スターリンとイスラエルの関係については、東京大学教授の鶴木眞氏は著書『真実のイスラエル』(同友館)の中で次のように述べています。

「イスラエル建国からほぼ25年の間イスラエルを支配したのは労働党を中心とした『社会主義』を標榜する政党の連合であった。だからスターリンは、建国当初のイスラエルに対して大きな期待を抱いていた。
第二次世界大戦が終了した時点での中近東は、イギリスやフランスやアメリカの影響がきわめて大きく、したがって社会主義を標榜し、ロシア系のユダヤ人が主流を占めていたイスラエルの出現は、スターリンをして社会主義の橋頭堡をこの地域に築くうえで期待できるものと感じさせた。スターリンは、第一次中東戦争に際してイスラエル支持に回ったばかりでなく、イスラエル国家の承認を世界に先駆けて行ったのであった。
しかし、その後イスラエルがアメリカ陣営に、主として経済援助を引き出す必要からくみするにいたり、反イスラエル=反シオニズムの厳しい態度をとったのである。」

 ここで思い出していただきたいのが、散らされたヘブライ人はパレスチナに連れ戻され、神殿の再建は1798年に始まるだろうという言葉を残していたリチャード・ブラザーズのセリフです。再建時期はあたってはいないようですが、ブラザーズのアングロサクソン主義(イギリス・イスラエル主義)反ユダヤ主義に加担していたスターリンのそれぞれの思想が意図する方向性が一致しています。

●カール・マルクス

かの有名な資本論を執筆して共産主義を唱えたカール・マルクス本人もまたユダヤ人でした。プロイセン王国時代のドイツの哲学者でもあり、経済学者、革命家でもあるマルクスは、社会主義に強い影響を与えました。
マルクスは、史的唯物論(唯物史観)として知られる批判的方法を以て、以前のどの階級社会とも同様に、資本主義が内部崩壊を引き起こし、新しいシステム(社会主義)へと変革されると予測して持論を展開させます。
彼は、直接の反ユダヤ主義だったわけではなさそうですが、反ユダヤ主義を積極的に実施した社会主義の柱となる経済理論を確立させました。

カール・マルクス

●アドルフ・ヒトラー
国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の指導者でもあったヒトラーは、実はユダヤ人だとささやかれていますが、個人的にはユダヤ人かもしれないで留めています。ヒトラーもまた白人至上主義の延長線上で誕生したアーリア民族を中心とした人種主義を掲げ、ユダヤ人などに対する組織的な大虐殺「ホロコースト」を引き起こしたことでよく知られています。
しかし、あれだけ子どもを含めたユダヤ人を大虐殺したヒトラーがユダヤ人の少女を抱き寄せているところを見るとなんだか意味深に見えてもきます🙄

ユダヤ系の少女と一緒にヒトラーが写った写真


と、リチャード・ブラザーズからだいぶ話がそれてしまいましたが、教皇の部分に関しては、真実を述べていたところは確かにあるようです。歴史の一部を切り取って解釈するなら正しいでしょう。しかし、正しいことを言ってはいるが、足りていない。例えば、教皇までの過程が述べられていません。ダビデまで触れているようですが、いきなりローマ教皇に飛んでいるところは、その一部に焦点を当てた切り取った解釈です。

どんなに残虐な指導者も真実を掲げることで大衆は惹きつけられるようですが、一部の真実で全てが正しいと理解されることで方向性が左右されます。つまり、人々には、白か黒か、善か悪か、必要か無駄かの2択しかない二元論的思考が根付いているということでしょう。言い換えれば、正しいが不完全な真実は、好意や嫌悪感によって感情移入されれば見抜けないということです。もしかしたら、現代ではこの複雑で手間がかかる解釈を求められているのかもしれませんね。


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