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5/22【米リセッション警戒、中国経済減速、豪州政権交代】

●米4月小売売上高、小売企業決算


米商務省は17日、4月の小売売上高を発表した。結果は前月比0.9%増で、市場の事前予想と一致した。

小売売上高は、米国の様々な規模の小売店の売上を月毎に測定する指標。個人消費がGDPの約2/3を占める米国では、個人消費の動向として小売売上高に大きな注目が集まる。

4月の結果を見ると、自動車の購入や外食への支出が拡大しインフレ下ではあるものの消費意欲には引き続き力強さが窺える。

(筆者作成)

また17日には小売大手Walmartが、翌18日には大手ディスカウントTargetが決算公表を行った。

Walmartの1Q決算(2-4月)は、燃料価格高騰や人件費の増加を要因とするコスト増加によって利益が圧迫され、急減した。

該社は同時に通期の利益見通しも下方修正しており、コスト増加を売上高の増加で吸収できていない状況。

(出所:Walmart HP)

また大手ディスカウントストア大手のTargetも1Q決算(2-4月)は、既存店売上高や売上高は予想を上回ったものの、コスト増加により利益が事前予想を大きく下回った。

これら決算を受けて、小売セクターの株価は大幅に下落。決算公表を受け、改めて賃金・物価の上昇による企業業績悪化の懸念が生じた。

(米小売株価推移、出所:後藤達也氏 YouTube)

●リセッション織り込みを進める米市場


米経済の先行き不透明感が増し、リセッションの警戒が強まっている。先述した小売セクターの業績悪化は一例であるが、FRBが急速な利上げと量的縮小を行う中で、強い経済を維持したままインフレを抑制する「ソフトランディング」に、足元では懐疑的な見方が広がっている。

米政策金利の上昇は、住宅ローン金利上昇に繋がり住宅建設セクターの先行きを不透明にしている。コスト増加を売上高へ十分に転嫁できない企業は、利益が圧迫されている状況。

米政策金利先物は、昨4月まで上昇を続けていたものの、5月に入り下図の通り微減に転じている。

これは債券市場参加者も、インフレ退治にあたり、ソフトランディングではなく経済もダメージを伴うハードランディングは避けられないという見方を強めているのだろう。

(出所:Bloomberg)

また22日は、取引開始直後主要株価3指数はプラス圏で始まったものの、その後売りが強まりマイナス圏へ転落。

S&P500は1月に付けた高値から20%を超える下げとなり、ベアマーケット入りとなった。株式市場でも、リセッションの織り込みが進み大幅な調整局面。

(S&P 500日足チャート、出所:Trading view)

●日企業物価指数、CPI発表


日本銀行は16日、4月の国内企業物価を発表した。

企業物価指数とは、企業間で取引される商品の価格に焦点を当てた物価指数であり、商品の需給動向を反映する取引価格の動向を調査するため、景気判断に活用されることもある。

4月は、前年同月比で10.0%上昇。前年の水準を上回るのは14カ月連続で、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響により資源関連を中心に幅広い品目で価格が上昇。

品目別では、石油・石炭製品が30.9%、鉄鋼が29.9%、非鉄金属25.0%とそれぞれ上昇。また化学製品(10.2%)や金属製品(7.4%)、プラスチック製品(6.2%)など幅広い品目での上昇が確認できる。

(出所:日本経済新聞)

また総務省が20日に発表した4月の消費者物価指数は、生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比で2.1%、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアCPIが同0.8%の上昇となった。

エネルギー関連や食料品の上昇に加えて、携帯電話料金値下げの影響が弱まったことから、上記の結果となった。

但し、依然として生鮮食品及びエネルギーを除くCPIは0.8%増と、アメリカ(6.8%増)やイギリス(6.2%増)、ドイツ(3.8%増)とは依然とした差があり、足元の物価上昇はコストプッシュ型であり、日本国内の需要は依然として弱い状況。

●中国経済は減速へ


中国国家統計局は16日、4月の小売売上高を発表した。結果は前年同月比で-11.0%の減少。

新型コロナ感染拡大を受けた上海ロックダウン等が影響し、事前予想も大幅に下回り、2020年3月以来の大幅な減少となった。

4月の国内自動車販売は、前年同期比で47.6%も減少し、来客減や部品不足から自動車メーカーが生産を減らす結果となった。

また生産動向を示す4月の鉱工業生産も前年同月比2.9%減となっており、前月(3月)の5.0%増から大幅な落ち込みとなっている。

斯かる状況下、経済減速は雇用にも影響し、足元4月の失業率は6.1%とこちらも2020年2月(6.2%)以来の高水準。

今年2022年秋は、中国共産党の5年に1度の党大会が開催予定で、3期目続投を目指す習近平国家主席の今後の経済立て直し策にも注目が集まる。

(出所:西日本新聞)
(出所:モーニングサテライト)

●豪州政権交代


21日に投開票が実施されたオーストラリア総選挙(下院選)で野党労働党が勝利した。

労働党党首のアルバニージー氏が、与党保守連合を率いるモリソン首相に代わり、次期首相へ就任する予定で9年ぶりの政権交代。

アルバニージー氏は病気(関節リウマチ)を患う母親を支えながら、新聞配達等のアルバイトを重ね高校を卒業、名門シドニー大学へ進学。エリートが多いとされるオーストラリア政界で、社会福祉の重要性について身をもって体験した政治家である。

前述の背景もあり、アルバニージー氏は高齢者介護等福祉の充実等の政策を訴えたが、やはり国際的な関心は同国の安全保障政策に変化が生じるか否か、という点に集まろう。

モリソン首相は、安全保障上の脅威としての中国に対し、日米豪印による「Quad(クアッド)」や米英と連携する「AUKUS」創設を軸に、対中国強硬姿勢をとっていた。

安全保障政策について、アルバニージー氏は政権交代後もモリソン首相路線を引き継ぐとしているものの、中国寄りへ転換する可能性もある。

まずは24日に東京で開催予定のQuad(クアッド)首脳会議における同氏の発言に注目が集まる。

●5月23日(月)から5月27日(金)の主な予定


<アメリカ>
25日(水):5月FOMC議事録公開
<日本>
23日(月):日米首脳会談
24日(火):Quad首脳会談

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