死後の世界への大冒険
「ねえねえパパ、なんで泣いてるの?」
「それはね、ママが死んじゃったからだよ。」
「ねえねえパパ、死んだママはどこにいくの?」
「お空にいくんだよ。お空でずーっと、パパやゆうきのことを見守っていてくれるんだよ。」
「ふーん、変なの。」
ゆうきくんには、死ぬということがどういうことなのかわかりませんでした。
死んだママがお空に飛んでいくところも、
お空にいるママも見えないからです。
「いつかまた、ママと遊べるかな?」
「うん、いつかきっとね。」
それからゆうきくんは、毎日お空のママに話しかけました。
「ママ、今日はおともだちができたよ。」
「ママ、ぼく小学生になったよ。」
ママは返事をくれないけど、どこかでにっこり笑ってくれている気がしました。
ある日、ゆうきくんがいつものようにママに話しかけると、ふとこんな考えが浮かびました。
「あ、今日ママに会えるかも」
「パパ、今日ママに会える気がするんだ。だからママといっぱい遊んでくるね。」
「そっか。うん、いっぱい遊んでおいで。」
その後ゆうきくんは自転車で友達と遊びに行く途中で、事故に巻き込まれます。
「いたっ。」
そう思った瞬間ゆうきくんは、ゆうきくんの体から離れていきます。
地面には血だらけで横たわったゆうきくんが見えます。
「あぁ、僕は死ぬんだ。」
ゆうきくんは自分が事故にあって、自分が死ぬことを理解しました。
「うわー痛そう。こんな姿になって死んじゃって、パパが悲しんじゃうかな?」
ゆうきくんはパパのことを考えて、悲しくなりました。
ゆうきくんは死ぬことが怖くて、でもなんだか幸せな気分でした。
ふわーっと浮いてったゆうきくんは、だんだんと離れていく自分の体を見て、死ぬことは意識がなくなることではないことを知りました。
だんだん浮き上がるスピードが速くなると
黒いトンネルを真っ直ぐに飛んでいることに気づきました。
どれくらいかわからないくらいの時間、そのトンネルを飛んでいると、トンネルの先にある真っ白な光が大きくなるのがわかりました。
「わあー綺麗だなあ。」
その綺麗な光に包まれると、周りにはお花畑が広がっていました。
そこにはたくさんの人や動物がみんな笑って遊んでいました。
みんな白いふわふわのサッカーボールみたいでした。でもそれがどんな人なのか、ゆうきくんにはわかりました。
ゆうきくんはママを探しました。
「僕のママはどこにいるの?」
ゆうきくんは、まわりの白いふわふわたちに
ママのことを聞きました。
「ママはこっちだよ」
その白いふわふわは、眼鏡をかけた白髪頭の優しそうなおじいちゃんでした。
そのおじいちゃんのふわふわは、ゆうきくんをママのいるところに連れていってくれました。
「ママ!」
目の前にはママのふわふわが浮いていました。
「ママ、どうしてママは白いふわふわなの?」
「ここはね、死んじゃった人や動物たちが来る世界だからだよ。死んじゃったらみんな、白いふわふわになるんだよ。」
「ふーん、変なの。」
ゆうきくんには、死ぬということがどういうことなのかわかりませんでした。
「ゆうきはなんでここにいるの?」
「自転車で事故にあってね、ふわーって浮いていって、倒れてる僕にバイバイして、黒いトンネルを抜けてここにきたんだ。」
「そうなんだね。でもゆうきはまだ死ぬ時じゃないんだよ。だからまた、元いた世界に戻るんだよ。」
「いやだ!せっかくママにまた会えたのに。パパにも、ママといっぱい遊んでおいでって言われたもん。」
ゆうきくんは、せっかく会えたママとまた別れて、あの血だらけの痛そうな体に戻るのはいやでした。
「ゆうきが痛くないように、体も直してあげるからね。」
ママは僕が何も言わなくても、思っていることをわかっていました。
話さなくても意思疎通できるこの世界では、
話すことは愛情を表現することでした。
ゆうきくんは、ママと他のたくさんのふわふわと一緒に、大きい工場のようなところまで飛んで行きました。
そこでは、たくさんの3D映像の人の体がベルトコンベアの上を流れていました。
