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カツオの産地で考えるSDGs

結論

 高知県、鹿児島県のカツオから、水産資源の維持、飢餓をなくすSDGsの目標に貢献する知恵を学びました。

SDGs(持続可能な開発目標)

 SDGsとは、2030年までに持続可能で世界が抱える問題を解決し、よりよい世界へ発展させるための国際的な目標。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されました。
 17のゴール、169のターゲットから構成され、環境問題、貧困問題など世界が抱える問題を解決するために細かく目標が設定されています。

カツオ

 サバ科の回遊魚。止まったら酸素を供給できなくなり死んでしまうため、眠っている間も泳ぎ続けます。日本近海には、春と秋の2回やってきます。それぞれ、呼び名が異なってります。
 奈良時代には食べられており、当時は生で食べず、堅く干したものを食べていました。ここから、堅い魚→堅魚|《かたうお》→カツオと名付けられました。
 生で食べる場合は、透明感のあるピンク色に近い赤身がおいしい証拠。市販で多く流通しているものは、急速冷凍されてたもの。冷凍する理由は、アニキサス。皮と内臓に潜んでいて、死後、すぐに身に周ります。そのため、遠洋で捕ったカツオをすぐ冷凍して持ち帰られるようにします。アニキサスは高温か低温で死滅させることができます。
 カツオは赤身魚において、マグロに次いでタンパク質が多いのが特徴。鉄分、ナイシアン、ビタミンB1、Dも豊富なため、貧血、二日酔い予防、骨の強化、疲労回復の効果が期待されます。

初カツオ

 春から初夏にかけて、フィリピン沖から黒潮にのって北上。脂肪も少なく、細く筋肉質。このため、鰹節作りに最適。さっぱりしていて赤身の酸味を感じます。

戻りカツオ

 北海道南東から秋に南下するカツオ。丸々成長し、脂がのっており、たたきに最適。脂の旨味も感じられます。

高知県

 カツオの消費量、日本一。奈良時代には、税金としてカツオが納めていました。現在では、県の魚にも制定されており、カツオは県民に親しまれている魚です。しかし、水揚げ量は全国4位で8%程度。
 高知県のカツオの特徴は、沿岸漁業で一本釣り。黒潮が土佐湾近くを通るため、沿岸でカツオが獲れます。
 網で捕るとカツオが暴れて皮が擦れて品質が劣る原因となります。そのため、一本釣りによってカツオが暴れて皮が傷つくことを防ぎ、品質を維持すしています。さらに、漁獲量を5万トンまでと制限しており、資源の維持に繋げています。これが、SDGsの「海の豊かさを守ろう。」という目標につながります。
 しかし、近年、カツオの漁獲量は減少傾向です。主な原因は熱帯地域での他国の漁獲量の増加により、土佐湾までカツオが来なくなったこと。燃料高騰、高齢化により漁師をやめる方が多くなり、漁船が減少しています。
  また、高知でもカツオを余すところなく食べ尽くします。内臓から酒盗を作り、ハランボと呼ばれるハラミの部分は脂がのっており、焼くとジューシーで口の中に旨味の塊と脂が広がります。フードロスにも役立っています。

高知県のたたき文化

 カツオは死後、皮、内臓からアニキサスが回りやすく、鮮度が落ちやすい魚。沿岸漁業の高知県では、冷凍技術のない時代に、船上で鮮度の落ち、アニキサス中毒のリスクのあるカツオを食べるために、「たたき」という調理法が編み出されました。
 一本釣りしたカツオを新鮮なうちに3枚におろして、藁で豪快に炙ります。そのあと、ポン酢や塩をかけて叩いて味をなじませて完成。一般的なアジのたたきとは違い、細かく切り刻まれているのではなく、厚い刺身。
 カツオの臭みがわらで燻された香りによりマスキングされ、皮目をパリッと焼く技術は職人技。生姜、にんにく、ミョウガなど薬味を豪快にのせて食べるのが、高知のカツオのたたきの特徴です。薬味をたっぷりのせる理由は、殺菌効果による食中毒を防ぐ目的、香りなどによる食欲増進の効果、ビタミンB1の働きを高めて疲労回復の効果を上げる効果が期待されているから。タレではなく塩をつけて食べる塩たたきも絶品です。

薬の種類もバラエティ豊かな鰹のたたき


塩たたきは、より素材の味を楽しめます

かつおのたたきをいただいたお店
土佐料理司 高知本店
営業時間 月~土 12:00 ~21:30
               日・祝日 11:30 ~21:00
定休日  不定期、年末年始
アクセス とさでん はりまや駅から徒歩2分

