ネタに邪魔をしてくる客に出会った話

涼しいから寒いに変わりつつある今日この頃
私のネタも「寒い」から「面白い」に
変わればいいなと思うばかりの
現在全くと言っていいほど売れていない芸人が日々送るにつれ思ったことなどを
書き起こす糞エッセイ

お気に召さない方はスキとフォローだけして閉じてください。

今まで寝ているお客さん
弁当をむさぼり食っているお客さん
ネタの声よりも大きい声で電話をしてたお客さん
ネタ中顔も上げずに携帯ばっかり触っていたお客さんなど

ネタを見る素振りが全く持って感じられないお客さんに対して
全身全霊でネタを見せてきた私だが


タイトルの通り
この間初めてネタに対して邪魔をしてくるお客さんに出会った

地下ライブだとこのタイプのお客さんは
あるあるなのかどうか定かではないがその時の話をしようと思う


とある日いつものように
犯罪者でも出れるようなフリーライブに出た

あまり特定をされたくはないが会場の場所を伝えると
新宿歌舞伎町内にある地下のライブハウスだ

歌舞伎町
もちろん治安があまりよろしくない場所で有名で
歩けば誰かが酒に酔って倒れているような場所だ

入り時間に会場に着いた私は少し高めのエントリー料金を支払い
楽屋などが無かったため
近くにあった非常階段の踊り場で着替えを済ませ
自分の出番を待った

ライブが開演した
お客さんは3人
普段私が出ている地下ライブの客の人数としては平均的だ

最初MCの芸人さんが注意事項などを伝える

その時だった

「いい加減早く始めろコノヤロー」

MCがマイクを使って喋った声よりも大きい声が会場内に響いた

私含め出演芸人は察した
あ、ヤバい奴いる

舞台の袖からその姿を私は確認した

最前列の真ん前に完全にストロング酒を持っているおじさん
見た限り泥酔状態だ

お笑いが好きなのか
そもそもこのライブをお笑いと認識して来ているのかも微妙な状態で

MCの注意事項を伝える間にも
「俺の方が面白いぞ!」
MCに向けて「この間あった話聞いてくれよ!お前ら笑かしてやるよ!」
完全に空気がこのおじさんをいかに帰らせるかの一色になった

しかし、ここが地下ライブの現状だが
普通のお笑いライブならスタッフさんが半強制的に帰らせる
地下ライブはただでさえお客さんが少ない

もちろん帰らせることはできない

その状態で始まった


私の出番は3番目

1組目が漫才師だった

ボケすべてに対して
そのおじさんは

「よっ!」
「それからどうなるんだ!」
「今のが面白いと思ってるのか?」

いらないガヤが入っている

おじさんのほかに来ていたお客さん2人が可哀想に思えた

その漫才師もしびれを切らせたのか、無理と判断したのか
本ネタよりも営業ネタに近いそのおじさんをいじるスタイルに変えていた
いじられるたびにおじさんはケラケラ笑う

こんなネタをしにエントリー料金を払ったわけじゃない

目の前のお客さんを笑わせることは大事だが
こんな笑い声なら無いほうがましだ

1組目が終わり舞台袖に帰っていく
出演芸人がお疲れさまと声をかけていた
「本当にいなくなって欲しいね」と喋る声が聞こえた

2組目が始まった
同じく漫才師

最初本ネタをしていたのだが
同じくおじさんのガヤが入る
ガヤのタイミングが良ければまだましなのだがタイミングがすこぶる悪い

時間をかけて最初のフリをしている段階で

「黙っちまったよ」「代わりに俺が喋ってやろうか?」と
邪魔されたくない場所で邪魔されている始末だ

2組目も結局後半からそのおじさんをいじる方向に変え
それに対して「お前らに言われる筋合いないよ」とケタケタ笑っていた

2組目が終わり
いよいよ私の出番になった

私は思った
漫才ではない
1人で演じるコントだ
変に方向性を変えれば残り2人からしては意味が分からなくなってしまう

絶対にネタは変えずにいこう

決心した私は暗闇の中舞台に板ついた
明かりが付く

おじさんと真正面に対面した
おじさんもガヤを飛ばす
それでも無視し続けネタを進めた

しかし、ここで計算外のハプニングが起きた

想像以上に酒臭い

舞台上がとんでもなく酒臭い
そりゃそうだ、泥酔の人間が大きい声でこっちに向かって喋っている
ただ想像以上なのだ

酒が弱い私は
ネタの最中に大きい声で叫ぶシーンがあるのだが
本気で吐きそうになった

大きい声を出す前にはその分息を吸わないといけない
しかしその空気は酒で充満されていて
仕方なしに後ろを向いて大きく空気を吸った

その瞬間胃から急激に来る感触があった

今叫べば絶対に出る
その状態で数秒私は固まった

固まっている間
おじさんは私に向かい


「分からなくなっちゃったのかな?おいおいしっかり頼むよ!」
勝利宣言に近い言葉をぶつけられた

その後息を整え吐くギリギリの声量でやり切り
舞台を後にした
袖で他の芸人さんに「酒の匂いヤバいんで注意してください」と伝えた

その後敗北した私はそそくさと着替えを済ませ帰った


お笑いを見るにあたり最低限のマナーは守って欲しい

少なくとも芸人はその時に披露したいものを前から練習し
改善に改善を重ねて披露している

適当にやっているのも中にはいるが、1つ1つのライブが貴重な芸人もいる

頼むからこの記事を見た人は
お笑いを見るとき(ライブ会場で)は向き合ってみてほしい


そう思えた日だった


今日まで私は売れていない、しかし明日はもっと面白い私に出会える、明日は売れる、明日から売れる。




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