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2023年4月の記事一覧

御本拝読「真鍋博 本の本」五味俊晶

静かな装画の神

 ミステリーやSFが好きな、昭和生まれか図書館育ちなら、絶対に見ている絵の数々。この本を休み時間に自分のデスクで開いていたら(本書は二か所、観音開きでパノラマになるページがあります。壮観。)、色んな人が「あ!その絵知ってる!」と覗いて行かれました。
 星新一さんや筒井康隆さんの本の表紙は有名ですが、「ミステリ・マガジン」はじめ、様々な雑誌の表紙も「これも真鍋さんだったのか!」と思

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御本拝読「不思議カフェNEKOMIMI」村山早紀

大人向けの童話

 村山さんの本が出ている間は、まだ世界のどこかにはホッとできる場所がある気がする。そんな感想を、毎回思います。いつも、たっぷりの優しさと村山さんの愛するものたちが詰め込まれたお菓子箱のような小説。今回もとてもキュートで優しいお話でした。
 本書は、思いっきりファンタジーです。魔法少女ならぬ、魔法淑女になっちゃった女性のお話。一通り読み終えてからこのことに気づいたとき、改めて「よく

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御本拝読「美女の正体」下村一喜

客観的な女性美

 写真家・下村一喜さんの、女性の美に関しての一冊。下村さんの名前でピンとこなくても、作品の名前を見たら「ああ!」とほぼ全員が分かる人。写真というジャンルでの、現代の歌麿。写真家でありゲイである下村さんが考える女性の美とは何か。その豊富な経験から、客観的に且つ徹底的に語られている。
 ゲイである、ということは、性欲の対象として女性を見ることがないということ。つまり、純粋に「女性」と

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御本拝読「ミナを着て旅に出よう」皆川明

素朴で徹底的で

 本書は、日本のアパレルブランド、ミナ・ペルホネンの皆川明さんのご著書の中でもかなり古いもの。ミナ創設からミナ・ペルホネンになるまでの時期の発行。初版が約20年前で、文庫化されてからも9年。

 その前後くらいから北欧ブーム(「かもめ食堂」とかマリメッコとか北欧家具とか)があり、最近も移住やライフスタイル中心にブームではありますが、少し落ち着いてきた様子。その間にたくさんミナやデ

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御本拝読「マダムたちのルームシェア」seko koseko

お茶目ユーモア

 2巻が今日発売ということで、この漫画をご紹介。実は、この作品以前に、sekoさんのエッセイ漫画をpixivで拝見して以来ずっと好きだったのです。笑いのセンスがスタイリッシュで、絵もかっこ良さとハイセンスと優しさがスマートに融合されています。
 バリキャリで仕事現役、クールでスマートな沙苗さん(独身)。こちらも仕事は現役、ポップで楽しい物好きな栞さん(離婚後シングルマザーとして娘

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御本拝読「その悩み、大胸筋で受けとめる」棚橋弘至

健全な魂宿るは

 実は私、小橋建太さんと同じ町の出身であります。千原兄弟とも一緒(こちらに関しては学校まで一緒)ですが、やはり地元出身のスターは小橋選手。地元凱旋の興行もありましたし。だからというわけではありませんが、レスラーの方の著書やコラムはやはり気になって読んでしまう癖が。
 読んでて思うのは、プロとして長年、特にプロレスに関して言えば一時期のプロレス低迷期を支え続けたベテランの選手たちは

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御本拝読「気づいたら独身のプロでした」カマタミワ

独身一人暮らし

 女性作者のコミックエッセイはとにかく多い。育児、趣味、ライフスタイル諸々。やはり人間自分と共通項がある人の書いたものは気になるもので。私は、ここ数年、「独身」「一人暮らし」「収入不安定」という自分に当てはまるテーマのものは見てしまいます。
 が、数多い作者さんの中で、本当に自分が共感したり面白く読めたりするものは案外少なかったりします。例えば、「独身」だけど実家暮らしで衣食住に

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御本拝読「黒後家蜘蛛の会」アイザック・アシモフ

絶妙ミステリー

 SF小説の大家・アイザック・アシモフの書いた短編ミステリー小説集「黒後家蜘蛛の会」(全5冊)は、とても自分の好みのミステリー小説シリーズ。昔はSFも好きだったから普通にアシモフ作品も読んでいたけれど、恥ずかしながらこれは大人になってから出会った。
 黒後家蜘蛛の会(ブラック・ウイドワーズ)とは、6人の知識人と1人の給仕からなる月1回のディナーをともに楽しむ会である。その会では6

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御本拝読「ブランドのコラボは何をもたらすか」午後の紅茶×ポッキー プロジェクト

ほどよい教科書

 新年度、新学期、新人さんの季節。ということで、マーケティングの初心者向けの読みやすい本を一冊。
 といっても、私自身は学生時代から飲食販売→家庭教師→図書館→印刷会社→図書館で全部下っ端のため、広告・販売の業界にはまったく明るくございません。そんな人間が、「よくわかる!マーケティング!」みたいな本を読んでもチンプンカンプン。
 ですが、本書は導入から結論までが三年をかけた一つの

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御本拝読・宮沢賢治

私と賢治の因縁

 私が初めて宮沢賢治に触れたのは、小学校高学年。教科書の「やまなし」だった。鮮明に覚えている理由は、「やまなし」が理由で授業中に担任やクラスメートたちから笑われたという嬉しくない記憶があるからである。
 『「クラムボン」とは何か?』という問いに、全員が一人ずつ答えを紙に書いて(答え一つと名前を記入)答えた時。クラスの半分くらいの答えが「泡」で、次に多かったのが「太陽(光)」、2・

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御本拝読「服と賢一」滝藤賢一

この自由な風を

 タレント本?写真集?否、滝藤賢一と服の本である。ただただ、俳優・滝藤賢一氏の一年間の私服を街中でスナップして、一言メモと服のブランドを併記しただけの、自由な本。
 多忙につき、最近あまり小説や学術書が読めない。頭に入ってこないのだ、疲れていて。脳が疲れていると、文章を理解することを拒否しだす。通勤中にようやくエッセイなどをとぼとぼ読むくらい。そんな毎日で、食後や寝る前にぱっと開

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