営業のおすすめ教科書9選:個人と組織の営業力を強くしてくれる入門書
弊社が提供する「現場向け動画教育プラットフォーム tebiki 」は法人向けクラウドサービス(SaaS)で、営業はとても重要な部門となります。
新人スタッフを早期に育成し、高い商談率/契約率を達成するための様々な社内向け営業トレーニングコースがあるのですが、教育カリキュラムを作る上で特に参考にした書籍を「営業の教科書」として本記事でご紹介します。
法人向け/個人向け/飛び込み営業/ルートセールス/ソリューション営業など、営業職にも種類がありますが、どの職種であっても、数値化し、ノウハウを言語化して、仕組みを作ることができると考えています。この記事ではSaaSの営業力に直結するという視点で本を選んでいますが、他の営業職でも十分役に立つ本を選びました。
( 貴山 @tkiyama )
※弊社の他の教科書シリーズ (スタートアップの教科書/SaaSの教科書)もよろしければご参照ください。
【個人の営業力の本】
ほとんどの営業本は、「個人の営業力向上」と「勝てる営業組織の作り方」という2部構成になっているのですが、この記事では比重の大きな方で分類してみました。ここから紹介するのは、営業パーソン一人ひとりの個人の努力で営業力を強化できる本です。
チャレンジャー・セールス・モデル (マシュー・ディクソン他)
ソリューション営業のバイブルとして本書を挙げる人も多いと思います。
弊社の営業の参考書の中でも一番大事にしていて、商談プレゼンの構成はこの書籍で書かれていることを忠実にトレースしました。
営業スタッフを5つの類型にわけて、「関係構築タイプ」や「勤勉タイプ」などを抑えて「論客タイプ(=チャレンジャー)」の営業成績が最も良いことに着目して、「チャレンジャー」の要素を徹底的に分析する本です。
本のサブタイトルに「支配」とあるので、顧客を支配する方法だと誤解されがちなんですが、原文では「Control」で営業プロセス全体のコントロール方法を紐解いています。
色々書いてあるんですが、「地ならし/再構成/裏付け/心をゆさぶる/新しい方法の提示/ソリューションの提案」という6ステップからなる「商談直結型の指導的会話」が一番大事な部分。
大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 (ニール・ラッカム)
けっこう読みにくいですが、頑張って読む価値があります。
相手の持っている潜在ニーズを顕在化させることで、大型商談の成約率を引き上げる質問法(SPIN)の解説。難易度は高いけど、よく考えると、できる営業パーソンは程度の差はあれ、みんなこの通りやってる気がします。
以下の4つの質問タイプの頭文字をとってSPIN。
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Situation (状況質問) → 顧客の状況を把握して、
Problem (問題質問) → 問題の所在を確認して、
Implication (示唆質問) → 顧客に問題の大きさを認識してもらって、
Need-payoff (解決質問) → 解決の方向性を顧客自身に語ってもらう。
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その他、担当者が一人で決裁する小型商談と会議体で決裁される大型商談の違い、製品特徴のアピールは契約率にあまり影響がないなど、商談相手の解像度をあげてくれる解説がたくさんあります。
無敗営業 (高橋浩一)
この本の魅力は、なんといっても圧倒的な読みやすさ。SPINの10倍読みやすい。
SPINは顧客に自分で考えてもらう質問手法でコーチングに近く、実践が難しい。この本では、顧客が質問にうまく回答してくれないときの枕詞、顧客と営業のズレを確認する方法、接戦を制する質問など、より実践しやすいTIPSが紹介されています。SPINの入門編という感じ。
営業 (冨田和成)
飛び込み営業を想定した本なのですが、こちらもチャレンジャーセールスモデルやSPINと主張は同じで、飛び込みでもソリューション営業でも、営業の土台は同じということがわかります。
とても基礎的なことが書かれているので、はじめて営業職につく人にはぜひ読んで欲しい一冊。
売り込まなくても売れる! (ジャック・ワース他)
チャレンジャーセールスやSPINと言ってることは一緒なんですが、「売り込まない方が売れる」ということがぴんと来ない人にオススメです。営業スタッフの水準がわかれるのがこの感覚で、なかなか体得できない人にはぜひ読んで欲しい。
尚、顕在ニーズを持ってる相手にだけフォーカスしましょう、という本なのですが、顕在ニーズだけだとリード数が足りなくて急成長できないので、潜在ニーズを顕在化させるSPINが大事だと弊社では考えています。
隠れたキーマンを探せ! (ブレント・アダムソン他)
チャレンジャーセールスモデルの続編。
