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『脳と進化』謎が謎を呼ぶ衝撃の展開!


今回は、新小5年生のK・Kくんの『脳の進化』をご紹介します。
昨年、動物の進化について研究をしたKくん、その時から次は「脳の進化」について研究したいと心に決めていました。脳の構造や機能について学ぶ中で、「脳は動物の進化のどの段階でできたのか?」という新たな疑問が浮かびました。

■作品づくりの歩み 担当講師 黒木里美 


「どうしてこの世界には、いろいろな生き物がいるのだろう?」

動物が好きなKくんは、小さい頃から生き物の多様性に興味があったそうです。
3年生の時には、「生物の進化」をテーマに研究を進めていきました。


そしてその時から、来年の研究は脳の進化について学びたいと心に決めていたそうです。

今回の研究は、脳の構造や機能を学ぶことにからスタート!
Kくんは、何冊も脳に関する本を図書館で借りてきて、ご家族や講師とコツコツ一緒に読み進めていきました。

専門的な単語も多く難しい説明でも、熱心に耳を傾け、質問をしてくれる姿からも、研究への熱意が伝わってきました。

特にKくんが興味を持っていたのが、知能や記憶を司る脳の働きです。

理由をたずねてみると、学年が上がるについて分かりやすい感じる教科と、理解にするのに時間が必要な教科ができてこと、またテストの点数や成績も気になるようになってきたのがきっかけだと教えてくれました。

自分自身を客観的に見つめる視点の芽生え、心の成長を垣間見ることができたのも講師としては嬉しいことです。

さて、脳の構造や機能に関する資料もそろったところで、いよいよパワーポイント作りと原稿のまとめの作業に入ろうとした時、

Kくんからこんな爆弾発言が!

「脳の機能や構造についてはわかりました。でも、僕が本当に知りたいのは、脳が生物の進化の過程で、いつ生まれたかなんです!」

まさかの言葉に、講師もビックリ!
発表会までの残りあとわずか、発表時間のことも考えると十分すぎるほどの資料がすでに用意できている。

発表会に間に合うのか?!
Kくんの疑問に答えはあるのか?!

研究を続けることに一瞬ためらいの気持ちがよぎります。

しかし、Kくんの真剣な眼差しの前には、こういうしかありません。

「今から調べよう!」

最後まであきらめずに、自分のやりたいことを貫きたいという情熱、
Kくんの将来が楽しみになるような作品をぜひご覧ください。

■生徒作品


昨年、僕は、生物の進化について学びました。

この世界には、たくさんの生き物がなぜいるのか、進化とはなにかということです。

人間と動物の進化の関係について

研究をしていく中で、人間の胎児の成長と過程と、脳の構造には、生き物の進化が関係していることを知り、驚きました。

そこで、今回は、特に知りたかった、動物の脳の進化について研究しました。
まず、脳とは何か説明します。

脳の神経細胞

脳は、神経細胞が、ぎっしりと詰まっている 体の 中枢機関です。
熱さや 痛みなどの 情報を感じたり、手足の動きを 調節したりしています 。
また 感情や 意識などを 生み出しています。

脳を守る頭蓋骨

生命にとって、とても大切な器官なので、頭蓋骨という がんじょうな ヘルメットで 守られています。
次に 脳の 各部分の 働きについて 説明します。

命を守る脳幹

色がついているところが、のうかん(脳幹)といい、「命を守る」働きをします。
食べたり声を出したり、呼吸をしたり、心臓の動きをコントロールしたりと、せいめいいじ(生命維持)に大切な役割をしています。

感情や記憶を司る大脳辺縁系

大脳辺縁系は、感情を生み出したり 記憶したりする 働きをします。

運動のきっかけをつくる大脳基底核

大脳基底核の働きは、「運動のきっかけをつくる」ことです。
意識で 指令される 筋肉の運動の バランスを整えて、動作を スムーズにする役割があります。

運動パターンを学習する小脳

小脳は、運動に関わる働きをします。
筋肉の運動の調整をしたり、運動パターンを学習したりします。
体のへいこう かんかく(平衡感覚)や、言葉をなめらかに話すのにも重要です。