そこでママや他のたくさんのふわふわたちは、
ゆうきくんのボロボロの体の映像をさすっていました。
「みんな、なにをしているの?」
「ゆうきが痛くないように、ゆうきの体を直しているんだよ。」
ゆうきくんの体が直るまでの間、ゆうきくんはママといっぱいお話ししました。
この世界は、死んだ人たちが次の世界で生きるまでの間、遊んでいる場所だということ。
ここからゆうきくんが生きている世界がわかること。
死んじゃったふわふわたちには、
時間や空間や感覚という概念がないこと。
ここではものは何一つ存在せず、
すべては魂同士の間で生まれる幻に過ぎないこと。
たくさんのことを教えてもらいました。
ゆうきくんは、死ぬとはどういうことなのか
すこしわかった気がしました。
そして、生きるとはどういうことなのかも、すこしだけわかったのでした。
ゆうきくんの体が直ると、みんなでその体を持って、発射台のようなところに飛んでいきました。
「この体に入って、地上の世界に飛んでいくんだよ。」
ゆうきくんは、自分の体の中に入りました。
「ママ、またね。」
ゆうきくんはママとまたお別れすることが寂しくて、それだけしか言えませんでした。
自分の体に入ったゆうきくんは、ぴょーんと飛び上がると、そこには黒いトンネルがありました。
ゆうきくんが気がつくと、そこは病院でした。
「ママといっぱいお話ししてきたよ。ボロボロになった僕の体を、ママやたくさんのふわふわたちと一緒に直してここに帰ってきたんだよ。」
目の前にいたパパは泣いていました。
ゆうきくんは、パパがなんで泣いているかがわかりました。
「とっても楽しかったよ。ちっとも痛くなかったよ。だから泣かなくても大丈夫だよ。」
それからパパに、どんなことがあったのかお話ししてあげました。
「そっか。ゆうきは、ながーい夢を見ていたんだね。」
ゆうきくんは、その世界で会った眼鏡のおじいちゃんのことを話しました。
「それは、死んじゃったママのパパかもしれないね。」
パパはそう言って、おじいちゃんの写真をゆうきくんに見せました。
ゆうきくんは、その初めて会ったおじいちゃんがママのパパだったと知りました。
それからゆうきくんは、死ぬことは別の世界に飛んでいくだけだと思うようになりました。
人間は、自分が知らないことに対して恐怖を抱くのだと知りました。
そして全てのものは、
僕たちが見たり感じたりするから
見えたり感じることができるだけの幻だと知りました。
ゆうきくんは、自分が行った世界を、死ぬことは怖くないよってみんなに教えてあげるために科学者になろうと思いました。
つづく…
参考にした論文のリンク貼っとくんで
興味ある方はぜひ読んでみてください。
おもろいですよ😸
【参考論文】
「死後の世界」神戸女学院大学研究所
松田央
雑誌名 神戸女学院大学論集
雑誌名(英) KOBE COLLEGE STUDIES
巻 47
号 2
発行年 2000/12/15
「臨死体験による一人称の死生観の変容
─日本人の臨死体験事例から―」
明治大学大学院情報コミュニケーション研究科
岩崎 美香
2013 年 13 巻 1 号 p. 93-113
「死後の世界をどう考えるか : 東洋思想の死生観から見えてくること
The Problem of the Life after Death : A Study of The View of Life and Death in Asian Thought」
実践女子短期大学共通教育非常勤
三浦宏文
実践女子短期大学紀要
実践女子短期大学紀要 (33), 13-23, 2012-03
実践女子大学
「医師が考える死後の世界 (特集 死んだらどうなる) -- (死後の世界とは)」
田畑正久
大法輪
大法輪 80(9), 78-82, 2013-09
大法輪閣
コラボレーション研究がライフワークです。ここでは生きてて感じたことや考えたことを気楽に綴っていこうかなと思っております。読んでくださったみなさんに、気楽に楽しんでいただけたら嬉しいです。