大型商談ほど意思決定は会議体で行われます。複数の部門が参加し、それぞれの思惑も違うので、顧客内でコンセンサスをとってもらうことが大切だよ、ということをいろいろな角度から分析してます。
エースの営業パーソン(チャレンジャー) は顧客担当者の肩書や意思決定権限はさほど重要視しておらず、顧客組織内で関係者を調整できる「仕事ができる人」を探していて、本書ではそういう人を「モビライザー」と呼んでいます。
「モビライザー」は営業側の「チャレンジャー」と対になる存在で、チャレンジャーセールスモデルの理解を深めるために有用。ただ、とにかく長いです。リブ・コンサルティングの権田さんによる監修者あとがきが素晴らしい要約になっているので、まずはそこから読むことをおすすめします。
【組織の営業力の本】
ここから紹介するのは、商談数と契約数を引き上げる、勝てる営業組織の作り方を教えてくれる本です。
アクセル (マーク・ロベルジュ)
営業組織を徹底的に数値化して仕組みを作る手法を紹介した同書は、他の営業本とは一線を画した魅力があります。
Hubspot社(※)の最初の営業担当として、4人目に入社した元エンジニアの著者の主張は明快で裏付けがある。
この本の中で私が一番好きなフレーズは「同行するという営業研修は、測定可能でも予測可能でもない」です。全くその通りで、営業リーダーの多くが新人育成を営業同行に頼りすぎてると感じます。先輩に同行するライブ感と手触り感は確かにありますが、最低限の割合にするべきで、測定可能な研修カリキュラムを作る方法を本書では教えてくれます。
営業スタッフの採用方式に関して詳しく、採用面接時の「好奇心」「コーチング応用力」など項目を数値化して、入社後の売上成績で回帰分析にかけるとか、普通は思いつかない。
ちなみに原題は ”The Sales Acceleration Formula: Using Data, Technology, and Inbound Selling to go from $0 to $100 Million”。
※Hubspot社は、CRM/SFA/MAのパッケージシステムで世界的にすさまじく伸びてる会社。
THE MODEL (福田康隆)
SaaSの隆盛とともに浸透したのが、この本が紹介した「THE MODEL」という営業組織の型です。SaaS営業の管理職は全員読んでるのではと思うぐらい流行りました。
著者がブログに書いている通り、自社の営業組織を考えるときの土台として使うのが正しくて、THE MODELをそのまま適用している会社はむしろ少ないと思います。ただ、インサイドセールスなどの営業組織やマーケティングチャネルを設計する上で、THE MODELの原理原則を理解しているかどうかで完成度が大きく変わります。
インサイドセールス (茂野明彦)
もはや一般用語になったインサイドセールス(IS)ですが、いわゆるテレアポだけから契約獲得までなど、各社によってIS部隊の役割は全然違います。その会社にとって事業が伸びるやりかたが正解で、この本はIS視点の営業プロセス全体の設計書と考えてよいです。
ISとフィールドセールス(FS)を分業制にするときに一番大事なのは、リード/商談/失注などの定義。定義そのものがプロセス設計なんですが、真意は設計者しか理解しておらず、世間に公開されることはあまりありません。
本書では、例えば「温度感や確度の低いリードについては一部を除いてカウントする」のように詳しく定義が書かれており、その意味でも貴重な本。
(参考) スタートアップ初期の営業方法
スタートアップ初期の営業は、知名度が全くない/導入事例は当然ない/製品機能が極端に少ないというかしょぼい/いくらで売っていいかよくわからない、といった特別なフェーズです。実は、新規事業の立ち上げ時期の戦い方というのは明確にあって、それを教えてくれるブログがこちら。
セールスアニマルになろう v2 - スタートアップの営業活動 (1)
シード期に知っておくべきセールスの極意 - ベルフェイス株式会社 西山 直樹
さいごに
tebikiを運営するピナクルズ社を起業する前までの私の営業経験といえば、新卒入社した会社で先輩についてまわった半年だけでした。
ピナクルズ社は私とエンジニアの渋谷の2人で起業した会社で、渋谷がコードを書いて、それ以外を私がやる、という役割分担でした。当然ながら営業も私が担当なんですが、「インターネットサービスってモノが良ければバイラルで伸びるから営業はそんなに重要じゃない」みたいな、今思うと恥ずかしすぎる認識でした。実際にやってみたら勝手に売れるとか幻想で、営業は超重要ということを痛感することになります。
それ以来、心を入れ替えて営業を勉強し直して組織を作ってきたのですが、弊社の新入社員には私の試行錯誤のプロセスをショートカットしてほしくて、営業の教科書を社内向けにまとめたものを外部公開しました。この記事がみなさまの役に少しでも立ってくれればうれしいです。逆に、この本の方がもっといいよ!、というものがあればぜひ教えてください〜。
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