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睡眠時の脳内

最近「睡眠テック市場の拡大」を耳にしました。人生の約3分の1を占める睡眠ですが、厚生労働省によると日本人の5人に1人は睡眠障害を抱えている様です。ぐっすり眠って疲れを取ることはとても大事ですよね。所謂寝具の開発とは異なりますが、デバイスから睡眠の質を分析することで身体の状態を診る取り組みも行われています。今回はそこから睡眠の質を調べることで見えてくる脳の活動についてまとめてみます。


睡眠のステージ:覚醒, REM睡眠, NON-REM睡眠

睡眠は大きく二つのステージに分けられます。REM睡眠とノンREM睡眠です。この二つは簡潔にまとめると深い睡眠と浅い睡眠なのですが、もう少し深掘って説明させて頂きます。

睡眠の過程を睡眠ポリグラフというもので測定するとその波の周波数によってα, β, θ, δの4つに分類出来ます。この4つの波で睡眠も覚醒状態, レム睡眠, ノンレム睡眠(N1, N2, N3, N4)に分類されています。

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レム睡眠とN1が10~20%, N3, N4が15%, 残りのN2が40~50%を占めています。一般的にこれらは90~120分の周期で、一晩に4, 5回周期繰り返すことがわかっています。

睡眠ステージから何がわかるのか:精神疾患との関係

睡眠障害は精神疾患の典型的な症状の一つです。 ブリストル大学で行われた研究によるとうつ病患者の83%は少なくとも一つの睡眠障害を併発していました。

また睡眠中においても覚醒時間が長く睡眠効率が低いことが示唆されています。同様に双極性障害、統合失調症などにも一度の睡眠の中で高いREM睡眠の頻度が確認されています。

夢遊病やパーキンソン病の様な神経変性疾患も高確率でREM睡眠の異常から派生する為にそのメカニズムと背景の理解は重要です。

一般的な人の睡眠状態とうつ病患者の睡眠ステージを比較するとうつ病患者の睡眠は覚醒状態が明らかに多く、またストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が多いことが伺えます。

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睡眠障害は高血圧や糖尿病との関連も指摘されており、これらの改善は現代社会の急務であると考えられています。

睡眠ステージから見える脳内の活動:睡眠を支配する視交叉上核

以前の記事で手綱核が睡眠やうつ病に関係していると述べました。

「外側手綱核にはレム睡眠を維持する機能が備わっており、外側手綱核を破壊したラットを用いた実験では、野生のラットと比較してレム睡眠の割合が41%、その長さは24%減少しました。」

手綱核とは脳の視床上部という箇所にあり、視床上部は手綱・手綱核・松果体・後交連で構成されています。

松果体とは睡眠や概日リズムに関わるメラトニンを夜間に分泌する機関です

また松果体は視床下部にある視交叉上核の光による刺激からの信号に反応してメラトニンを分泌することがわかっています

脳、光

https://www.kinki-shasej.org/upload/pdf/hikari.pdfより引用

この視交叉上核はストレスによって活性化するオレキシンという物質を刺激し、間接的に徐波睡眠(ノンREM睡眠)を阻害していることがわかりました。

REM睡眠とは:覚醒睡眠時の脳内

レム睡眠は外側視床下部のメラニン凝集ホルモン作動性ニューロンを光によって活性化させることで増加が確認されています。

レム睡眠促進領域は延髄腹側領域にもあり、そのGABA作動性ニューロンがレム睡眠を誘発しています。中脳深部核背側部や中脳水道灰白質腹外側部はレム 睡眠促進領域から作動性投射を受けることで、ノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えを行います。

これらの事実から睡眠サイクルを調べることより脳内の活動を逆算的に調べることが可能だと考えられています。

最後に

睡眠のステージとそこから予想される症状、脳内の活動について簡単にまとめてみました。ストレスによる疲労が目立つ現代に於いて睡眠の重要性は増し、その市場規模も拡大しています。便利なツールが数多く開発されていますが、そもそもなぜ睡眠のステージを見る必要があるのか、そこから何がわかるのかを知ることで自身の対応も変わってくるのではないかと思います。意識的に睡眠を変えてより元気な生活を目指したいです。

拝読ありがとうございました。


弊社ではウェアラブルデバイスのデータを活用した精神疾患の研究を行っています。ご興味ある方は是非お気軽にご連絡下さい。TechDoctor株式会社:https://www.technology-doctor.com/











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