動物の脳脳進化

次に脳の進化について説明します。
脳は、生物の進化に合わせて変化してきました。

高等な生物ほど複雑な脳を持っていますが、下等な生物でも、すむ環境に適した脳を持っています。
人間の脳の進化と関係のある脊椎動物の脳を見ていきましょう。

こちらは、魚類、コイの脳です。

串刺しのお団子のようなコイの脳

大脳で、脳の中心を包んでいない、まるで、串にささったお団子のような形です。
小脳や延髄が大きく、大脳は未発達ですが、脳の基本的な構造はそろっています。

こちらは、両生類、カエルの脳です。

逃げるのが得意なカエルの脳

間脳や延髄が発達していて、体の基礎的なコントロールを主に行なっています。
小さく、敵に追われるので、逃げるための力が発達したようです。

こちらは、爬虫類、ワニの脳です。

学習能力や適応能力が備わったワニの脳

大脳が、小脳や延髄よりも目立ってきます。
学習能力や適応能力が、そなわっています。

こちらは、下等哺乳類、ネズミの脳です。  

複雑な行動もできるネズミの脳

大脳が発達し、複雑な行動を取ることができますが、大脳皮質にしわはありません。

そして、高等哺乳類、ヒトの脳です。

しわしわの大脳皮質が覆っている人間の脳


大脳皮質がしわを作り、他の部位をおおうほど発達しています。

脳は進化のたびに作り替えられるのではなく、古い脳を残したまま、その上に新しいのを重ねていくという方法で進化してきました。

人間の脳は動物の進化と同じ

したがって、人の脳の奥深くには爬虫類や下等哺乳類の段階の脳が残っています。

僕は、脳を調べていくうちに「脳は、生き物の進化のどの段階でできたのか?」という疑問が浮かびました。

こちらの3冊を使って調べました。

脳の起源についての資料

結論からいうと、脳の起源について、まだ分かっていないそうです。
分からない理由は2つあります。

1つ目は、頭蓋骨は化石として残るが、臓器である脳は残らないので調べることができないからです。

2つ目は、絶滅している生き物のところで、進化のつながりがとぎれてしまっているためです。

ただ、現在生きている動物の中で、脳を持っている生き物と、持っていない生き物の 分かれ目は はっきりしています。

こちらの図をご覧ください。


しほう どうぶつ(刺胞動物)「クラゲ」の上に、

「脳を作るプログラム」と書かれています。
つまり、クラゲは脳を持っていませんし、クラゲよりも進化の前の段階にいる かいめん どうぶつ (海綿動物)やアメーバのような げいせい どうぶつ(原生動物)には脳はありません。

ちなみに、クラゲは脳は持っていないけれど、全身に神経細胞があります。

脳を持たないクラゲ

最古の脳を持っているのは、扁形動物のプラナリアと、原索動物のナメクジウオです。

プラナリアは、全知全能細胞を持ち、どれほど切っても切られた部分ごとに、元通りになります。

全知全能細胞で再生するプラナリア

Aの写真は、プラナリアを6等分したものです。
再生したすべての個体に脳があります。

これが、ナメクジウオです。

ナメクジウオの泳ぐ姿

そして、脳の図です。

ナメクジウオの脳


ナメクジウオは、私たち、せきついどうぶつ(脊椎動物)の祖先ですが、背骨はありません。
しかし、すでに脳は持っていました。

脳の起源の秘密はクラゲのDNAの中に?!

現在、脳の起源の最先端の研究は、脳を持っていないクラゲやサンゴなどの 刺胞動物に、脳のもととなるDNAがないかどうか調べているところだそうです。

今回の研究で僕は、脳というのは、生きていく上で最も必要なのだということをあたらめて、理解することが出来ました。
これは、脳を持つすべての生き物に共通することだと思います。

僕が、今回学んだことは、脳の学びの入口にすぎません。
今後、脳について新しい事がわかったら、また調べていこうと思います。

これで、発表を終わります。
ありがとうございました。

参考文献---- ・松村 譲兒(2006)人間・いのちの歴史(小学館の図鑑NEO) ・(2009)3D Brain( Cold Spring Harbor Laboratory)より ・滋野修一(2018)遺伝子から解き明かす脳の不思議な世界(一色出版) ・阿形清和(2009)切っても切ってもプラナリア(岩波書店)
・並河洋(2011)たくさんのふしぎ クラゲは花(福音館書店)

■作品の振り返り

【どうしてこの作品をつくりたかったのですか?】
脳はいつできたのか?脳はどのようなつくりなのか?などの疑問と、前回の研究のまとめから、脳というテーマが思い浮かび、少し調べて、とても面白そうだったから

【作品づくりで楽しかったことは何ですか?】
脳は様々な部分ごとに働きがあったり、プラナリアにある細胞の名前などの、今まで知らなかったことを知れたこと

【作品づくりで難しかったことは何ですか?】
いろいろな情報を載せた後のカット作業

【作品作りを通して学んだことは何ですか?】
脳というのは、生きていくうえで最も必要なのだということ

【次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?】
もう少し時間を縮めること

【来年、研究したいことはありますか?】
細胞について

【この作品を読んでくれた人に一言】
脳について興味をもってもらえたらうれしいです


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