 高知県の高知県のたたき料理はカツオだけではありません。特産のなすも、たたきにします。旬の野菜と魚を合わせるのがトレンドのようです。茄子のたたきナスを素揚げして焼いてほぐしたアジの身と薬味をのせて食べます。揚げナスがジューシーで、ジュワッと水分が広がります。ナスの生産量も日本一。家庭でもつくることができますのでオススメです。ナスの美味しい時期に作りたい一品です。レシピは↓に掲載しています。

ミョウガとの相性もよい茄子のたたき

江戸時代のビュッフェ、皿鉢料理

 さらに、おもてなしのための料理が、皿鉢料理。ルーツは神事のお供え物を料理したこと。平底の大きな皿に、カツオのたたき、刺身、寿司、煮物、焼き物、果物などを盛り合わせた豪快な宴席料理。辛党には酢の物、煮物、甘党には金団、羊羹が入ります。作る方も自分の食べたいものを好きなだけ作り、食べる方も自分の好きなものを好きなだけ取って食べるビュッフェスタイル。江戸時代にはすでに現在の皿鉢料理のスタイルが確立されていました。
 食べ切れる量を作り、盛ることによってsdgsの「飢餓をなくそう」に貢献できます。日本は、3163万トン(2021年度)もの食品を輸入しています。一方で、522万トン(2020年度)もの食品を廃棄しています。これは、2020年の世界の戯画に苦しむ人への食糧支援量420万トンの1.2倍。国民一人あたり、1日、茶碗1杯分捨てていることになります。フードロスを減らすことで世界で飢餓に苦しんでいる人々を救うことができます。今からできることは、備蓄をしすぎない、食べきれる量のみ使う、見栄えが悪くても健康上問題なければ利用するなどがあげられます。

鹿児島県枕崎市

 鹿児島県西部にある薩摩半島の南に位置する枕崎市。JRの南端、枕崎線の終点。鰹節の生産量、日本一で全国の生産量の60%を占めます。
 枕崎のカツオは南西諸島付近で漁獲され、急速冷凍で輸送されます。アニキサスの対策として、中心部が60℃に到達してから1分以上加熱するか、-20℃以下で一晩冷凍するように厚労省は呼びかけています。加熱では、刺身ではなく、レアステーキなって今います。そのため、急速冷凍を行うことによって、寄生虫のリスクが小さく、鮮度をキープします。解凍すれば、刺身で食べることができます。鹿児島県でも、たたきでも食べます。しかし、薬味は、玉ねぎ、大葉、ミョウガと高知県のカツオのたたきよりシンプル。ポン酢をかけていただきます。

鹿児島の鰹のたたき

 さらに、カツオを丸ごと食べつくす風習もあり、フードロス対策に貢献しています。カツオの頭を鹿児島弁で「ビンタ」と呼び、丸焼き、煮つけなどで食べられます。カツオの腹皮(高知弁で「はらんぼ」)も塩焼きにすることによって脂が適度に落ち、柔らかでジューシーな食感と強い旨味を感じることができます。

鰹の腹皮の塩焼き

 お土産には、かつお味噌。九州四国地方で主に食べられている麦みそにかつお節を混ぜて作ります。カツオの旨味と甘い麦味噌が混ざりあい、ごはんがすすみます。ごはんに乗せるだけではなく、おでんや冷奴のトッピングにもぴったりです。お湯で薄めるだけで、甘めのインスタント味噌汁として飲むことができます。都内のアンテナショップにも販売されていないレアな商品です。

枕崎ぶえん鰹

 枕崎ぶえん鰹は、魚の価格が安くなる一方、燃料費の高騰により出費が増加。生活が厳しい状況に追い込まれる危機があり、遠洋カツオ一本釣り漁業の現状を解決するために組合が開発しました。
 鮮度を保つため、釣ってすぐに〆て血抜きして急速冷凍することが特徴です。
 急速冷凍することにより、皮に存在するアニキサスなど寄生虫を殺すことができ、刺身して食べられます。
 鮮やかな赤色で、さっぱりとした初鰹。生臭さを全く感じません。一方で弾力を感じ、しっとり食感。

枕崎お魚センターの食堂で食べられるぶえん鰹丼

ぶえん鰹をいただいたお店
枕崎お魚センターみなと食堂
営業時間 9:00~17:00
定休日  不定期
アクセス JR枕崎駅から徒歩15分

まとめ

 高知県、鹿児島県のカツオから学んだSDGs。高知県では、沿岸漁業で一本釣りすることによって資源管理を実施、鹿児島県では、ぶえん鰹というブランドを開発し、資源保護とビジネスを両立しています。カツオをムダなく食べたり、寄生虫対策などの知恵が詰まっていることもわかりました。
 旅行からつながるSDGs。時事ネタも学びのために、シリーズ化しようと検討するきっかけになりました。現状を知った後の行動が重要です。
 カツオの美味しい初夏、秋にカツオを巡る旅は、いかがでしょうか?

参考文献

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000718780.pdf




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